テキスト(その他表記)text

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デジタル大辞泉 「テキスト」の意味・読み・例文・類語

テキスト(text)

《「テクスト」とも》
書物の本文。版本や写本の本文。また、原典・原本。「複数のテキストが伝わる説話」「テキストクリティック」
教材とする書物。教科書テキストブック。「放送講座のテキスト
コンピューターで扱う文字列や文章。文字コードのみから成る。テキストデータ。→テキストファイル
[類語](1異本写本類書流布本海賊版底本原本原典原書オリジナル原作出典典拠種本抄本校本定本/(2教科書教本読本

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精選版 日本国語大辞典 「テキスト」の意味・読み・例文・類語

テキスト

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] text )
  2. 本文。序文や注釈、図表などに対していう。また、原文。翻訳や要約などに対していう。〔舶来語便覧(1912)〕
  3. 本や作品などが、異なる版や写本など、いろいろな形で存在する時、その版や写本をいう。
    1. [初出の実例]「経籍の古版本、古抄本を捜り討めて、そのテクストを閲し」(出典:渋江抽斎(1916)〈森鴎外〉一三)
  4. 底本。翻訳や、異本を校合する際の基準として採用される本をいう。
  5. 大学などの授業、読書会、放送講座などで使われる、それらの内容にかなった本。教科書。テキストブック。
    1. [初出の実例]「研究会に顔を出してゐるので、どうしても買はねばならぬテキスト」(出典:故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉五)
  6. テキストファイル」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「テキスト」の意味・わかりやすい解説

テキスト
text

ラテン語のテクストゥスtextus(〈織物〉の意)に由来し,テクストとも表記する。テキストはもともと文書の〈本文〉を指し,注釈,索引,挿画等と区別したり,歌曲や歌劇でメロディに対する言葉の部分の名称として慣用されていた。また古典文献学では,古代ないし中世の作品が写本によってしか伝承されていないために,学問的な選別整理を経て,真正な原形あるいは標準的な形態を再構成する作業がされてきた。印刷本および著者原稿を扱える近代文献学も同様の方法をとっている。これは本文批評(テキスト・クリティックtext critic)と呼ばれ,本文(テキスト)と異本(バリアントvariant)の別が立てられるが,ときにはそれらを総称してテキストと呼ぶことがある。だが1960年代からは,テキストを現象学,記号論言語学などの関心から考察する動向が生じ,それにつれてテキスト概念も拡大細分化の傾向がある。もっとも広義なのは,言語行為論的な規定で,口頭による表出や身ぶりのような非言語媒体も対象にするため,テキスト概念はかえってあいまいになる。記号論的定義は,テキストに,自然言語から成る特定の記号によって確定され,テキスト外の諸構造と対立関係をなし(明示性),始めと終りのある有限な記号集合で,しかも記号相互に階層構造があり(境界性),さらに統辞論的なレベルのほかに内部的に芸術的組立ての構造を形成している(構造性),という性質を見る。テキスト論(テクストロギーTextologie)による定義は,まず作者が自己の創造過程の結果として作品に対して最終的に与えた言語形態であること,第2にそれが文字化されていることを条件とする。この学問分野の目標はテキスト構成の歴史研究であるが,その連関は多方面にわたる。特に〈文字性〉に留意すると,解釈学的関心でもある,テキストとその特定な成立状況との分離独立,原作者の特定な意図に拘束されない多様な解釈の可能性の視界が開けてくる。これはまた,小説のような虚構テキストの場合,構成要素は成立時の外界の事象に限られず,時間的空間的に別個の連関からの選択が可能であり,同時に過去の文学的慣習や制度の事項をとり入れていることを考え合わせると,テキスト論と文学における作用・受容理論をつなぐ重要な接点といえる。
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図書館情報学用語辞典 第5版 「テキスト」の解説

テキスト

(1)主として言語によって表現された資料一般.言語学や記号学分野では,単に記録された記号表現という意味ではなく,受け手と送り手コミュニケーション過程に位置付けられたテキスト概念が提唱されるようになり,その影響を受けて,単なる記録という以上の意味でこの語が使用されるようにもなってきた.さらに,言語表現だけでなく,図,写真,絵といった表現形式をとるものも広くテキストに含める考え方もある.「テクスト」と表記されることも多い.(2)印刷物の本文.(3)教科書,教材.

