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ヘッケル Haeckel, Ernst (Heinrich Philipp August)

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ヘッケル
Haeckel, Ernst (Heinrich Philipp August)

[生]1834.2.16. ポツダム
[没]1919.8.9. イェナ
ドイツの生物学者。父は行政官。ウュルツブルク,ベルリン両大学で医学を学ぶ。ベルリン大学で当時教授であった J.ミュラーの影響を受け,海産動物の研究に関心をもつ。 1861年,イェナ大学より動物学の学位を取得,同年員外教授,65年より正教授。 C.ダーウィンの『種の起原』が出版されると,それを支持し,進化論の普及・啓蒙に努めた。彼は自然界全体を一元的に説明することを志し,そのための基礎理論としての役割を進化論に求めた。また無生物界から生物界への連続的な移行を想定し,両界をつなぐものとしてモネラという原始的な生物を仮想。それは蛋白質から成る無構造の塊とされ,これに物理法則が働いて単細胞生物へ,さらに多細胞生物へと進化すると考えた。この仮説を一時裏づけていたモネラの発見は,誤りであることがのちに判明した。生物を物理法則で説明しようとする基本姿勢は,遺伝に関する理論においてもとられており,原形質をつくっている分子の運動で遺伝の仕組みを説明。理論的考察のみに基づいてではあるが,核が遺伝に関係していることを,66年という早い時期に示唆した。また,有名な反復説を定式化し,「生物発生原則」とも呼んで重視した。主著『一般形態学』 Generelle Morphologie der Organismen (1866) 。

ヘッケル
Heckel, Erich

[生]1883.7.31. デーベルン
[没]1970.1.27. ラードルフツェル
ドイツの画家。ドレスデンの工科大学で建築を学び,のち絵画に転じた。友人 E. L.キルヒナーらとともに 1905年,表現主義運動「ブリュッケ」を創設。 11年よりベルリンに定住。 49~56年までカルルスルーエ美術学校教授をつとめた。強烈な色彩とはっきりした輪郭による風景,人物画が特色。また木版画,石版画も多数制作した。

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デジタル大辞泉の解説

ヘッケル(Ernst Heinrich Haeckel)

[1834~1919]ドイツの動物学者。海産の無脊椎動物を研究。ダーウィン進化論を支持し、生物の進化類縁関係の系統樹を作り、個体発生系統発生を要約して繰り返すという生物発生原則反復説)を主張。生態学の確立にも貢献。著「一般形態学」「自然創成史」など。

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百科事典マイペディアの解説

ヘッケル

ドイツの生物学者。ビュルツブルク,ベルリン等の大学で学び,イェーナ大学教授。放散虫や海綿動物などを研究。C.ダーウィンの進化論を支持し,一種の形而上学的唯物論ともいうべき学問体系を構成した。
→関連項目一元論系統樹系統発生個体発生コワレフスキー物活論ルー

ヘッケル

ドイツ表現主義の画家。ザクセンのゼーベルン生れ。ドレスデンの工科大学で建築を学んだが,そこでキルヒナーを知って,絵画を独学,1905年ブリュッケの創立に参加。鋭い輪郭線と明快な色彩による象徴的表現を本領としたが,第1次大戦後,先鋭な表現から温和な作風に移った。

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世界大百科事典 第2版の解説

ヘッケル【Ernst Heinrich Philipp August Haeckel】

1834‐1919
ドイツの動物学者。ポツダムの生れ。ケリカーR.A.von Kölliker,R.フィルヒョーの教えを受け,さらにベルリン大学でJ.ミュラーに師事して,放散虫,海綿動物,腔腸動物等の海産下等動物の研究に入った。1862年にイェーナ大学に招かれ,のちに動物学教授となる。ダーウィン進化論をいちはやくドイツに受容し,その普及と学説の拡大(無機物,人間を含ませる)に尽くした。包括的な系統樹を構想し,形態学を構造的側面のみならず,継時的側面からも動態化した。

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大辞林 第三版の解説

ヘッケル【Ernst Heinrich Haeckel】

1834~1919) ドイツの動物学者。海産無脊椎動物を研究。ダーウィンの進化論に基づき生物の進化類縁関係を系統樹で示し、個体発生と系統発生の関係について生物発生原則を提唱。著「人間創成史」

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世界大百科事典内のヘッケルの言及

【獲得形質】より

…下って18~19世紀のJ.B.deラマルクは彼の進化論を展開するにあたって獲得形質遺伝を肯定していて,キリンの首が長い理由を説明する際に採用した用不用説(使用する器官は発達し,不使用器官は退化する)は有名である。19世紀のC.ダーウィンやE.H.ヘッケルも肯定的立場にあった。とくにダーウィンは彼の遺伝理論パンゲン説を論ずる中でそのことを述べている。…

【形態学】より

…他方,このころラマルクにより,次いで19世紀中ごろC.ダーウィンによって生物進化論が創始され,これを転機として形態学と分類学は近代的な展開を見せることになる。この過程でE.H.ヘッケルは,対称性によってすべての動物の体制と外形を幾何学的に分析し,その種別によって動物界を分類しようとする形式的な比較形態学を構想して,これを基本形態学と呼んだ。20世紀に入ってもその流れはダーシー・トムソンなどによって継承された。…

