精選版 日本国語大辞典 「ナトリウム」の意味・読み・例文・類語
ナトリウム
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周期表第1族に属し、アルカリ金属元素の一つ。ナトリウム、ソジウムの名称は鉱物性アルカリを意味するラテン語のnitrum, solidaに由来し、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)の古名natron sodaに基づくといわれている。
[鳥居泰男]
ナトリウムは、化合物の形では人類文明の黎明(れいめい)期からすでに利用されていた。5000年も前にエジプト人はソーダ湖から炭酸ナトリウム(ソーダ)を採取し、砂や貝殻と混ぜてガラスをつくっていた。この物質は古くから清浄剤や洗剤としても用いられており、また塩化ナトリウムは食塩の名で食品の保存や調味料として使われてきた。しかしナトリウムの化合物が同族のカリウム化合物と明白に区別されるようになったのは、1758年のドイツのマルクグラーフの炎色反応の実験以後である(ナトリウム化合物は黄色、カリウム化合物は淡紫色の炎色反応を示す)。1807年にイギリスのH・デービーは、水酸化ナトリウムを白金るつぼ中で加熱融解し、電気分解することによって金属ナトリウムを単離し、ソジウムと命名した。1890年にはアメリカの化学技術者カストナーHamilton Young Kastner(1858―1899)によって工業的製造の方法が開かれた。
[鳥居泰男]
ナトリウムは他のアルカリ金属元素と同様に反応性に富んでいるため、自然界で単体金属の状態をとることはできない。つねに1価の陽イオンとして化合物をつくり、地球上に広く分布している。海水中に、塩化ナトリウムに換算して平均2~3%の濃度で存在しているが、特別の場合として、ヨルダンとイスラエルにまたがる死海では20%もの濃度に達している。塩化ナトリウムはまた岩塩として巨大な鉱床をつくっている。炭酸塩(天然ソーダ)、硝酸塩(チリ硝石)、硫酸塩(ボウ硝)、ホウ酸塩(ホウ砂)なども鉱物として世界各地に産出する。また、不溶性のアルミノケイ酸塩、たとえば方沸石NaAlSi2O6・H2Oやソーダ長石NaAlSi3O8などにも含まれている。ナトリウムはまた動物体内に比較的多量に含まれ、組織液の浸透圧の維持や水素イオン濃度指数(pH)を一定に保つなどの重要な生理的役割を果たしている。
[鳥居泰男]
工業的には融解塩を電気分解する方法によって製造されるが、原料として水酸化ナトリウムを用いるカストナー法と、塩化ナトリウムを用いるダウンズ法とがある。カストナー法では、鉄またはニッケルを陰極とし、黒鉛を陽極として320℃(水酸化ナトリウムの融点は318.4℃)付近で電解を行う。陰極では
2Na++2e-―→2Na
の反応がおこって金属ナトリウムが遊離し、陽極では
の反応によって酸素が発生する。ダウンズ法では、原料の塩化ナトリウムの融点(800.4℃)を下げるために塩化カリウムや塩化カルシウムを加える。こうすると600℃付近で電解が可能となる。この方法では陽極で
2Cl-―→Cl2+2e-
の反応がおこり、塩素が副産物として得られる。ダウンズ法では、塩化ナトリウムを水酸化ナトリウムに変えずに直接原料とすることができるうえ、電流効率も高く、塩素ガスが副生するなど多くの利点があるので、今日ではダウンズ法により多く製造されている。金属ナトリウムは減圧蒸留によって精製することができる。
[鳥居泰男]
銀白色の軟らかい金属で、常温では体心立方構造をとっている。ナイフで切ったり、小孔から押し出して容易に針金状にすることができる。新しい面は金属光沢を呈するが、空気に触れるとただちに酸化されて光沢を失う。融点以上に熱すると炎をあげて燃える。ハロゲン、酸素などと激しく反応し、水素とも化合物をつくる。また水とも激しく反応して水素を発生し、反応熱のためにナトリウム自体は球状となって水面を走り回り、水酸化ナトリウムを生ずる。さらに発生した水素が空気と混合して爆発をおこす。したがって、保存するときは石油中に蓄えておく必要がある。ナトリウム塩は一般に水によく溶ける。
[鳥居泰男]
