(読み)あたえる

精選版 日本国語大辞典 「与」の意味・読み・例文・類語

あた・える あたへる【与】

〘他ア下一(ハ下一)〙 あた・ふ 〘他ハ下二〙
① 自分の所有物を他人に渡して、その人の物とする。現在では、上の者から下の者へ授ける場合にいう。やる。さずける。
※斯道文庫本願経四分律平安初期点(810頃)「比丘尼の為に食を過(アタヘ)て、自ら食を取りて食をせむことを除け」
② 影響、効果などを相手に及ぼす。こうむらせる。
※四分律行事鈔平安初期点(850頃)「僧い其か罪を証正して、伏することあるを得むときに、方に与(アタフ)須し」
平家(13C前)一「幼き者に左右(さう)なく恥辱をあたへられけるこそ遺恨の次第なれ」
物事代償として金や物を供給する。あてがう。
※南蛮寺物語(1638頃)「門徒に人まへにふちかねをあたへるよし、仏法は一銭半銭は未来へ引入れのためなり」
④ 仕事、課題などを課する。「問題を与える」
※憲法講話(1967)〈宮沢俊義〉七「選挙くらい大きな役目を与えられている制度は少ない」
⑤ 指示、許可、結論などを出す。
※断橋(1911)〈岩野泡鳴〉一「きのふ、実は承諾を与へたのぢゃが、あいつ、おほ喜び、さ」
⑥ 時間、設備、条件などを利用できるような状態にする。利用することを許す。「弁明機会を与える」
三四郎(1908)〈夏目漱石〉一三「丹青会はかうしてこの大作に彽徊(ていくゎい)する多く観覧者に便利を与(アタ)へた」
⑦ (「与えられた…」の形で) 数学論理学で、定義づけられた、既知の、所与の、の意で用いられる。「与えられた三角形(円)」

あたえ あたへ【与】

〘名〙 (動詞「あたえる(与)」の連用形名詞化) 与えられること。また、そのもの。さずかりもの。めぐみ。たまもの。
曾我物語(南北朝頃)五「天のあたへを取らざるは、反(かへ)って其咎(とが)を得ると見えたり」

あた・ゆ【与】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段動詞「あたふ(与)」から転じて、室町時代頃から用いられた。多くの場合、終止形は「あたゆる」) =あたえる(与)
四河入海(17C前)四「国邑を割てあたゆる人であるぞ」

あた・う あたふ【与】

〘他ハ下二〙 ⇒あたえる(与)

くみ‐・す【与】

〘自サ変〙 ⇒くみする(与)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「与」の意味・読み・例文・類語

よ【与〔與〕】[漢字項目]

常用漢字] [音](呉)(漢) [訓]あたえる くみする あずかる と より か
仲間になる。くみする。「与国与党
かかわりができる。あずかる。「関与参与
あたえる。「与奪寄与給与供与恵与授与所与賞与譲与贈与貸与天与投与付与賦与
[名のり]あたえ・あと・あとう・くみ・すえ・ため・とも・のぶ・ひとし・もと・もろ・よし

むた【与/共】

名詞または代名詞に格助詞「の」「が」が付いた形に接続して、…とともに、…のままに、の意の副詞句をつくる。
「波の―か寄りかく寄る」〈・一三一〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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