デジタル大辞泉 「しい」の意味・読み・例文・類語
しい[感]
1 静粛にするようにと人を制止するときに発する声。しっ。「
2 動物などを追うときに発する声。しっ。「
3 あざ笑ったりするときに発する声。ふん。
「…とよみたりければ、―と笑ひけるなり」〈古活字本平治・下〉
ブナ科(APG分類:ブナ科)の常緑高木。ツブラジイ。高さ25メートル、径1.5メートルに達する。樹皮は黒褐色。小枝は細かく分かれ、半球状の樹冠をつくる。冬芽は扁平(へんぺい)、葉は左右2列に互生し、表面は濃緑色で裏面は銀灰色から銀褐色に変わり、光沢が強く、全縁または上半部に鈍い鋸歯(きょし)がある。5月下旬、雄花、雌花ともに穂状花序となり、当年枝の葉腋(ようえき)に斜め上向きにつく。雄花序はクリの花に似てよく目だち、強い臭気がある。虫媒花。堅果は黒褐色、先がとがった長楕円(ちょうだえん)形から球形で、落果する直前まで外面に突起のある灰色の総包で完全に包まれ、成熟するには2年間かかる。大木になっても樹皮が滑らかで堅果は小さく卵円形、長さ約1センチメートルのものをツブラジイ(別名コジイ)、若木のうちから樹皮が割れ始め、堅果は大きく狭卵形、長さ約1.5センチメートルのものを変種スダジイ(別名イタジイ)といって区別するが中間形が多く、どちらも単にシイということが多い。近年は、ツブラジイとスダジイC. sieboldii (Makino) Hatus.は別種とされ、中間形は両種の雑種と考えられている。
スダジイは福島県以西の暖帯に広く分布し、沿岸地でよく育つ。一方ツブラジイはおもに近畿地方以西の内陸部に分布する。稚樹、成木ともに耐陰性がある。萌芽(ぼうが)更新も行い、乾燥地形では大群落をつくり、日本の暖帯林の極相種となる。建築材などにするが、材質は劣る。シイタケ栽培の原木ともする。蜜(みつ)に悪臭があり、養蜂(ようほう)家に嫌われる。
シイ属は殻斗(かくと)にクリ状のいがをもつものが多く、クリカシ属ともよばれる。すべて常緑樹である。主として東アジアの暖帯に約50種分布し、照葉樹林の代表樹種である。堅果はタンニンが少なく生食できるものが多いことから、古代人類にとっては農耕文化以前から重要な食料となっていたと考えられている。多くの種が分布する中国では栲の字でこの属を統一している。
[萩原信介 2020年1月21日]
山腹や丘陵に林をつくり,褐色を帯びたやや小型の葉を密に茂らせ,日本の暖帯林の最も中心となるブナ科の常緑高木。高さ25mにも達する。葉は2列につき,5~10cmで,楕円状卵形,全縁か先端部に鈍鋸歯があり,先は尾状にのびる。葉の表は濃緑色で無毛,裏には銀色を帯びた細かい鱗片が密生し,はじめ銀白色,後に灰褐色に見える。花は4~5月,新枝の開出と同時に開く。雄花序は新枝の基部や中部につき,細長い穂となり,ややしなだれる。雄花は黄白色で6枚の花被があり,12本のおしべが目だつ。雌花序は新枝の先端部の葉腋(ようえき)につき,細長い穂となり直立する。雌花には花被に囲まれた3本のめしべがあるが,目だたない。花期には,黒っぽい旧葉を背景に,赤褐色の新葉と黄白色の雄花が茂り,また強いにおいがあり,遠くからでも木の下からでもそれとわかる。堅果は翌年の秋に熟す。はじめは,表面に短い突起のある殻斗が全体を包んでいるが,後に不規則に割れて1個の堅果を出す。本州(中国,近畿から福島県,新潟県まで),四国,九州に分布する。
シイにはスダジイvar.sieboldii(Makino)Nakaiとコジイvar.cuspidata Schottky(ツブラジイともいう)の2型が知られる。スダジイは堅果が大きく長く,樹皮は早くから縦にひび割れ,葉も大きい。日本の海岸沿いに多い。コジイは,堅果が小型で丸く,樹皮は老木になるまで平滑,葉はやや小型で球状の樹冠をつくる。近畿から四国にかけて多くみられる。琉球諸島にはオキナワシイが生育し,台湾,中国南部,マレーシア,ニューギニアにも近縁種がある。材は薪炭,建築,器具などに用いられ,シイタケの榾木(ほたぎ)ともなる。堅果の養分をためた子葉は,渋みがなくやや透明な白色で,食用となる。また庭園樹としても温暖地で広く利用され,斑入り(ふいり)の品種もある。
執筆者:岡本 素治
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