千両役者
せんりょうやくしゃ
もと歌舞伎(かぶき)用語から出たことばだが、現在ではむしろ一般語として、政治家や経済人などで、堂々と他を圧するような風格をもつ人をさす褒めことばとして使われている。江戸時代の歌舞伎俳優は、11月から翌年10月までの1年間の契約で劇場に抱えられた。その年間契約が千両の高額に上る俳優を賛仰して千両役者とよんだ。その始めは正確ではないが、正徳(しょうとく)・享保(きょうほう)(1711~36)ごろにおける上方(かみがた)の初世芳沢(よしざわ)あやめ、江戸の2世市川団十郎などと伝えられる。のちには、実際には年給千両を超える俳優も出てきたが、一つの基準としてこの用語が一般化し、千両をとるほどの偉大な俳優、格式の高い俳優という意味で使われた。
[服部幸雄]
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せんりょう‐やくしゃ センリャウ‥【千両役者】
① 格式の高い役者。高等な役者。また、顔立がよかったり、芸がうまかったりして、特に人気のある役者。
※雑俳・柳多留‐一三(1778)「目かいは見へねど千両役者なり」
② 催し物や試合などで、目立った働きをして人気を博するひと。
※ニューヨークの黒人教会(1958)〈
平林たい子〉「この牧師さんは、それ以上の千両役者だった」
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せんりょうやくしゃ【千両役者】
歌舞伎用語。江戸時代,それぞれの役者は11月から翌年10月までの1年間契約で劇場の専属となったが,その給金が1000両の高額に達した者を千両役者という。その最初は正徳・享保期(1711‐36)の初世芳沢あやめや2世市川団十郎といわれる。その後それ以上の高給の役者も出たが,一般には金額にかかわらず,最も格式の高い役者,最高の人気役者,技芸抜群の役者,またそれらを総合したすぐれた役者をいう。【井草 利夫】
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世界大百科事典内の千両役者の言及
【歌舞伎】より
…そのぜいたくな生活ぶりが,しばしば幕府の弾圧を受けている。役者の給金(身上(しんしよう))は,江戸時代には年給で定められ,最高額の基準を1000両としたことから〈千両役者〉の称も生まれた。実際には,千両を超す年給を得る役者もいた。…
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