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エウリピデス Eurīpidēs

翻訳|Eurīpidēs

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

エウリピデス
Eurīpidēs

[生]前485頃.アッチカ,フリュア
[没]前406. マケドニア,ペラ
ギリシアの三大悲劇詩人の一人。ソフィストと自然哲学の影響を受け,伝統的悲劇を合理主義精神によって改革して,神話の世界を日常の世界にまで引降ろし,悲劇を人間情緒の世界と化した。競演における優勝は前 441年以来5回 20編。現存作品はサチュロス劇 1編と偽作1編とを含めて 19編。主要作品『アルケスチス』 Alkēstis (前 438上演) ,『メデイア』 Mēdeia (前 431) ,『ヒッポリュトス』 Hippolytos (前 428) ,『アンドロマケ』 Andromachē,『ヘカベ』 Hekabē,『ヘラクレス』 Hēraklēs,『トロイアの女たち』 Trōiades (前 415) ,『救いを求める女たち』 Hiketides,『エレクトラ』 Ēlektra,『ヘレネ』 Helenē (前 412) ,『タウリスのイフィゲネイア』 Iphigeneia hē en Taurois,『イオン』 Iōn,『フェニキアの女たち』 Phoinissai,『オレステス』 Orestēs (前 408) ,『バッコスの信女』 Bakchai (前 405) ,『アウリスのイフィゲネイア』 Iphigeneia hē en Aulidi (前 405) 。

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デジタル大辞泉の解説

エウリピデス(Eurīpidēs)

[前484ころ~前406ころ]古代ギリシャの三大悲劇詩人の一人。神話伝説に人間的写実性を取り入れ、新しい傾向の悲劇を生んだ。作品に「メデイア」「トロイアの女」「バッコスの信女たち」など。→ギリシャ悲劇

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百科事典マイペディアの解説

エウリピデス

ギリシア三大悲劇詩人最後の人。当時としては珍しく生涯公職につかなかった。晩年失意のうちにアテナイを去ってマケドニアで死去。若いころソフィストの影響を受け,神々に対しては常に批判的立場を通すと同時に,作品には情熱的で甘美な台詞(せりふ)や場面が多い。
→関連項目アリストファネスギリシア演劇ギリシア悲劇ジェファーズテーベ伝説バーバーメナンドロス

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世界大百科事典 第2版の解説

エウリピデス【Euripidēs】

前485ころ‐前406ころ
ギリシア三大悲劇詩人の最後の人。およそ10余年年長のソフォクレスとは対照的に,ほとんど公職に就くことなく,一私人として生涯を終えた。前455年に悲劇作家として初登場。彼の作品は92編あったと伝えられるが,現存作品はサテュロス劇キュクロプス》と偽作《レソス》を含めて19編である。そのうち上演年代が確定している作品は,《アルケスティス》(前438),《メデイア》(前431),《ヒッポリュトス》(前428),《トロイアの女》(前415),《ヘレネ》(前412),《オレステス》(前408)である。

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大辞林 第三版の解説

エウリピデス【Eurīpidēs】

前485頃~前406) 古代ギリシャの三大悲劇詩人の最後の人。神話・伝説の世界を現実の人間的レベルで描こうとした。九二編を書いたと伝えられるが、そのうち「メデイア」「エレクトラ」「トロイアの女」「バッコスの信女」「ヒッポリュトス」など一九編が現存。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

エウリピデス
えうりぴです
Euripides
(前484ころ―前406)

