翻訳|Sunna
シーア派とともにイスラムを二分する一派。スンニーSunnī派とも呼ばれる。イスラム共同体内で圧倒的多数を占めるため,しばしば〈正統派〉と呼ばれるが,これはあくまでもスンナ派側からみた場合の呼称である。正式には〈スンナと共同体の民ahl al-sunna wal-jamā`a〉といわれる。その意味は,イスラム共同体が全体として受け入れてきた預言者のスンナ(慣行,範例)に従う人々ということである。イスラムにおいてスンナといえば,それは預言者ムハンマドのスンナのことであるが,それを具体的にどのようにして知るかで意見が分かれる。シーア派が預言者の血を引き,その後継者であるイマームの宗教的権威を強調し,その伝承を通してスンナを解釈するのに対して,スンナ派は広くサハーバ(教友)から語り伝えられてきた,いわゆるハディースの中にスンナは見いだされるとした。このためにハディースの批判的収集が行われ,ブハーリーやムスリムなどがそれぞれ個別に集録した六つの伝承集が最も権威あるものとして一般に認められた。こうしてコーラン解釈の第1の拠り所としてのスンナの実質的内容が確定することにより,コーラン,スンナ,イジュマー(共同体の合意),キヤース(類推)の四法源が確定する。もっとも,スンナが確立したといっても,多くのハディースの中にはその信憑性において完全でないものもあり,それをどこまで顧慮するか,したがってまた,キヤースをどこまで多用するか,によって法解釈に相違が生ずる。これがさまざまな法学派を生むことになるが,最終的にはハナフィー派,マーリク派,シャーフィイー派,ハンバル派の四法学派が共同体的承認を得てスンナ派の公的学派として確立し,今日に至っている。したがって,スンナ派ムスリムとは,形式的には〈六信〉と呼ばれる基本的信条,すなわちアッラー,天使,啓典,預言者,来世(アーヒラ),予定を受け入れ,〈五行〉ないしは〈五柱〉と呼ばれる基本的義務,すなわち信仰告白(シャハーダ),礼拝,喜捨(ザカート),断食,巡礼を果たし,四法学派のいずれかの法学派に従って日常生活を規制する人々のことをいう。
シーア派がイマームの不可謬説をとるのに対して,スンナ派はイジュマーの不可謬説をとる。このことは,コーラン解釈の最終的権威が共同体全体にあることを意味し,〈スンナと共同体の民〉として,また絶対多数派・体制派としてのスンナ派が共同体の統一とその合意をいかに重視したかを示している。
執筆者:中村 廣治郎
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正しくは「スンナとジャマーアの民(ahl al-Sunna wa-al-jamā‘a)」。イスラームで多数派。スンナとは慣わし,特にシャリーアの第二の法源である,ムハンマドの言行をさす。スンナ派とはスンナに従う正しい信者という意味で,多数派による正統イスラームの自称であった。その源流は,シーア派によれば簒奪者であるウマイヤ朝の正統性と政策を支持する政治的保守中道派である。既成事実の踏襲という意味であれ,スンナの遵守を掲げたこの立場は,合理主義に批判的な思潮を結集させ,9世紀半ば,ムータジラ派に対する勝利を通じてスンナ派としての地歩を固めた。だが,この勝利に貢献したハディース主義者の極端な反合理主義は主流とならず,アシュアリー派神学を基調とする折衷的なイデオロギーが確立された。
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…しかしアフリカでは毎年かなりのムスリムの増加が見込まれ,旧ソ連地域,中国のムスリムの数はつかみ難い。610年にわずか数人の信者をもって始められたイスラムは,その後1400年近くを経た現在,西はアフリカの大西洋岸から東は東南アジアの島々にまで広がって6億の信者をもち,その大部分がスンナ派,約1割がシーア派に属する。
[コーランの世界]
ムハンマドは610年のある日,唯一神アッラーの啓示を受け,自ら神の使徒としての自覚を抱き,最後の審判の日に備えるよう人々に警告を発した。…
…アサバがいない場合,〈割当相続人〉に割り当てた後の残余は,国庫bayt al‐mālに入り,アサバも〈割当相続人〉もなく,国庫もシャリーアで運用されていないときに,初めて(3)の母系親族に分けられる。 以上は正統派であるスンナ派の法の一般法則であって,部族的色彩を濃く残していることがうかがえる。これに反し,シーア派の法ではコーランを独自に解釈して別の相続体系を組み立てた。…
※「スンナ派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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