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オランダの画家。本名Pieter Cornelis M.。抽象絵画の創始者の一人で、新造形主義の主唱者。3月7日アメルスフォールトに生まれる。1892年アムステルダムの美術学校に入学し、かたわら敬虔(けいけん)なカルビニストの父親から精神的感化を受ける。初め印象主義、のちマチスの色彩に影響を受けたが、1911年パリでキュビスムに共鳴し、「樹(き)」の連作を始める。第一次世界大戦中故国でこの連作から抽象への探究を深め、15年水平、垂直の二線分による画面構成に達した。視覚を裏切らないこの二線分と、三原色および無彩色の配合とによって絵画からいっさいの再現的要素を追放し、生命力の根源を暗示する秩序と均衡を構成原理にしようとするのがその造形理論である。17年この理論(新造形主義)をもとにドースブルフらとデ・ステイルの運動をおこす。その単純明快な原理は抽象画の進展のみならず、建築、デザインの分野にも影響力をもった。19年パリに戻り、翌年理論書『新造形主義』を出版した。『赤、黄、青のコンポジション』(1921、デン・ハーグ市立美術館)はこの時代の代表作である。30年代にはさらに画面を単純化した『二つの線のコンポジション』(1931・アムステルダム国立美術館)を描く。38年ロンドン、40年ニューヨークに亡命。ここで従来の黒い線にかえて色面を細かく分節化したリズミカルな作品『ブロードウェー・ブギ・ウギ』(1942~43・ニューヨーク近代美術館)を描いた。44年2月1日ニューヨークで没。
[野村太郎]
『H・L・C・ヤッフェ解説、乾由明訳『モンドリアン』(1971・美術出版社)』
オランダの抽象画家。1912年以降はMondrianと署名。アーメルスフォールト生れ。父と叔父から絵画を学び,いったん小学校の絵画教師となるが,画家になる夢を捨てきれず,アムステルダムに出て美術学校に入る。卒業後アムステルダム近郊の田園を描く風景画家として評価を受けたが,やがて不動のもの,絶対的なものの表現をめざすようになり,フランス近代絵画と神智学思想の影響を受けて,教会の正面や風車などの連作を描く。1912-14年パリで本格的にキュビスムを学んで帰国し,16年には神智学者で数学者のスフーンマーケルスM.H.J.Schoenmaekersの影響の下に無数の垂直,水平の短い線だけによって神智学的な精神状態を表現した抽象絵画《プラス・マイナスのコンポジション》に達する。18年以降,長い垂直線と水平線に囲まれた三原色の色面による独自の画風を確立したあと再びパリに出て,20年代には正方形の画面の中に大きな正方形を中心に配した画面分割の画風を,さらに30年代には色面よりも垂直,水平の直線に重点を置いた画面分割の画風を展開させる。ロンドンを経て,40年にニューヨークへ渡り,この線分にリズム感を付け加えた《ブロードウェー・ブギウギ》(1943)のような晩年の代表作を残した。彼の造形思想〈新造形主義Neoplasticisme〉は20年代以降《デ・ステイル》誌や著書《新しい造型》(1925)などを通じて,絵画はもちろん,現代の建築やデザインの世界にも大きな影響を与えた。
→抽象芸術
執筆者:宮島 久雄
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…明快な合理性に支配されたこの建築はゼイルLambertus Zijl(1866‐1947)の彫刻によっても名高い。20世紀美術は本質的に国境のない美術であり,オランダにおいても各国の影響の下にさまざまな傾向の流派が成立したが,なかではオランダ的美意識と普遍性の稀有の結合とも評すべき純粋幾何学的抽象絵画を創始したモンドリアン,およびその同僚ファン・ドゥースブルフら〈デ・ステイル〉グループの意義が際だって大きい。同グループのリートフェルトやアウトはベルラーヘの路線を継いで機能主義建築を発展させた。…
…シュルレアリストのエルンストは森の連作を描いたが,これはロマン派と中世神秘主義を継承したもので,文明に冒されぬ人間精神の根源を象徴する。モンドリアンも木の連作によって,木のもつ宇宙的シンボリズムを水平と垂直のバランスのうちに抽象化した。クレーとカンディンスキーはいずれも木を芸術創造のプロセスにたとえ,ブランクーシは《無限の柱》によって原初の宇宙軸を再現している。…
…20世紀初めオランダに興った抽象美術運動。ファン・ドゥースブルフはモンドリアンの絵画と造形思想に共鳴し,彼とともに〈新造形主義Neoplasticisme〉を成立させ,この思想を広めるために雑誌の発行(1917‐28)を中心とした新しい造形運動をライデンで起こした。〈デ・ステイル〉(オランダ語で〈様式〉)はこの雑誌の題で,やがて運動の名称ともなった。…
※「モンドリアン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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