アイスキロス、ソフォクレスと並ぶ古代ギリシア三大悲劇詩人の一人。3人のうちでは最年少。アテネ生まれで、当時喜劇作家などが広めたゴシップでは、母が野菜売りであったとか、二度も妻の不貞に悩まされたとかいわれたが、おそらく悪意の中傷にすぎなかったであろう。3男をもうけ、その1人は父と同名で、父の死後その遺作を上演して一等賞を得た。生来瞑想(めいそう)的なタイプの人柄で、非社交的というより人嫌いに近かったことが、古代の伝記に記されている。そのような性格は、作品からも、伝存の彫像のいくつかにみられる沈鬱(ちんうつ)な表情からもうかがわれる。劇壇にデビューしたのは紀元前455年、アイスキロスの死の翌年にあたる。前408年『オレステス』を上演したのち、マケドニア王アルケラオスの招きに応じてアテネを去りペラに移住、2年後その地で没した。『バッコスの信女』と『アウリスのイフィゲネイア』はこの異郷の地で書かれ、死後遺作として発表されたが、これらをも含めて作品の総数は92編であったという。現存する完全な作品は19編であるが、そのなかの『レソス』は真作でないことがほぼ確かであり、また『キクロプス』は悲劇ではなくいわゆるサティロス劇であり、このジャンルでは完全に伝存する唯一の例である。そのほか伝承された断片の数はかなり多く、前世紀以来パピルスによる発見も多数に上る。なかでも『アンティオペ』『ピプシピレ』の2作は、それぞれ100行、300行を超える大断片である。完全な作品および断片の量が、先輩2作家に比して格段に多いのは、前4世紀以後長くその人気が高かったことによる。彼が当時にあってはかなり進歩的な思想の持ち主として、保守的な人々からは反感をもたれていた点では、ソクラテスと似たところがあり、アリストファネスらの毒舌を浴びたのもそのためであった。
 作劇の技法としては、前口上(プロロゴス)、機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)の頻用が目だつ。素材は伝統的な慣例に従って、神話伝説からとられているが、神々や英雄はもはや常人の域を超えた非凡な存在ではなく、日常市井(しせい)に生活する男女とあまり変わらぬ人物として描かれる。『メデイア』や『ヒッポリトス』にしても、登場人物たちの情念の激しさはやや異常といえるにせよ、しょせんは家庭内の悲劇であるし、『イオン』のごときは今日のホームドラマと本質的には同じである。女性の屈折した心理を描く手腕については古来定評があった。後期の作品には、大衆的な興味をねらいすぎてやや俗悪な趣(おもむき)のあるものもある(オレステス)。代表作には『メデイア』『ヒッポリトス』『カベ』『トロイアの女』『バッコスの信女』などがある。『トロイアの女』はアリストテレスのいう「もっとも悲劇的な」詩人の本領を発揮したものであり、『バッコスの信女』は彼の白鳥の歌ともいうべく、深刻複雑な詩人の心をうかがわせる名作ということができる。[松平千秋]
『『世界古典文学全集9 エウリピデス』(1965・筑摩書房)』

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世界大百科事典内のエウリピデスの言及

【エレクトラ】より

…アッティカ悲劇の現存作品中,エレクトラのタイトルを有するものは二つある。一つはソフォクレスのおそらくは初期に属する作品であり,もう一つはエウリピデスの前413年に上演された作品である。アガメムノンの遺児エレクトラとオレステスが,父の仇である実母クリュタイムネストラ(クリュタイメストラ)とその愛人アイギストスを殺害する,という行為をめぐって劇が組み立てられている,という点でも両者は共通する。…

【オレステス】より

…前408年にアテナイで上演されたエウリピデス作の悲劇。父アガメムノンの仇を討った後のエレクトラとオレステスの姉弟を扱っている。…

【ギリシア演劇】より

…しかし同時代の喜劇詩人エピカルモスは,プロメテウスを大盗人にしたて,人間も何を盗まれるかと戦々恐々としている様を語っている。演劇の神ディオニュソスも,エウリピデスの《バッコスの信女》の中に現れるときは凄惨な密儀宗教をつかさどる恐るべき神であるが,同じとき書かれたアリストファネスの《蛙》の中では,臆病で定見のない一人の演劇評論家にすぎない。神々のみならず伝説的な英雄たち,現実社会の有名人や権力者たちも,喜劇の舞台ではきわめて低俗な欲望の操り人形として容赦なくこきおろされる。…

【ギリシア文学】より

…アイスキュロスは古い神話・伝説が伝える人間の迷妄,執念,呪詛が織り成す葛藤や悲劇が,新しい正義と秩序のもとに苦難を経つつも解決に向かうべきことを告げている。続いてソフォクレス,エウリピデスらも観客の心眼を,人間の行為と運命を神々の眼からとらえる悲劇芸術の視点にまで高めようとしている。さらに特記すべきはアリストファネスの喜劇であろう。…

【デウス・エクス・マキナ】より

…神の直接介入による話の決着は,すでに初期叙事詩人の常套手段となっており,劇作家たちはこれを視覚的表現手段にゆだねたのである。現存するソフォクレスの《フィロクテテス》や,エウリピデスのほとんどすべての劇作は,〈機械仕掛け〉に依存しているが,アリストテレスは《詩学》において,一編の劇作の結末は筋の段どりそのものの中から必然性ないしは蓋然性に基づいて導き出されるべきものとして,その利用については批判的見解を記している。【久保 正彰】。…

【メデイア】より

…ギリシア三大悲劇詩人の一人エウリピデスの作品。前431年上演。…

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