各種金属の製錬において還元剤となるほか、アマルガムとして各種の還元、さらに合金、触媒などとしても用いられる。また、融点が低く、熱中性子吸収断面積が小さいのを利用し、単独またはカリウムとの合金(Na‐K系合金、ナクという)として原子炉の冷却剤に用いられる。
[鳥居泰男]
人体に約0.15%含まれ、無機質の元素のなかではカルシウム、リン、カリウム、塩素、マグネシウムなどと同様に比較的多く存在するものである。体内では細胞外液におもに存在し、細胞内液には少ない。ナトリウムは細胞外液の分量の維持、浸透圧の調整、酸・塩基平衡の維持などの重要な働きをしている。また、神経や筋肉の刺激を伝達する機能に必要な成分である。ナトリウムが細胞外液の調節をしているのに対し、カリウムは細胞内液の各種の調節に関係している。その境界である細胞膜では膜の内外でナトリウムとカリウムをそれぞれ適度な濃度に保っている。この仕組みはナトリウムポンプと考えられている。ナトリウムはこのように一定量存在することがたいせつであるが、長期間食事から塩として摂取する量が多い場合、ナトリウム過剰の害が問題となっている。とくに、高血圧症や胃がんの原因となる。そのため厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準」で、12歳以上は食塩としての摂取目標量を1日に10グラム未満と設定している。なお、WHO(世界保健機関)では1日6グラム以下が適当としている。
[河野友美・山口米子]
『糸川嘉則編『ミネラルの事典』(2003・朝倉書店)』▽『第一出版編集部編『厚生労働省策定 日本人の食事摂取基準 2005年版』(2005・第一出版)』
Na.原子番号11の元素.電子配置1s22s22p63s1の周期表1族元素.原子量22.99.安定同位体は 23Na だけであるが,ほかに6種類の放射性同位体が知られている.1807年H. Davy(デイビー)が水酸化ナトリウムの融解電解ではじめて金属を遊離した.同年,Davyはsodaとして知られていた天然炭酸ナトリウムから元素名sodiumを提案した.一方,ドイツ語圏では1797年にM.H. Klaprothがsodaのかわりに古くから使われていたNatronとよぶことを薦め,1809年にドイツのL.W. Gilbertが元素名にNatroniumを提案,1813年J. Berzelius(ベルセリウス)が短縮形Natriumを使いはじめた.今日でも元素名は,英・仏語圏ではsodium,ドイツ語圏ではNatriumで,日本語の元素名はドイツ語名を採用している.しかし,宇田川榕菴は天保8年(1837年)出版の「舎密開宗」で,曹冑母(ソウチウム)ソーダ,メタールと記載している.
天然には,チリ硝石(硝酸塩),ボウ硝(硫酸塩),ホウ砂(ホウ酸塩),天然ソーダ(炭酸塩)などの鉱物として広く分布している.地殻中の存在度23000 ppm.海水中には塩化ナトリウムとして約3% 含まれている.ナトリウムの水酸化物または塩化物の融解電解により得られる.真空蒸留により精製する.銀白色の軟らかい金属.等軸晶系.体心立方格子構造.格子定数a = 0.428 nm(20 ℃).融点97.8 ℃,沸点883 ℃.密度0.971 g cm-3(20 ℃).融解熱2.63 kJ mol-1.イオン化電位5.138 eV.炎色反応は黄色.空気中で酸化されてただちに光沢を失う.水とはげしく反応して水素を発生し,水酸化ナトリウムとなる.このとき,生成する反応熱のため水素が発火することもある.ハロゲン,酸素,ホウ素,炭素,ケイ素,硫黄族の元素とはげしく反応し,リン,ヒ素,水素とも化合する.アンモニアと反応しナトリウムアミドを生じる.高温では二酸化炭素,ケイ酸塩などとも反応し,ガラス,磁器を侵す.酸とは爆発的に反応する.塩においては酸化数1のイオンとして存在し,塩は一般に無色で,水に易溶で結晶水をもつものが多く,潮解性のものも少なくない.
原子炉の冷却剤,ナトリウム化合物の製造,有機合成の還元剤,チタン・ジルコニウムなどの金属の製造,陰イオン重合触媒などに用いられる.[CAS 7440-23-5]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
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