サケ・マス漁業(読み)サケマスぎょぎょう

百科事典マイペディア 「サケ・マス漁業」の意味・わかりやすい解説

サケ・マス漁業【サケマスぎょぎょう】

サケ・マス類の漁獲を目的とする漁業。5月から8月にかけて,オホーツク海,ベーリング海アラスカ湾といった北太平洋(北洋)をおもな漁場として操業する。大規模な船団を組んで流し網漁を行う母船式サケ・マス漁業をはじめ,単独の船による流し網漁業はえなわ釣りで漁獲するはえなわ漁業などの沖取りと,産卵のために川を遡(さかのぼ)ろうとするサケ・マスを沿岸部の通路に網を仕掛けて漁獲する定置網漁業がある。 北緯46°以北の北太平洋を漁場とする母船式サケ・マス漁業は,鮮度のいい製品ができることから盛んになり,第2次世界大戦前にすでに10船団が出漁するまでになった。しかし,戦後ますます盛んになったサケ・マス漁業も,1952年に締結された日米加漁業条約,1956年に締結された日ソ漁業条約によって規制され,漁獲量は減少,1977年の米国,カナダ,ソ連3国の200カイリ水域実施によって大きな打撃を受けた。その後,1982年に採択された国連海洋法条約(1994年発効)によって母川(ぼせん)国主義がとられるようになり,1988年には母船式サケ・マス漁業は廃止され,1992年に日本・米国・カナダ・ロシア間で締結された北太平洋サケ・マス保存条約によって,200カイリ水域外の北太平洋公海でのサケ・マスの沖取りが全面的に禁止された。 長い歴史を持つ北太平洋でのサケ・マス漁業は縮小を余儀なくされたが,1985年に締結された日ソ漁業協力協定によって,条件付きながら日本とロシアの200カイリ水域内では操業が細々と続けられている。また,北海道および本州北部の諸河川では,産卵のために母川に回帰するサケの人工孵化(ふか)と稚魚放流が盛んに行われており,沿岸部での定置網漁業の漁獲量は増加している。サケ・マスの1997年の生産量は約28万t。急増している輸入量は約22万t(魚卵を含む)にも及び,生産過剰による価格の低迷が問題になっている。→沿岸漁業遠洋漁業サケ・マス母船母船式漁業栽培漁業水産物貿易北洋漁業
→関連項目日米漁業交渉日露漁業交渉

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のサケ・マス漁業の言及

【日米加漁業条約】より

…また,〈抑止〉の対象となっていない魚種で2またはそれ以上の締約国が実質的に漁獲している魚種については,ある締約国の要請に基づき委員会が研究し,必要な保存措置を決定して勧告することとなった。その結果,日本のサケ・マス漁業は西経175度線以西に限定され,また,アラスカ湾における日本漁船によるオヒョウ(当初はアラスカ湾内ニシンも)の漁獲が禁止された。ところが,1977年2月にアメリカから200海里法(〈漁業専管水域〉の項参照)との不一致を理由に条約の終了が通告され,さらに条約の改正が提案された。…

※「サケ・マス漁業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ゲリラ豪雨

突発的に発生し、局地的に限られた地域に降る激しい豪雨のこと。長くても1時間程度しか続かず、豪雨の降る範囲は広くても10キロメートル四方くらいと狭い局地的大雨。このため、前線や低気圧、台風などに伴う集中...

ゲリラ豪雨の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android