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長さの単位ヤード,質量の単位常用ポンドおよび時間の単位セカンド(秒)を基本単位として構成された英語圏諸国の計量単位系。元来はイギリスの度量衡単位系であり,その起源は古くかつ多元的で,多くはローマ帝国征服期にさかのぼる。エリザベス1世の1580年代に整備されはじめ,イギリスの対外的な発展とともに世界各地で使われるようになった。1824年にイギリスで度量衡法が制定され,同国内ではほぼ現代の度量衡法に近い単位系ができあがるが,このとき容量の基本単位の大きさを一新したため,旧来の標準器の系統の単位を用いてきた諸国との間に相違が生じ,各国で独自の単位系が使われるようになった。そのうちとくに重要なのがイギリス,アメリカ両国の単位系である。
イギリスでは1832年に標準器が被災し,新しいヤード原器と常衡のポンド原器が作られ,それに基づいて78年に新単位系が制定された。この単位系を〈連合王国系British imperial system〉という。その特徴は,容量の単位が乾量,液量共通で,英ガロンを基本単位とし,英ブッシェルはその倍量単位であること,フルイドオンス(液量オンス)が1/5ジルであること,質量の単位が,トロイ・オンスを除き,常衡に統一されていることである。
他方,アメリカ合衆国では1830年の上院の決議に基づいて慣用単位の調査が行われ,それに基づいて32年に財務省が単位系を作成し,標準供給を実施した。このようにして作られた単位系を〈米国慣用系U.S.customary system〉という。その特徴は,容量の単位が液量と乾量で異なり,液量は米ガロンを,乾量は米ブッシェルを基本単位とすること,液量のフルイドオンスが1/4ジルであること,質量の単位が一般日常品用の常衡,貴金属用のトロイ衡,薬局用の薬衡の三衡に分かれていることである。そして66年にメートル法との換算率が法定され,93年以降メートル法の国際原器を基準器としている。
以上の経過から連合王国系と米国慣用系はまったく別の単位系であり,両者はメートル法とともに世界の三大単位系を成していた。しかし,ヤードと(常用)ポンドに関しては,アメリカ,イギリス,オーストラリア,カナダ,ニュージーランドおよび南アフリカ共和国の標準機関の協議により,大きさが統一され,長さと質量の単位に関しては,1959年7月以降トンなどを除き,実効上共通になった。
ヤード・ポンド法は,単位の呼称が簡潔で大きさが日常生活に適したものであるが,単位と倍量単位,分量単位の倍数関係が一定でなく,十進法でもないこと,同じ性格の物理量であっても品目により単位系列を異にすること,また電磁気などの単位がなく,科学,技術の領域ではメートル法を併用せざるを得ないことから,英語圏諸国では国際単位系の採用によるメートル法化が推進されている。なお,日本では1954年以降法定単位ではない。
執筆者:三宅 史
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(今井秀孝 独立行政法人産業技術総合研究所研究顧問 / 2008年)
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