共同通信ニュース用語解説 「アホウドリ」の解説
アホウドリ
日本最大級の海鳥で絶滅危惧種。かつて北西太平洋の島々に少なくとも数十万羽いたとされるが、羽毛目当ての乱獲で激減した。伊豆諸島・鳥島や沖縄県・尖閣諸島といった外敵が来ない孤島で繁殖し、子育て期間以外は海の上で過ごす。鳥島では保全活動が奏功するなど現在は6千羽以上に回復したとみられる。ただ鳥島は活火山で噴火する恐れがあり、小笠原諸島の
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日本最大級の海鳥で絶滅危惧種。かつて北西太平洋の島々に少なくとも数十万羽いたとされるが、羽毛目当ての乱獲で激減した。伊豆諸島・鳥島や沖縄県・尖閣諸島といった外敵が来ない孤島で繁殖し、子育て期間以外は海の上で過ごす。鳥島では保全活動が奏功するなど現在は6千羽以上に回復したとみられる。ただ鳥島は活火山で噴火する恐れがあり、小笠原諸島の
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広義には、鳥綱ミズナギドリ目アホウドリ科に属する海鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。同科Diomedeidaeは大形の外洋性鳥類で、翼開長2~3.5メートルにも達する細くて著しく長い翼をもち、その翼を伸ばしたまま、海面近くに生じる風速差を巧みに利用してグライダーのように飛ぶ。すなわち、風下に加速しながら降下し、海面に近づいたところで風上に方向転換し、減速しながら風速差によって浮揚して高度を上げ、そこでまた風下に降下する。こうして、どこまでも飛び続けることができる。このような飛翔(ひしょう)法をとるため、一年中風がある中・高緯度海域に分布する。
[長谷川博]
世界に22~24種があり、このうちガラパゴスアホウドリPhoebastria irrorataだけが熱帯のガラパゴス諸島と大陸寄りエクアドルの太平洋岸30キロメートル沖のラ・プラタ島で繁殖している。この種はよく羽ばたく。約20種は南半球の暴風圏周辺海域の島嶼(とうしょ)で繁殖する。最大種はワタリアホウドリDiomedea exulansで、翼開長は3.5メートルに達する。北半球には、北太平洋に種としてのアホウドリPhoebastria albatrus、クロアシアホウドリP. nigripes、コアホウドリP. immutabilisの3種が分布し、北大西洋にはみられない。
[長谷川博]
アホウドリ類は、沖合いから外洋の表層に浮上してきた魚類やイカあるいは大形甲殻類を、頭を水中に入れて嘴(くちばし)でつかみとらえるため、潜水することはほとんどない。嘴は太く頑丈で、両端はナイフの刃のように鋭く、先端は鉤(かぎ)状にとがっていて、これらの餌(えさ)をとらえるのに適した構造をしている。単独あるいは小集団で繁殖するススイロアホウドリPhoebetria fuscaを除く他のすべての種は、洋上の小島で大きな集団をなして繁殖する。飛び立ちに都合よいように、風が絶えず吹き付けるなだらかな丘陵斜面や崖(がけ)の棚に営巣することが多い。泥や植物片を固めた浅いへこみのある巣に大きな卵を一つ産み、雌と雄が交代で小形種では60~70日間、大形種では80日間抱卵する。親は油状の液体と半消化の餌を吐き出して、口移しに雛(ひな)に与える。4~9か月間養育し、結局、産卵から1年近くかかってしまう種もある。それらは隔年に繁殖する。成熟までには長い年月を要し、6~10歳で初めて繁殖する。死亡率は数%以下で、長寿命で30年以上生きるものもまれではない。一夫一妻で、相手が死なない限りつがい関係は維持される。長期の繁殖活動を成功に導くためには、つがいの間の協調関係が不可欠である。
[長谷川博]
アホウドリ類は地上では動きが鈍く、助走なしには飛び立てず、人間を恐れないため、素手で容易にとらえられた。そのうえ、1羽1羽が良質の羽毛を多量につけ、しかも大集団で繁殖することもあって、羽毛採取のために多量に殺された。その代表例がアホウドリで、20世紀初頭には伊豆諸島の鳥島や小笠原(おがさわら)、大東、尖閣(せんかく)諸島などで無数に繁殖していたが、羽毛採取開始後50年間に数百万羽以上が殺され絶滅に瀕(ひん)した。その後、積極的に保護され、現在では鳥島と尖閣諸島で500組余りが繁殖し、総個体数は約3000羽に回復した。また、かつての繁殖地の一つである小笠原諸島聟島(むこじま)に第三番目の繁殖地を形成する取り組みが始まっている。1960年(昭和35)国際保護鳥、1962年に特別天然記念物に指定された。ただ、その他の17種が延縄(はえなわ)漁による混獲や繁殖地への地上性捕食者の侵入によって、現在、絶滅の危機に瀕している。
[長谷川博]
『長谷川博著『50羽から5000羽へ――アホウドリの完全復活をめざして』(2003・どうぶつ社)』▽『W. L. N. TickelAlbatrosses (2000, Pica Press, UK)』