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百科事典マイペディア 「テキスト」の意味・わかりやすい解説

テキスト

ラテン語のtextus(〈織物〉の意)に由来し,テクストとも記す。フランス語ではtexte。(1)本文校訂においては,後代に付け加えられた注釈などに対して,原著者によって書かれた原典,本文。写本などで,何種類かの異本(バリアントvariant)が存在する場合,校訂者がその異同を取捨選択または折衷し,もっとも原著者を反映するものとして決定した版を指す。(2)構造主義記号論においては,言語記号によって構築されたものをいう。小説と記録など従来別ジャンルとみなされたものを意味作用を行う記号体として横断的にみる観点に基づく。またさらに,記号として解釈できるものをすべてテキストとみなすこともある。都市のテキスト,建築のテキスト,映像のテキストなど。

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IT用語がわかる辞典 「テキスト」の解説

テキスト【text】

コンピューターで扱われる文字列や文章、文字情報。文字コードのみで構成され、コンピューターの画面に表示される文字のほか、改行やタブなどの制御文字を含む。◇「テキストデータ」ともいう。テキストのデータのみのファイルを「テキストファイル」という。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「テキスト」の解説

テキスト

文字コードだけで構成された文字列や文書のデータ。テキストだけを含むファイルを、テキストファイルという。通常、ワープロ・ソフトで作成したファイルには、テキストのデータ以外にも、書体行間用紙の設定などさまざまな属性情報が含まれている。そのため、特定のワープロ・ソフトでレイアウトを整えたファイルは、互換性のあるアプリケーションでなければ開けない。テキストファイルは、文字を扱うほとんどのソフトウェアで使える。ただし、異なるOS間では、使用する文字コードや改行コードが異なることがあるので、エディターやワープロ・ソフトで読み込む際に、変換作業が必要になる。

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パソコンで困ったときに開く本 「テキスト」の解説

テキスト

人間が読み書きできる文字と、改行やタブなど一部の特殊なデータだけで構成されたデータのことです。「プレーンテキスト」ともいいます。
テキストファイルだけでなく、電子メールに添付された状態のファイルやHTMLのデータなど、見た目と違って実体はテキストというデータも多いです。「どう表示するか」は別問題なのです。
⇨HTML、ソース、テキストファイル

出典 (株)朝日新聞出版発行「パソコンで困ったときに開く本パソコンで困ったときに開く本について 情報

世界大百科事典(旧版)内のテキストの言及

【詩学】より

… 18世紀のロマン主義文芸運動以降は,しだいに新しい創作論や近代的な文芸批評が起こり,直接的にアリストテレスに拠る詩学は衰えたものの,言うまでもなく,今日の文学・芸術を考える上で,アリストテレスの《詩学》自体に含まれていたさまざまな論は,その価値を失っていない。【福井 芳男】
[フォルマリズムに始まる詩学の発展]
 〈詩学〉という言葉は,一般には詩の韻律・言語の分析や研究をいうが,構造主義の登場以後はとくにロシア・フォルマリズムに始まる詩,そして一般に文学テキストの構造的研究とその理論をさす。ロシア・フォルマリズム(1910年代後半に発足)は,世界の明視(ビジョン)の創造を芸術の目的とし,その方法は異化(V.シクロフスキーによる。…

【文学理論】より

…そしてその変貌の過程において登場してくるのが,文学理論と呼ばれるものなのである。
[テキスト論と読者論]
 その文学理論を支える特徴的な発想の中心にあるのが,テキストについての新しい考え方である。端的に言えば,これまでの文芸批評がその対象としての作者と作品を失ったあとに,文学理論の基礎として発見されたのが〈テキスト〉であるということになるだろう。…

【翻訳】より

…一般に翻訳とは,ある自然言語の語・句・文・テキストの意味・内容をできるだけ損なうことなく他の自然言語のそれらに移し換えることをいうが,とくに文学作品の,ある自然言語から別の自然言語への移し換えをいう場合もある。また,翻訳という言葉は翻訳の行為・活動・過程を指すこともあれば,翻訳の産物・作品を指すこともある。…

※「テキスト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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