ボルガ川(読み)ボルガがわ(英語表記)reka Volga

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ボルガ川
ボルガがわ
reka Volga

ロシア西部を流れる川で,ヨーロッパ最大の川。全長 3530km。流域面積 138万km2。モスクワとサンクトペテルブルグのほぼ中間にあたるバルダイ丘陵に源を発し,南東流したのち,北東に流れを変え,トベリを経てルイビンスク人造湖にいたる。同湖を出て,さらにコストロマニジニーノブゴロドを経てカザンまで南東流,カザンより流れは南に変わり,ウリヤーノフスクを過ぎてジグーリの丘に突き当たり,ここを迂回してその東を流れ,サマーラに達する。その後南西流してサラトフボルゴグラードを過ぎたのちカスピ海沿岸低地を南東に流れ,アストラハンの下流でカスピ海に注ぐ。河口の三角州はその頂点がアストラハンの北 46kmにある広大なもので,面積約 1万8984km2。約 200の支流があり,おもなものは右岸のオカ川,左岸のカマ川である。おもに融雪水に涵養されるため 4~6月が高水位期。上・中流部は 11月末~4月中旬,下流部は 12月中旬~3月中旬は結氷。流域には多くの水力発電所が建設されており,これに伴うダムと貯水池により,「ボルガ・カスケード」と呼ばれる階段状の水面に変化してきている。ボルガ川はロシア最大の内陸水路で,上流部のルジェフから航路があり,木材,石油,建設資材,穀物,塩などの輸送に利用され,その取扱量はロシアの河川による貨物輸送量の 3分の2以上を占めている。また旅客輸送も発達し,夏季の観光客も多い。さらにボルガ=バルト水路によりバルト海と,北ドビナ川水系または白海=バルト海運河により白海と,ボルガ=ドン運河によりアゾフ海黒海と結ばれている。魚類が豊富で,漁業も盛んであり,なかでもチョウザメとその卵キャビアは有名である。しかし河水利用が進んだ結果,ボルガ川の汚染が問題となるとともに,カスピ海への流入量が減少し,カスピ海の水位が低下するという問題が生じた。古来,「母なるボルガ」とロシア人に呼ばれて親しまれており,ボルガ川を主題にした民謡も多い。

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デジタル大辞泉の解説

ボルガ‐がわ〔‐がは〕【ボルガ川】

VolgaВолга》ロシア連邦西部を流れる大河。モスクワ北西のバルダイ丘陵に源を発し、東流ののち南流してカスピ海に注ぐ。全長3688キロ。運河・水路によって黒海バルト海白海とも結ばれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ボルガ川
ぼるががわ
Волга Volga

ヨーロッパ・ロシアを流れてカスピ海に注ぐヨーロッパ最大の大河。長さ3531キロメートル(ダムの建設までは3690キロメートル)、流域面積136万平方キロメートル。これはヨーロッパ・ロシア総面積の約3分の1にあたる。モスクワ北西のバルダイ丘陵に源を発し、水源付近に形成された人造湖セルゲイ湖を出ておおむね東流し、ニジニー・ノブゴロド付近で右岸からオカ川をあわせる。カザン付近で南に向きを変え、左岸からカマ川をあわせてボルガ高地の東縁を流下する。サマラ付近に「サマラの湾曲」Самарская Лука/Samarskaya Luka(英名Samara Bend)とよばれる大きな曲流がある。ボルゴグラード付近からは標高が海面下となり、分流であるアフトゥバ川とともに網状流となって南東に流れる。河口部には80余の分流をもち、広大な三角州をつくってカスピ海へ流入する。支流は数多く、おもなものは、モスクワの中心部を流れるモスクワ川を支流にもつオカ川、ウラル山脈の西麓(せいろく)の水を集めるカマ川のほか、スラ川、ベトゥルガ川、サマラ川などがある。また、最下流部の520キロメートルは支流がない。上流では11月下旬から4月中旬まで、下流では12月上旬から3月中旬まで結氷する。平均流量は、中流のニジニー・ノブゴロドで毎秒2970立方メートル、下流のボルゴグラードで毎秒8060立方メートル(信濃(しなの)川の約15倍)である。[宇根 寛]

ボルガ改造計画と流域の資源

水源の60%以上が雪によって涵養(かんよう)されるため、ダム群構築以前には4~6月の雪解けで水位が急上昇し、しばしば氾濫(はんらん)した。1930年代から、発電、灌漑(かんがい)、治水、船舶航行などを目的とした「ボルガ改造計画」が実施され、ウグリチ、リビンスク、ニジニー・ノブゴロド、サマラ、ボルゴグラードなどのダム(貯水池)が、支流カマ川でもカマ、ボトキンスクなどのダムがつくられ、「ボルガ・カスケード」とよばれる階段状の河川となった。この結果、洪水はなくなり、濁水や渇水によって航行不能となることはなくなった。
 流域は、ボルガ・ウラル油田のほか、石炭、岩塩、森林資源など、豊富な資源に恵まれている。また、その豊富な水量は重要な電力源として利用され、多くの発電所が建設されている。中流域は主要な穀物や工芸作物の生産地帯となっている。水産資源にも恵まれ、カワカマス(パイク)、ニシン、チョウザメなど70種以上の魚類がおり、漁業が盛んである。[宇根 寛]

水運の発達

ボルガ川は、古代にはラー川、中世にはチリ川とよばれ、古くからアジアとヨーロッパを結ぶ重要な交通路であった。16世紀なかばにロシアがカザン・ハン国とアストラハン・ハン国を滅ぼして以後、ボルガ川に沿ってロシア人の移住が進み、また、ペルシアなどとの交易が盛んに行われるようになり、ボルガ川はロシアの重要な通商路となっていった。1937年に建設されたモスクワ運河、52年に完成したボルガ・ドン運河、63年に再建されたボルガ・バルト水路などで、黒海、カスピ海、バルト海、白海を結ぶ通路となってからは、物資輸送の大動脈としての役割をさらに増し、国民経済に益するところはきわめて大きい存在となった。ボルガ本・支流で合計1万7000キロメートルが可航河川となっており、ロシアの河川運輸のなかば以上がこの水系を通過している。木材、石油、石炭、穀物、岩塩、カリ塩、機械類などが運ばれる。おもな河港はトベリ、リビンスク、ヤロスラブリ、ニジニー・ノブゴロド、カザン、サマラ、サラトフ、ボルゴグラード、アストラハンである。[宇根 寛]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ボルガ‐がわ ‥がは【ボルガ川】

(ボルガはVolga) ロシア西部、ヨーロッパ‐ロシアの三分の一を流域とする大河。水源はモスクワ北西のバルダイ丘陵で、ロシア平原を貫流してカスピ海に注ぎ、ロシアの軸と称される。水上交通路として利用され、ボルガ‐ドン運河で黒海と、モスクワ運河などでバルト海と連絡している。古代にはラー川、中世にはイティリ川・アティリ川と呼ばれた。全長三六九〇キロメートル。

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