ミズナギドリ目アホウドリ科Diomedeidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。この科の鳥は,みなすばらしい飛翔力をもった巨大な外洋性の海鳥である。翼は著しく長く細い。その翼をのばしたまま,海面近くの風を利用してグライダーのように飛ぶ。尾は短いかやや長い程度で,脚は短く,あしゆびには水かきがある。くちばしは大きくがんじょうで,先端はかぎ状に曲がりとがっている。潜水はほとんどできず,海面に浮いていて,表層に浮上してきたイカ類,魚類,オキアミなどの大型プランクトンをくちばしでつかみとる。飛び立つときは,風上に向かって水面をけって助走し,飛び上がる。地上ではよちよち歩くのがやっとで,かなり助走しなければ飛び立てない。もともと人のいない孤島にすみ,人間のどうもうさを知らず,恐れず,逃げることがなかったので,たやすくとらえられた。このため〈あほうどり〉と呼ばれるようになった。遠隔の小島で集団繁殖する。営巣場所は風が吹きつけるなだらかな斜面など,飛立ちにつごうのよいところが選ばれる。1腹の卵は1卵のみ。6~10歳の高年齢になって初めて繁殖できる。雌雄は10~20日交替で60~80日間抱卵し雛をかえす。雛には油状の餌を吐きもどして口うつしに与える。後期には半消化の餌が与えられるようになる。雛は4~9ヵ月で巣立つ。成鳥の死亡率は10%以下でごく低く,30~40年生きのびるものもある。アホウドリは1年の大部分を繁殖に使うので,1年おきにしか繁殖しない。
アホウドリ科の鳥は世界に2属14種がいる。南半球に多く,南極周辺の島嶼(とうしよ)に9種を産し,最大種ワタリアホウドリDiomedea exulansでは翼を広げると3.3mに達する。南インド洋亜熱帯海域のアムステルダム島では,最近発見された新種D.amsterdamensisが繁殖する。熱帯ガラパゴス諸島フッド島とエクアドル沖ラ・プラタ島には,熱帯海域に一年中生息する唯一のアホウドリであるガラパゴスアホウドリD.irrorataが繁殖するが,大西洋には繁殖するものがいない。北太平洋には3種いて,もっとも数が多いのはハワイ諸島に多産するコアホウドリD.immutabilisである。クロアシアホウドリD.nigripesは次に多く,ハワイ諸島のほか伊豆諸島の鳥島,小笠原諸島の聟島列島,尖閣諸島でも繁殖する。
アホウドリD.albatrus(英名short-tailed albatross)は,翼を広げると約2.5m。体重7~8kg。羽色は若いうちは黒褐色だが,大きくなるにつれ白い部分が増す。成鳥は頭上からくびにかけ黄色を帯び,翼の先と尾が黒いほかは全身がほぼ真っ白。雌雄同色。産卵は10月下旬~11月上旬。抱卵,育雛(いくすう)は雌雄ともに行い,5月下旬~6月初めに雛は巣立つ。1世紀前には伊豆諸島の鳥島をはじめ,小笠原諸島,大東諸島,尖閣諸島,台湾北東島嶼,澎湖諸島などで多数繁殖し,北太平洋のほぼ全域に分布していた。しかし,1887年に鳥島へ移住が開始されて以来,羽根布団の材料をとるため濫獲され,50年もたたないうちに絶滅のふちに追いやられた。一時絶滅したと考えられたが,1951年に鳥島で,71年に尖閣諸島で生残りが再発見された。その後の保護活動の結果個体数が増え,鳥島のものは99年5月には推定総個体数が1000羽を超え,2006年5月には鳥島の集団は推定約1830羽,尖閣諸島の集団は推定約300~350羽に回復した。国際保護鳥,特別天然記念物である。
執筆者:長谷川 博
ヨーロッパではアホウドリやカモメを水死した船乗りの魂と信じていたため,これを殺せば凶運にみまわれるとされた。にもかかわらず,アホウドリは羽毛採取を目的に多数殺されたため,コールリジの《老水夫行》のような罪の苦悩を描く詩編も生まれている。遠洋と長い船旅の象徴であり,船乗りたちは釣針に引っかけてこの鳥をとらえ,不器用な動作をからかうことで長旅の慰みにしたという。なお,ゴルフのスコアでパーより3打少ない場合をアルバトロス(アホウドリの英名)と称する。
執筆者:荒俣 宏
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…18ホールのコースは,普通はパー3のショート・ホールが4,パー4のミドル・ホールが10,パー5のロング・ホールが4で,パーの合計が72になるようにつくられている。なおパーより1打少なくホールアウトした場合をバーディbirdie,2打少ない場合をイーグルeagle,3打少ない場合をアルバトロスalbatrossといい,パー3のショート・ホールの1打がカップインした場合をホールインワンという。パーより1打多い場合をボギーbogey,2打多い場合をダブルボギーdouble bogey,3打多い場合をトリプルボギーtriple bogeyという。…
…子持山は玄武岩質のスコリアでできた噴石丘で,1902年の爆発で大爆裂火口と湾入をつくり,39年の噴火では噴石丘の硫黄山をつくった。1886年この島で繁殖するアホウドリの羽毛を採取するため移住が行われたが,1902年の爆発で島民125人全員が死亡した。47年気象観測所が設けられたが,65年に地震が群発したため閉鎖され,以後無人となった。…
※「アホウドリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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