リチェルカーレ(読み)りちぇるかーれ(英語表記)ricercare イタリア語

デジタル大辞泉 「リチェルカーレ」の意味・読み・例文・類語

リチェルカーレ(〈イタリア〉ricercare)

16~18世紀の器楽曲に用いられた名称。自由で幻想的なものと、複雑な対位法を用いたものがあり、後者フーガ原型となった。

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精選版 日本国語大辞典 「リチェルカーレ」の意味・読み・例文・類語

リチェルカーレ

  1. 〘 名詞 〙 ( [イタリア語] ricercare ) 一六世紀から一八世紀にかけての器楽曲の形式一つ。多声部教会音楽の器楽用編曲から発展させられた模倣対位法手法による楽曲と、練習曲的独奏曲との二種がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「リチェルカーレ」の意味・わかりやすい解説

リチェルカーレ
ricercare[イタリア]

16世紀から18世紀における器楽曲の一形式。フーガの前駆的な形式の一つで,厳格な対位法的な書法を特徴とする。16世紀の中ごろからモテットの手法を器楽に取り入れる形で発展し,やがて,G.ガブリエリやA.ガブリエリらのベネチア楽派の手で器楽固有の形式として整備されていった。この形式をとくに鍵盤楽器の主要形式へと高めたのはフレスコバルディであり,主題の拡大や縮小,また一つの声部が主題を奏し終わらないうちに他の声部がたたみ込むよう重なっていくストレットを伴ういっそう高度な技法を開拓した。やがてその手法はフローベルガーをはじめとする彼のドイツ人の弟子たちの手でドイツにもたらされ,形式の調的対立感,変化に富んだ主題作法などの作曲法をとるフーガへと形を変える。J.S.バッハも《平均律クラビーア曲集》において意図的にリチェルカーレ風の作品を書いているほか,《音楽の捧げもの》に6声のリチェルカーレを作曲している。なお16~17世紀の練習曲や変奏曲などの器楽曲で,決まった形式をもたない即興曲風の非模倣的な作品にこの名をもつものもある。
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百科事典マイペディア 「リチェルカーレ」の意味・わかりやすい解説

リチェルカーレ

16−18世紀の西洋音楽における独立した器楽曲の一形式。イタリア語で〈捜索する〉の意。古い時代はリュートのような楽器調弦調律)をためしながらひくことから始まったといわれる。その後,合奏曲やオルガン曲では対位法的な模倣を含む楽曲にこの名称が用いられ,ベネチア学派やフレスコバルディにより発展。やがてドイツに移入され,フーガ先駆となった。J.S.バッハの《音楽の捧げもの》の6声のリチェルカーレはとりわけ有名。また,エチュード練習曲)の性格の器楽曲にもこの名称を使うことがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リチェルカーレ」の意味・わかりやすい解説

リチェルカーレ
りちぇるかーれ
ricercare イタリア語

16~17世紀のさまざまな型の器楽曲。「探索する」という意味のイタリア語動詞に由来し、この呼称で指示されるものも一律に規定しがたいが、もっとも重要なものはフーガの先行形態をなす模倣的器楽形式である。16世紀中葉に書かれた初期のリチェルカーレは、ルネサンス期の声楽モテットを器楽に移した様式を示し、多くの場合合奏用であった。しかし鍵盤(けんばん)楽器用の曲では声楽様式からの脱皮がくふうされ、16世紀後半のアンドレア・ガブリエリの作品で複数の主題をもつ模倣的リチェルカーレの定型が確立した。17世紀のフレスコバルディは単一主題に基づく様式を確立し、各部分を変奏で有機的に関連づけた。この単主題リチェルカーレは、その後技法的発展を示しつつしだいにフーガへ移行した。

[寺本まり子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リチェルカーレ」の意味・わかりやすい解説

リチェルカーレ
ricercare

音楽用語。 16~17世紀のフーガ様式の器楽曲によく用いられた名称。声楽曲のモテトと同様に,次々に主題を模倣風に展開するもので,最初期のものには M.カバッツォーニのオルガン曲 (1523) があるが,その後もガブリエリ,フレスコバルディらによって作られた。

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