チリ硝石(読み)チリショウセキ(その他表記)Chile saltpeter

翻訳|Chile saltpeter

デジタル大辞泉 「チリ硝石」の意味・読み・例文・類語

チリ‐しょうせき〔‐セウセキ〕【チリ硝石】

硝酸ナトリウム主成分とする鉱物無色および白・赤褐・灰・黄色などでガラス光沢がある。三方晶系チリ北部の乾燥地域に広く分布肥料などの原料ソーダ硝石

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精選版 日本国語大辞典 「チリ硝石」の意味・読み・例文・類語

チリ‐しょうせき‥セウセキ【チリ硝石】

  1. 〘 名詞 〙 ( 南米のチリに多く産出するところからいう ) ナトリウム硝酸塩鉱物。組成式は NaNO3 で各種の塩類を含む。白色・赤褐色・灰色・レモン黄色などで透明なガラス光沢をもつ三方晶系の結晶。吸湿性が大きく水に溶けやすい。窒素肥料硝酸火薬・ガラスなどの原料として多量に用いられたが、現在ではアンモニアや硝酸の合成工業が発達したので需要が減った。ニトラタイト。天然硝酸ソーダ。ソーダ硝石。〔鉱物字彙(1890)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「チリ硝石」の意味・わかりやすい解説

チリ硝石 (チリしょうせき)
Chile saltpeter

チリに産するソーダ硝石NaNO3鉱石。チリ北部のアタカマ砂漠地帯に長さ700km,幅15~80kmの範囲に多数のチリ硝石鉱床が分布する。鉱床は水溶性の塩類によって膠結された層状の砂質礫からなり,ソーダ硝石の平均品位は約25%,カリ硝石,岩塩,およびナトリウム,カルシウム,マグネシウムの硫酸塩を伴い,微量のヨウ素酸塩,ホウ酸塩,臭化物,およびリン酸塩を含む。アンモニアの合成とアンモニア酸化法による硝酸の合成が確立されるまで肥料や火薬の重要な原料であった。
執筆者:

チリ硝石がチリの輸出品となるのは1850年ころからであるが,1860年以後,爆薬の製造に用いられるようになって輸出は大きく拡大した。しかし,硝石の採掘される地帯が当時ボリビアとの国境地帯からボリビアにかけての海岸部であったので,この地帯の領有をめぐって,ボリビア,ペルーを相手に太平洋戦争(1879-84)が行われた。チリが勝利してこの地帯を併合してからは,第1次大戦に至るまで硝石の輸出はますます拡大した。しかしアンモニア,硝酸の合成化学工業の発達により輸出は衰退し,今日の硝石の採掘はわずかな量(1980年62万t)にとどまっており,かつての硝石の生産地の多くはゴースト・タウンとなっている。
硝酸ナトリウム
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チリ硝石」の意味・わかりやすい解説

チリ硝石
ちりしょうせき
nitratine

もっとも代表的な硝酸塩鉱物の一つ。乾燥気候地域の土壌表面に皮膜状をなして産し、肥料として用いられる。その名にあるように南米チリには大きな鉱床があり、鉱床中には、副成分として、銅、クロム、ヨウ素などの鉱物が存在することがある。自形の報告はないが、その原子配列は方解石と同構造である。日本では、栃木県宇都宮市大谷(おおや)の凝灰岩(大谷石)の表面に、雨水のかからない箇所で少量着生することが知られている。

[加藤 昭]


チリ硝石(データノート)
ちりしょうせきでーたのーと

チリ硝石
 英名    nitratine
 化学式   Na[NO3]
 少量成分  K
 結晶系   三方
 硬度    1.5~2
 比重    2.26
 色     無、白
 光沢    ガラス
 条痕    白
 劈開    三方向に完全
       (「劈開」の項目を参照)
 その他   水に可溶。なめると冷たさを感じる

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百科事典マイペディア 「チリ硝石」の意味・わかりやすい解説

チリ硝石【チリしょうせき】

硝酸ナトリウム(NaNO3)を化学成分とする鉱物。三方晶系,通常塊状結晶。硬度1.5,比重2.24〜2.29。ガラス光沢,無色または白。水溶性。チリ北部アタカマ砂漠にのみ多量に産出。硝酸塩の原料として肥料,火薬などに重要であったが,空中窒素固定法の発達とともに,その価値は減じた。
→関連項目アタカマ砂漠アルカリ性肥料アントファガスタイキケ硝石太平洋戦争(南米)窒素肥料チリ

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化学辞典 第2版 「チリ硝石」の解説

チリ硝石
チリショウセキ
Chile nitre

天然産硝酸ナトリウムNaNO3のこと.慣用的にはチリのAtacama砂漠地帯に多量に産出する天然硝酸ナトリウム鉱を精製したものをさす.純度は94~97%.N 15.5~16%.六方晶系ac = 1:0.8276.密度2.24~2.29 g cm-3.融点306.8 ℃.硝酸およびヨウ素の重要な原料資源である.水溶性で硫安より吸湿性が大きい.窒素肥料として1870年ころから用いられ,また硝酸火薬製造原料として重要であったが,アンモニア合成,硝酸合成工業の発達によりその需要は低下した.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チリ硝石」の意味・わかりやすい解説

チリ硝石
チリしょうせき

「硝酸ナトリウム」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のチリ硝石の言及

【チリ】より

…しかし88年の国民投票で軍事政権は不信任され,89年の大統領・国会議員選挙を経て,90年にチリは民政に復帰した。【吉田 秀穂】
【経済】
 チリでは中央集権的な寡頭政治による政治的安定が早くから確立しており,経済的にも,はじめは小麦の輸出,次いで銅,チリ硝石の輸出(1879‐83年の太平洋戦争における勝利により硝石地帯の領有確定)により,早くから繁栄がみられた。しかし1929年の世界恐慌はこのような一次産品輸出経済に強い打撃を与えた。…

※「チリ硝石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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