翻訳|scalar
最初は物理学において使われた概念であり,適当に単位を定めることによって実数で表すことのできる量,すなわち大きさしかない量をスカラー量あるいは単にスカラーという。ラテン語の階段,または目盛を意味するscalaからきた。長さ,時間,温度,質量,電荷などがスカラーである。これは力のように大きさと方向をもつベクトルと区別するために用いられる概念である。ベクトルは座標を使って数ベクトルとして表示すると座標の一次変換によってその成分が変化するが,スカラーは一次変換によって不変である。古典的にはこの性質によってスカラーを定義した。
数学では線形空間(ベクトル空間)の係数体の元のことをスカラーという。すなわち体K上で定義された線形空間Vを考える場合,体Kの元のことをスカラーといい,Vの元をベクトルという。また行列では単位行列の定数倍
をスカラー行列という。体Kの元を成分とするn×n行列全体はK上のn2次元のベクトル空間をなし,係数体Kの元aを行列Mにかけることは,行列
を行列Mにかけることと同じであることからこのように呼ばれる。
執筆者:上野 健爾
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…オールを左右2本持って1人でこぐスカルscull方式を区別するときはスカリングという。こぎ手はオアズマンoarsmanといい,スカルの場合はスカラーscullerである。ボートやヨットの競技会をレガッタregattaと呼ぶことがあるのは,ベネチアのゴンドラによる〈競争〉のなごりである。…
…電子のように1/2のスピンをもつ状態,さらに一般に任意のスピンをもつ状態を表すために導入された量で,スピノルの名もスピンに由来している。三次元空間を回転させたとき,その中の量は回転に伴って変化するが,その変化のしかたによってスカラー,ベクトル,テンソルなどに区別される。変化しないものをスカラーといい,空間内の変位を表す矢印と同じようにふるまうのがベクトルであり,数個のベクトルの積と同じように変化するのが高階のテンソルである。…
※「スカラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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