翻訳|syndicate
同一市場の諸企業が出資して共同販売会社を設立し,これが一元的に販売する組織をいう。生産面ではあくまで参加企業が企業としての独立性を保持するが,販売は共同販売会社にゆだねて,その独占的な販売組織(とくに同一市場の全企業が参加したシンジケートでは販売面では完全な1社独占となる)によって独占的市場支配力を享受しようとするものである。その意味でシンジケートはカルテルとトラストの中間形態にあるといってよい。すなわち,カルテルは,参加企業が価格,生産量等について協定を結び,これを遵守して独占的な超過利潤の享受や価格崩落を防止しようとする行為であるが,参加企業はあくまで企業体としての独立性を保持し,協定事項以外では自由な意思決定力を保持する。トラストは,同一市場の全企業ないし主要企業が資本結合(合併その他による)して,市場支配力を享受しようとするもので,トラストへの参加企業は合併してしまうので,企業体としての独立性を喪失する。シンジケートにおいては,参加企業は生産面ではカルテルと同様に企業体としての独立性を保持するが,販売面では共同出資による資本結合を実施するので,シンジケートはカルテルとトラストの中間形態といえるのである。また,シンジケートはカルテルの最も高級な形態ともいわれる。すなわち,カルテルにおいては,しばしば企業間の利害対立によって協定の締結・遵守が行われないことがある。しかしシンジケートにおいては共同販売会社が一元的な取引にあたるので,そこで決定した価格,販売量を企業間で変更することはない。それゆえ,シンジケートはカルテルよりその独占的支配力を有効に発揮できるのである。
日本におけるシンジケートの典型的な事例は,第2次大戦前に存在した銑鉄共同販売会社にみることができる。これは日本の製鉄会社が銑鉄の販売にあたって輸入業者も含めて共同販売会社を設立し,銑鉄販売の独占組織となったものである。戦後には独占禁止法の制定によってシンジケートがカルテルの一形態として禁止されたので,多くの事例はないが,函館製氷会社による共同販売会社の設立事件(1957),京都生コンクリート工業組合事件(1973)などが公正取引委員会によってシンジケートとして摘発された。
執筆者:植草 益
証券の募集・売出しにおいて,複数の第三者が共同で引受けを行うに際して結成される組織を〈引受けシンジケート団〉,略して〈シ団〉という。シ団のメンバーになれるのは,国債等公共債については銀行,信託会社等金融機関と証券会社であり,その他の債券,株式については証券会社だけである(証券取引法65条)。
執筆者:千田 博昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
カルテルが加盟企業の製品を共同販売機関を通じて販売する協定を締結した場合、その一手販売機関をシンジケートという。このほか公社債引受事業団、協調融資銀行団などをさす場合もある。
カルテルは生産数量の制限や価格協定などの共同行為を行うが、製品の販売については企業の自主性にゆだねられている場合が多い。そこでしばしば協定価格や数量制限が守られず、カルテル破りが生ずる。このようなカルテル協定違反を防ぐため、加盟企業の製品を一手に販売する共同販売機関(シンジケート)を設け、数量制限や協定価格の遵守を確保しようとする。したがって、このようなシンジケートはカルテルの一種であり、流通過程におけるカルテルの発展である。
シンジケートには、(1)シンジケートが買い手からの注文を引き受け、これを加盟各社に割り当てる仲介共同販売、(2)注文の引受けと割当てだけでなく、加盟各社からの委託を受けて販売を自らが行う委託共同販売、(3)すべての製品を加盟各社から買い取り、これを共同販売機関が販売する買取共同販売、などがある。シンジケートは、カルテル行為が守られているかどうかを、流通過程を統制することによって監視し補完する方法であるから、(3)の買取共同販売がもっとも強力である。しかし、シンジケートを設けても、依然として加盟企業の独立性は保持されているので、販売割当て数量の割当てをめぐって加盟企業間の紛争が生じがちとなり、これを契機としてシンジケートが崩壊することがある。
わが国では第二次世界大戦後の1947年(昭和22)に独占禁止法が制定され、第3条、不当な取引制限の禁止の規定において、生産制限や価格協定などのカルテルを禁止しているだけでなく、シンジケートをも禁止の対象としている。したがって戦後は公然たるシンジケートはなくなったが、昭和30年代に多くの業界に設けられた公開販売制や滞貨買取機関などは、流通過程におけるカルテルの補完機能をもち、その限りにおいて一種のシンジケートであるとみられる。
[御園生等]
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出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…カルテルのうち,カルテル組織が価格と各企業の供給量を決定し,利潤をプールしてこれを事後的に各企業に配分するものを利潤分配カルテルという。また各企業の製品を一元的に販売する組織あるいは機能をもつカルテルをとくにシンジケートと呼んでいる。このような一元的な意思決定が可能なカルテルの市場競争を制限する効果は,独占企業のそれにより近いものとなる。…
※「シンジケート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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