ゲルマン民族(読み)ゲルマンみんぞく(英語表記)Germanen; Germanic peoples

精選版 日本国語大辞典 「ゲルマン民族」の意味・読み・例文・類語

ゲルマン‐みんぞく【ゲルマン民族】

〘名〙 ゲルマン語派の言語を話す民族。原住地はスカンジナビア半島南部からバルト海沿岸地方。前八世紀頃から南下し、東・西・北ゲルマンに分かれてヨーロッパ中・北部に定住した。四世紀後半に大移動があり、東ゲルマンローマ侵入してラテン人と融合し、西ゲルマンは北西に移動してイギリス人、オランダ人、ドイツ人の祖先となった。原住地の北ゲルマンノルマン人)はデンマーク人、ノルウェー人の祖先である。ゲルマン。

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デジタル大辞泉 「ゲルマン民族」の意味・読み・例文・類語

ゲルマン‐みんぞく【ゲルマン民族】

インド‐ヨーロッパ諸族に属する民族。原住地はバルト海沿岸地方。前8世紀ごろから南下して中部ヨーロッパに定住。4世紀後半、民族大移動によってローマ帝国領内に侵入、ヨーロッパ全域を席捲せっけんし、現在の西ヨーロッパ諸民族の祖先となった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ゲルマン民族」の解説

ゲルマン民族(ゲルマンみんぞく)
Germans

インド・ヨーロッパ語族に属し,ブロンドの髪,長身長頭,細長い鼻などの人種的特徴を有する,中世以降のヨーロッパ住民の基幹となる民族。スカンディナヴィア半島から北ドイツがその原住地と考えられ,北ゲルマン(デーン人ノルマン人など),西ゲルマン(アングル人サクソン人アラマン人フランク人など),東ゲルマン(ヴァンダル人,ブルグント人,ゴート人など)に大別される。彼らは早くより西方および南方に居住地域を拡大したが,前1世紀頃からローマ帝国と接触し,一部はローマ社会に融合し,他は離合集散を繰り返して民族大移動期に至った。この時期以前のゲルマン社会については,ローマ側にカエサルタキトゥスなどの文献があるが,政治的にはキウィタスと呼ばれる国家を基本とし,全自由民男子の民会がその最高機関を構成し,王または首長と呼ばれる貴族がこれを指導した。身分上,貴族,自由民,奴隷の区分があり,従士制の絆が人的結合の中心的役割を果たしていた。歴史的に知られている限りでは,定着的な農業,牧畜の経済を営み,土地所有もすでに平等ではなく,貴族制を助長していた。ジッペ(氏族団体)を単位とし,フェーデ(血の復讎(ふくしゅう))を基本とするゲルマン法は,部族国家成立とともに賠償裁判制に改まったが,ローマ法とともに中世法の基本をなすものである。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゲルマン民族」の意味・わかりやすい解説

ゲルマン民族
ゲルマンみんぞく
Germanen; Germanic peoples

チュートン民族とも呼ばれる。インド=ヨーロッパ諸族の一民族。青銅器時代の末期 (前5~4世紀) には南スウェーデン,デンマーク半島,北部ドイツが居住地。北ゲルマン (デーン人,ノルマン人など) ,西ゲルマン (アングル人,アラマン人,サクソン人,フランク人など) ,東ゲルマン (東ゴート人,西ゴート人,バンダル人,ブルグント人など) に大別される。前2世紀頃から移動を始め,南東へ向ったものは遠く黒海沿岸へ,南西に進んだものはライン川方面に達した。初めてローマ人と接触したのは前2世紀末に南ガリアと北イタリアへ侵入して撃滅されたときであるが,その後もローマのガリア遠征軍としばしば交戦した。 375年東ゲルマンのゴート人がアジアのフン民族に圧迫されて移動を開始し,いわゆるゲルマンの民族大移動が展開され,ゲルマンの王国が各地に建設された。原住地バルト海沿岸にとどまっていた北ゲルマンもスウェーデン,ノルウェー,デンマークを建設したが,のちにヨーロッパ各地を劫略したデーン,ノルマンもその一部である。ゲルマンについて,現存する最古の記述を残した古代ローマの将軍ユリウス・カエサルによれば,社会生活の面では,本来農耕民族ではなく,牧畜民で彼らの食料の大部分はその家畜群から得ていたという。しかし農業を知らなかったわけでなく,農耕のための独特な共同体組織 (→ジッペ ) をもっていた。自由民から成る民会で政治的決定を行う伝統があり,戦時には首長が選ばれた。そこにローマ法と異なるゲルマン的な法観念の母体がはぐくまれた (→ゲルマン法 ) 。宗教的には,ゲルマン独自の宇宙観から成る宗教をもっていたが,4世紀の初め頃からキリスト教に改宗していった。

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