改訂新版 世界大百科事典 「キクイタダキ」の意味・わかりやすい解説
キクイタダキ
スズメ目ヒタキ科の鳥。あるいはこの種が属するキクイタダキ属に含まれる5種の総称名。この類の鳥はどれも非常に小さく,全長約9cm,体重わずか5g前後しかない。どの種も頭頂部に黄,橙,赤などの美しい色の冠羽をもっている。キクイタダキ(菊戴)という名は,菊の花を頭にのせたようなその特徴に由来している。キクイタダキRegulus regulus(英名goldcrest)は,アジアからヨーロッパにかけて分布し,日本では北海道,本州,九州の亜高山帯で繁殖する。秋・冬季には温暖な地方に渡って越冬する。日本では本州以南の山ろく部で越冬する。繁殖期にはオオシラビソやコメツガなどの針葉樹林にすみ,秋・冬季にはマツ,スギ,モミなどの針葉樹の混じった林にいることが多い。枝葉の間をすばしこく動きまわり,小さな昆虫をとって食べる。巣はサルオガセやダケカンバの皮などにクモの糸をくっつけてつくり,枝からつり下げる。繁殖期,雄はテリトリー争いや雌への求愛の際などに,頭頂部の冠羽をしばしばふくらませる。秋・冬季には,カラ類の混群に混じって生活することもある。
執筆者:樋口 広芳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報