【系統樹】より

…しかし,ダーウィンはこれに具体的な実際の生物群を入れてはいない。ヘッケルはこれを具体的に生物のすべての群をはじめて系統樹に表した(1866,図1)。彼の系統樹では,まず植物,原生生物Protista,および動物の三つの大きな枝分れとなり,それがしだいに分岐して多くの枝を出している。…

【系統発生】より

…ある生物種族が進化とともに形態を変え,家系のような一つの発展系統をつくりだすこと。ドイツの生物学者E.ヘッケルが著書《有機体の一般形態学》(1866)の中で〈個体発生Ontogenese〉と対をなすものとして作ったことば(もともとはドイツ語でPhylogenie)。 個体発生とは異なって系統発生は実際に目で確かめられるものではない。…

【痕跡器官】より

…また胚はあまり分化していない状態の動物とみなされ,その限りで祖先つまり魚類の構造を表しているのだとされる。これに対して,ダーウィンに次いで現れたヘッケル流の考え方によれば,高等動物の発生過程に祖先の動物の形態が一時的に現れる,つまり個体発生は系統発生の短い反復であると見なされる。 痕跡器官にはさまざまな性格のものがあるが,一様にただ無用化した器官であるのではなく,進化や飼育栽培の下でなんらかの機構によって意味深い遺伝的変化が起こったことを物語っている。…

【社会進化論】より

…社会進化論は英米系が中心だという印象が強いが,社会ダーウィニズムをも含めて考えるとすると,もっと太い流れがドイツにあった。ドイツにおける進化論啓蒙の最大の功労者はE.H.ヘッケルである。彼においては,進化論はあらゆる現象の根本原理となり,世界のいっさいは一元的な〈もの〉の進化生成発展の結果だとする〈一元論〉を展開して,ドイツ思想界に圧倒的な影響を与えた。…

【進化論】より

…問題はその後ながくくすぶっていて,60年代に再燃し,さらに80年前後に天地創造説と進化論を平等に教えさせるべきだという法案が出されて裁判沙汰となった。
【進化の科学的研究の発展】
 ダーウィンの進化論は,同国人T.H.ハクスリー,ドイツの学者E.H.ヘッケルらの活動で普及した。しかしヘッケルにしても,ゲーテ,ラマルク,ダーウィンを三大進化論者として並列するものであり,また進化は認めるが自然淘汰以外の要因を重視する意見も多くの学者によって出されるようになった。…

【生態学】より

… 当時ドイツではこの意味のBiologieとほぼ同じ意味に使われていたことばがもう一つあった。それはE.H.ヘッケルが1866年に造ったÖkologieであった。彼はC.ダーウィンの影響の下に動物学の体系化を企てたが,その中において,従来の生理学や形態学その他の分野のほかに,〈動物の無機環境に対する関係および他の生物に対する関係,とくに同所に住む動物や植物に対する友好的または敵対的な関係〉を研究する分野を認める必要があることを述べ,その分野にÖkologieと命名した。…

【生物学】より

…〈生態学〉については,その源流は自然の照観という一般的な態度までさかのぼるが,学問分野としての確立は19世紀であった。この世紀の初期に,世界旅行の知見をもとにして,植物群系の分類を論じたA.vonフンボルトは重要な先駆者であったが,生態学ecologyの命名者はE.H.ヘッケルであった(1886)。ただし,彼のいう生態学は,ある環境下での生物の適応を論ずる環境生理学というべき視点であった。…

【生物発生原則】より

…反復説recapitulation theoryともいう。ドイツの動物学者E.ヘッケルが,著書《有機体の一般形態学》(1866)の中で主張した〈個体発生は系統発生の短いくり返しである〉という学説のこと。C.ダーウィンが主著《種の起原》(1859)で〈自然淘汰説〉とよばれる生物進化の理論を提唱したのち,ヘッケルはこの説に全面的に賛同し,それにのっとってすべての生物の形態とその成立ちを,自称〈一元論〉的に説明するものとして《一般形態学》を書いた。…

【相称】より

…生物学では,生物体の全体または一部の外形を整理分類するのにこの概念が用いられる。E.ヘッケルは1866年,系統類縁関係による分類とは別に,生物体の軸・極・相称性によって生物界を形態学的に分類することを提唱し,この体系を〈基本形態学Promorphologie〉と名づけた。現在の相称の概念は彼の創始によるところが大きい。…

【発生学】より

…しかし,メカニズムの追究を目的として発生を研究する学問が盛んになり,発生学と呼ばれる分野が確立されるようになったのは,19世紀の後半のことであった。これには,E.H.ヘッケルが〈個体発生は系統発生の短縮された,かつ急速な反復である〉という反復説(生物発生原則)を提唱(1866)したことに刺激されたところが大であった。つまり,発生を研究することによって,進化の道筋を現実のものとして目でみることができるであろう,と期待されたのである。…

※「ヘッケル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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