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コウモリ

百科事典マイペディアの解説

コウモリ

翼手目の総称。哺乳(ほにゅう)類中唯一の飛行動物。世界中に広く分布し,ネズミ類に次いで種類が多く,果実食のオオコウモリ類と虫食のヒナコウモリ類に大別される。昼は洞穴,樹洞などに頭を下にして後足でぶら下がって休息する。
→関連項目翼手類

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

コウモリ

翼手類」のページをご覧ください。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

コウモリ
こうもり / 蝙蝠
bat

哺乳(ほにゅう)綱翼手目に属する動物の総称。この目Chiropteraの仲間は飛翔(ひしょう)する唯一の哺乳類で、大翼手亜目Megachiropteraと小翼手亜目Microchiropteraに大別される。哺乳類中では齧歯(げっし)目に次いで種数が多く、2亜目19科950種からなる。日本産は2亜目5科38種からなり、陸生の哺乳類中でもっとも多い。コウモリの化石はほかの哺乳類に比較して少なく、最古の化石はヨーロッパの始新世のイカロニクテリス科に属するイカロニクテリスである。これは大翼手亜目と小翼手亜目の中間的な特徴をもっている。すなわち、前肢の第1・第2指につめがあり、翼が幅広い点は前者に類似し、臼歯(きゅうし)に鋭い突起がある点は後者に似る。コウモリ類は北極と南極を除くあらゆる地域に分布し、洞窟(どうくつ)、廃坑、樹洞、森林および人家など、さまざまな環境に生息する。また食物も、昆虫、脊椎(せきつい)動物、恒温動物の血液、果物および花粉などと変化に富む。
 なお、日本では2003年(平成15)11月5日から新興感染症(ニパウイルス感染症、リッサウイルス感染症)および狂犬病の国内への侵入防止を目的として、コウモリ(すべての翼手目)の国内への輸入を禁止している。[吉行瑞子]

形態

大きさは翼開長1.7メートル、頭胴長40センチメートル、体重900グラムに達するジャワオオコウモリPteropus vampyrusから、1974年にタイ南部で発見された翼開長16センチメートル、頭胴長3センチメートル、体重2グラム以下のブタバナコウモリCraseonycteris thonglongyaiまで変化に富む。体のつくりは飛翔生活に適応する。前肢は体のわりに顕著に大きく、とくに第2~第5指の中手骨と指骨は著しく長く、それらの間および第5指と後肢の間に皮膚が伸びてできた弾力性に富む薄い飛膜が発達し、翼を形成する。翼の形状は飛翔速度、飛翔形に応じて異なる。前肢の第1指は短く、飛膜上端の前腕膜の末端にあり、洞窟の壁面などをよじ登るときに役だつ鋭い鉤(かぎ)づめをもつ。後ろ足は体のわりに小さく、5指と鋭い鉤づめがあり、外後方に180度回転できる。また、しばしば腿間膜(たいかんまく)が尾と後肢の間に形成され、多くは踵骨(しょうこつ)が長く伸びて、腿間膜縁を支える。胸骨には翼を動かすのに適応した強力な胸筋の付着部となる竜骨突起が顕著である。肩甲骨と鎖骨は強大で、一部の脊椎骨(せきついこつ)、頸骨(けいこつ)、肋骨(ろっこつ)などが癒着して板状となり、頑丈な胸郭を形成する。キクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinumのような類では鼻孔の周囲に鼻葉とよばれる皮膚のひだが発達する。鼻葉の働きは明らかではないが、自ら発する超音波を一定方向に集中させ、昆虫などをとらえる際に役だてると思われる。また、耳介の前方、耳孔の前上方にキノコ状、サーベル状などさまざまな形の耳珠をもつもの、ときにこれらを欠き耳介の外基部に迎珠をもつものがある。目は一般に小さい。普通、乳頭は胸に1対ある。キクガシラコウモリやカグラコウモリHipposideros turpisなどでは別に乳腺(にゅうせん)を欠く偽乳頭が鼠径(そけい)部に1対発達する。通常、陰茎には陰茎骨があり、子宮は重複、双角または単一、胎盤は円盤状をしている。大脳半球は小さく、小脳を覆わず表面は平滑である。歯数は種類によって異なり、最少のものが合計20本、最多のものでは合計38本である。[吉行瑞子]

分類

大翼手亜目は新世界にみられず、旧世界の熱帯・亜熱帯だけに分布し、オオコウモリ科Pteropodidaeだけを含む。多くは前肢の第2指に第1指と同様な鉤づめをもつ。耳珠を欠き、耳介の基部は筒状を形成し、内外縁はほぼ平行し、尾はきわめて短く、腿間膜の発達は悪い。下顎枝(かがくし)は大きく、臼歯の歯冠部は扁平(へんぺい)である。多くは大形で食果性。日本にはクビワオオコウモリ(エラブオオコウモリともいう)Pteropus dasymallus、オキナワオオコウモリP. loochoensis、オガサワラオオコウモリP. pselaphonの同属3種がいる。
 小翼手亜目は新旧両世界の亜寒帯から熱帯まで広く分布し、種数が多い。サシオコウモリ上科、キクガシラコウモリ上科、ヘラコウモリ上科、ヒナコウモリ上科の4上科で18科に分けられる。前肢の第2指につめを欠き、耳珠、迎珠、尾、腿間膜などが発達し、臼歯にとがった突起がある。食物は変化に富む。日本には、キクガシラコウモリなど5種を含むキクガシラコウモリ科Rhinolophidae、カグラコウモリ1種からなるカグラコウモリ科Hipposideridae、28種からなるヒナコウモリ科Vespertilionidae、オヒキコウモリTadarida insignis1種からなるオヒキコウモリ科Molossidaeの4科35種がいて、すべて食虫性である。[吉行瑞子]

