(久保田啓一)
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江戸前期の国学者。〈ながる〉ともよむ。通称彦六,名は具平(ともひら)。大和小泉藩士の小崎氏の子として生まれたが,母方の姓下河辺を名のる。生国は大和で,大坂に住した。若くして歌を好み,木下長嘯子の門人となる。師の没後,三条西家に仕えたが,退身してのちは,いっさいの名利を捨て富貴におもねることなく,隠士として生涯を終えた。門流に今井似閑(じかん),野田忠粛,五井持軒らの有力者を輩出させ,特に大坂の地に歌学の礎を築いた功績は大である。その歌風は,長嘯子の影響を受け,因襲にとらわれず,自由で清新な調べに富む。また長流の声望を聞くにおよんだ水戸光圀の招聘にも応ぜず,委嘱された《万葉集》の注釈事業も病気がちで果たせなかったため,かわりに契沖を水戸家に推挽した。契沖は先輩長流の遺志を継いで,よく《万葉代匠記》の大著を完成させた。著書は《万葉集管見》《枕詞燭明抄》《続歌林良材集》《晩花集》《林葉累塵集》など。
執筆者:鈴木 淳
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江戸前期の歌人、歌学者。生年は諸説あるが、家集『長龍和歌延宝集』(1681成立)に「五十五歳自集」とあるのによる。大和(やまと)国(奈良県)の武士の家に生まれたが志を得ず、一時京都の三条西家に仕えたのち、大坂で隠者として生涯を送った。貞享(じょうきょう)3年6月3日没。歌学者としてはとくに『万葉集』に力を注ぎ、寛文(かんぶん)(1661~73)初年ごろ『万葉集管見』を著述、旧説にとらわれない自由な討究の精神は、親交のあった契沖(けいちゅう)に大きな影響を与えた。契沖の『万葉代匠記(だいしょうき)』は、長流が徳川光圀(みつくに)の依頼を受けながら病に倒れ果たせなかった『万葉集』の注釈を、彼にかわって完成したものである。和歌は木下長嘯子(ちょうしょうし)に私淑、また、庶民の和歌を集めて『林葉累塵集(りんようるいじんしゅう)』(1670刊)などの選集を編んだことも注目される。家集には契沖編の『晩花和歌集』(1686成立)もある。
[嶋中道則]
終(つひ)にわが着ても帰らぬ唐錦(からにしき)立田や何のふるさとの山
『『契沖全集附巻 長流全集』全2巻(1927・朝日新聞社)』
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1627~86.6.3
「しもかわべながる」とも。江戸前期の歌人・和学者。享年は3説あるが,自撰の「長竜和歌延宝集」所載記事に従って60歳説をとった。姓は小崎氏。母方の姓を名のる。名は共平(ともひら)。通称彦六。別号長竜・吟叟居。大和国立田(一説に宇多)生れ。木下長嘯子(ちょうしょうし)に私淑し,西山宗因に連歌を学ぶ。三条西家に青侍として仕え,「万葉集」の書写,研究につとめた。のち水戸光圀(みつくに)から「万葉集」の注釈を依頼されたが,病のため進まず,契沖(けいちゅう)に引き継がれた(「万葉代匠記」)。1670年(寛文10)に編刊した「林葉(りんよう)累塵集」は,最初の地下(じげ)歌人の撰集。著書「万葉集名寄(なよせ)」。
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…神楽歌(かぐらうた)および催馬楽(さいばら)の語句についての注釈書。江戸前期の歌学者下河辺長流著。神前で奏された楽舞にともない唱和された神楽歌,また雅楽風に編曲された民謡ともいうべき催馬楽の語句注釈書としては,前代の一条兼良の《梁塵愚案抄》があるが,本書はそれにつぐもので,契沖や賀茂真淵研究の先駆的位置におかれる。…
…11歳のとき大坂今里の妙法寺に入り丯定(かいじよう)の弟子となり,13歳で高野山東宝院の快賢について仏道修行し,阿闍梨(あじやり)位を得て大坂生玉の曼陀羅院の住持となった。この間に下河辺長流の知遇を得たが,やがて27歳のころ放浪の旅に出て長谷から室生山に至って死を決意し,岩頭に頭を打ちつけたが果たさなかった。そして吉野や葛城を経て再び高野山に上り,さらに和泉国の久井村や隣村の万町に移り住んで約10年を過ごした。…
…この名称が最終的に定着したのは明治時代になってからであった。
[第1期]
国学の源流は,元禄年間の下河辺長流(しもこうべちようりゆう),契沖(けいちゆう)の日本古典研究にまでさかのぼることができる。長流は武士出身の隠者,契沖は真言宗の僧であったが,ともに中世以来の閉鎖的な堂上歌学やその歌論に批判的であり,伝統の権威にとらわれぬ新しい古典注釈をめざした。…
※「下河辺長流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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