一関(市)(読み)いちのせき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「一関(市)」の意味・わかりやすい解説

一関(市)
いちのせき

岩手県南部、北上(きたかみ)平野の南端にある市。西部は奥羽山脈栗駒(くりこま)国定公園、東部は北上山地の室根(むろね)高原県立自然公園の指定域。1948年(昭和23)一関、山目(やまのめ)の2町と中里、真滝(またき)の2村が合併して市制施行。1955年厳美(げんび)、萩荘(はぎしょう)、弥栄(やさかえ)、舞川(まいかわ)の4村を合併。2005年(平成17)、西磐井(にしいわい)郡花泉町(はないずみまち)、東磐井郡大東町(だいとうちょう)、千厩町(せんまやちょう)、東山町(ひがしやまちょう)、室根村(むろねむら)、川崎村(かわさきむら)を合併。2011年、東磐井郡藤沢町(ふじさわちょう)を編入。東北自動車道、国道4号、284号、342号、343号、456号、457号、JR東北本線、東北新幹線が走り、JR大船渡(おおふなと)線の分岐点である。西の栗駒山に発する磐井川が市の中心部を貫流して市中央部で北上川右岸に注ぎ、左岸には東の北上山地を水源とする砂鉄(さてつ)川、千厩川、黄海(きのみ)川が注ぐ。古代末の安倍(あべ)氏から藤原、葛西(かさい)氏の居館地となり、1607年(慶長12)に仙台藩領、1681年(天和1)以降は田村氏一関3万石の城下となった。建部清庵(たけべせいあん)、大槻玄沢(おおつきげんたく)など多くの蘭医(らんい)を輩出している。1890年(明治23)東北本線開通以前は、北上川水運に依存し、狐禅寺(こぜんじ)は500石積みの積替え港として栄えた。1947年のカスリーン台風、翌1948年のアイオン台風の洪水で大きな被害を受けた。現在は県南地方の流通拠点を目ざす一関流通団地や一関東工業団地が造成され、電子工業、精密機械などの工場がある。2011年の東日本大震災では死者15人・行方不明2人、住家全壊57棟・半壊737棟(旧藤沢町を含む)の被害を受けた(消防庁災害対策本部「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について(第159報)」平成31年3月8日)。特産に曲がりネギ、凍豆腐(しみどうふ)などがあり、国営総合開拓パイロット事業によって果樹園芸なども行われる。葉タバコ栽培、牧畜、酪農も盛ん。栗駒山麓(さんろく)には真湯(しんゆ)、須川温泉があり、磐井川に沿って渓谷美に富む厳美渓(国指定名勝・天然記念物)、砂鉄川には猊鼻渓(げいびけい)(国指定名勝)がある。面積1256.42平方キロメートル、人口11万1932(2020)。

[川本忠平]

『『一関市史』全7巻(1975~1978・一関市)』


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