生態

夜行性で、日没ごろから活動を開始し、ほとんど終夜採食する。昼は洞窟の壁や天井、岩の割れ目、人家の天井裏、屋根瓦(やねがわら)の下、木の枝、樹洞、竹の割れ目、バショウの葉の下面、巻いたバショウの葉の筒などで休息する。ユビナガコウモリMiniopterus schreibersiのように何千頭もの大群をなしてすむものもあれば、コテングコウモリMurina silvaticaのように単独または数頭で生活するものもある。いずれも多くの哺乳類や鳥がつくるような巣をつくらない。亜寒帯や温帯にすむものの多くは洞窟、人家、樹洞などで冬眠し、また、温暖な地方に渡る種もある。なお体温は、亜熱帯・熱帯のオオコウモリ類ではほかの哺乳類と同様に恒温性であるが、亜寒帯・温帯の小翼手類では不完全な恒温性である。すなわち不完全な場合は、周囲の気温に応じて体温が下がる異温性である。小翼手類は、飛翔する際に5万~10万ヘルツの超音波を毎秒数回ないし数十回も断続して発し、その反響を発達した耳で聞いて、障害物や食物などの方向位置、獲物の動きや大きさなども探知する。このため、狭い洞窟や茂った林床の中でも自由に飛翔できる。また、目隠しをして天井から多数の針金をつり下げた室内に放しても、巧みに針金をよけて飛び回ることができる。なお、オオコウモリのルーセットコウモリ類Rousettusは声のかわりに舌音を発して飛ぶ。
 普通、1産1子まれに2~4子を年1回初夏に出産する。齧歯類、食虫類に比較すると1腹子数は少ないが、寿命はこれらに比べると長く、飼育下で19年の記録がある。冬眠しない種類は春または冬に交尾するが、冬眠するものでは冬眠前の秋に交尾し、通常、精子は冬の間は雌の子宮内に保たれ、翌春に受精が行われる(キクガシラコウモリやアブラコウモリPipistrellus abramusなど)。しかし、ユビナガコウモリなどでは秋に受精し、胚(はい)が子宮内で越冬する。なお、食虫性の小翼手類はカやキクイムシなどの害虫を食べるので有益であるが、オオコウモリ類は果樹園などを大群で襲い、かなりの害をする。コウモリの天敵はフクロウやタカなどである。[吉行瑞子]

民俗

コウモリを呼び寄せる童歌(わらべうた)は全国的に分布している。東京では「コウモリ、コウモリ、草履(ぞうり)が欲しけりゃ飛んで来い」といって草履を中空に投げ上げたが、「落ちたら卵の水飲まそ」などと誘うのもある。もとはコウモリも身近な動物で、東京の町中でも、夏の夕方にコウモリの飛び交う姿がみられた。イギリスにも「コウモリ、コウモリ、帽子の下にやってこい。ベーコン一切れくれてやる」と始まる歌があり、帽子の中にコウモリを捕らえることを幸運としている。
 鹿児島県肝属(きもつき)郡錦江(きんこう)町の鵜戸権現(うどごんげん)を祀(まつ)る洞窟(どうくつ)にすむコウモリは、神のお使いであると伝えられ、不浄の者が参詣(さんけい)すると群がって頭を蹴(け)るという。同じようにヨーロッパでも、コウモリに頭を蹴られるのは不吉なこととされ、コウモリが女性の髪に絡みついたら鋏(はさみ)でその髪を切らないと離れないといわれている。旧ユーゴスラビア地域にはコウモリを幸運のしるしとする伝えもあるが、ヨーロッパでは一般に不吉な兆しとされ、家の中にコウモリが入るのを死の前兆としたり、悪魔がコウモリの姿となって現れるという俗信も広く伝えられている。アイルランドではコウモリは死の象徴とされる。また死者の霊魂としてコウモリを敬い、殺さないとする伝えは、世界各地の民族にみられる。西シベリアのウドムルト人やマンシ人では、人間の霊魂がコウモリの姿をしているといい、オーストラリア南東部の先住民では、普通、コウモリを男たちの生命、フクロウを女たちの生命とし、それぞれを男の兄弟、その妻とよんで保護する。そして、もし殺したなら、男や女の命が消えると信じている。
 中国では、蝙蝠(こうもり)の「蝠」が「福」に通じることから、おめでたいしるしとされ、福の神の使いであるともいう。そのためコウモリの絵を縁起物によく用い、鍾馗(しょうき)が剣を振ってコウモリを打ち落としている図柄は、天から福を授かる「降福」の意を表しているという。[小島瓔

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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