セグロカモメ(その他表記)Larus vegae; vega gull

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セグロカモメ」の意味・わかりやすい解説

セグロカモメ
Larus vegae; vega gull

チドリ目カモメ科。セグロカモメと呼ばれるカモメ分布が北半球を一周しており,隣接地では大きさや色彩がやや変化しているものがあるため,研究者によって 2~8種に分類されている。和名はそのうちのユーラシア大陸西・東部,北アメリカに生息するものを同種とみて同名で呼んでいた。しかし,2013年の国際鳥類学会 IOCの分類で,ヨーロッパセグロカモメ L. argentatus,セグロカモメ L. vegae,アメリカセグロカモメ L. smithsonianus に分離した。そのため和名では本種のみをセグロカモメと呼ぶ。全長約 60cm。羽色灰色部位の濃淡変異があるが,成鳥の夏羽(→羽衣)は体の大部分が白く,背との上面が灰色。翼の先端は黒色だが,白斑がある。は黄色で,下嘴先端に赤斑がある。脚は肉色。若鳥は白と褐色のまだら模様。繁殖地はシベリア北東部のオレニョク川レナ川あたりから東端チュクチ半島と,南はモンゴルから東アジア北部に及ぶ。アラスカ半島では繁殖地は不明だが,繁殖期に観察される。繁殖を終えると南下し,朝鮮半島日本中国東部,南部,インドシナ半島などの沿岸に渡って越冬する。日本には冬鳥(→渡り鳥)として渡来し,各地の沿岸に生息する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セグロカモメ」の意味・わかりやすい解説

セグロカモメ
せぐろかもめ / 背黒鴎
herring gull
[学] Larus argentatus

鳥綱チドリ目カモメ科の海鳥。全長約61センチメートルの大形種。北半球中緯度以北の沿岸や内陸湖沼に広く分布、繁殖する。日本列島では繁殖しないが、冬季に本州以南に渡来する。この種と置き換わってオオセグロカモメがオホーツク海沿岸地方で繁殖し、冬季にはわずかに南下する。沿岸性動物をとらえるほか、海岸に打ち上げられた動物の死体を食べ、内陸で小哺乳(ほにゅう)類もとらえる。また、繁殖地ではほかの海鳥を襲い、卵や雛(ひな)を強奪したり、餌(えさ)を横取りするなど、さまざまなものを食べる。ヨーロッパでは各地に集団繁殖地があり、社会生活が研究されてきた。なかでも、行動生物学創始者の1人であるイギリスの動物学者ティンバーゲンによる『セグロカモメの世界』(1958)は著名である。

[長谷川博]

『ティンバーゲン著、安部直哉他訳『セグロカモメの世界』(1975・思索社)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「セグロカモメ」の意味・わかりやすい解説

セグロカモメ (背黒鷗)
herring gull
Larus argentatus

チドリ目カモメ科の鳥。大型のカモメで,ヨーロッパおよび北アフリカからシベリアにかけてと,北アメリカ北部の沿岸地方の海岸,岩壁,島などで繁殖する。繁殖期以外は海岸や河口にすみ,日本には冬鳥として渡来する。全国的に見られるが,関東地方以西で越冬するものが多い。全長約60cm。体は白色だが,背と翼上面は青灰色で,翼端近くに黒色部とその中に白点がある。魚や海岸動物の死体などを食べる。
カモメ
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「セグロカモメ」の意味・わかりやすい解説

セグロカモメ

カモメ科の鳥。翼長44cm。大型のカモメで,背中は青灰色。オオセグロカモメに似る。ユーラシアの中・北部と北米に広く分布する。日本へは冬鳥として全国に渡来する。冬季は他のカモメ類とともに混群をつくり,港や河口,海岸などで見られる。おもに魚,甲殻類,カエルなどを食べるほか,漁業の廃棄物をあさることも多い。
→関連項目カモメ(鴎)

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android