予防拘禁(読み)よぼうこうきん

日本大百科全書(ニッポニカ)「予防拘禁」の解説

予防拘禁
よぼうこうきん

治安維持法違反により刑を受け、非転向のまま刑期を満了して出獄した者の「再犯」を防止するために、その者を拘禁し続ける制度。1934年(昭和9)の治安維持法改正案で初めて登場したが、このときは反対が強くて流産し、41年の同法改正において実現した。同法によると、予防拘禁の請求は、対象となった者の現在地の地方裁判所検事が同裁判所に請求(40条)し、裁判所が決定する(44条)。決定を受けた者は予防拘禁所に収容され、転向を強要する処置がとられた(53条)。期間はいちおう2年とされたが、転向しない場合は何度でも更新された(55条)。この制度により非転向の共産党員らは刑期満了後も敗戦に至るまで獄につながれ続けた。この制度は、敗戦後の1945年(昭和20)10月、GHQの指令「政治的、市民的及宗教的自由に対する制限の撤廃に関する覚書」によって、その根拠となる治安維持法、予防拘禁手続令、同処遇会などの廃止が命ぜられたことにより、崩壊した。

[渡辺 治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典「予防拘禁」の解説

よぼう‐こうきん ヨバウ‥【予防拘禁】

〘名〙 常習犯を刑期終了後も一定の期間拘禁する処分。イギリスで認められたもので、日本では、かつて治安維持法で、思想犯にこれを適用した。〔治安維持法(昭和一六年)(1941)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「予防拘禁」の解説

よぼう‐こうきん〔ヨバウ‐〕【予防拘禁】

刑期満了後も改悛(かいしゅん)のがないか、再犯のおそれがあると認められる者を、引き続き拘禁する制度。かつて治安維持法のもとで思想犯に対して採用された。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版「予防拘禁」の解説

よぼうこうきん【予防拘禁】

治安維持法違反者のうち,当局が〈非転向〉または〈転向不十分〉とみなした者を刑期満了後も拘禁する制度。1941年3月,朝鮮朝鮮思想犯予防拘禁令が施行され,ついで同一規定を含む新治安維持法が帝国議会で可決され,同年5月施行された。これよりさき,政府は三・一五事件関係者などの刑期満了・出獄に対処するため,1934年の治安維持法改正案で予防拘禁制の導入を試みたが実現しなかった。予防拘禁制は,治安維持法違反の受刑者中,政治的・思想的信念を変えずに(〈非転向〉で)出獄する者を,〈再犯〉のおそれありとして拘禁しつづける制度であるが,41年法では刑期満了でまさに釈放されようとする者のみならず,いったん釈放され思想犯保護観察法の対象となった者でも,〈転向不十分〉とみれば拘禁しうるとした。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

今日のキーワード

李下に冠を正さず

《スモモの木の下で冠をかぶりなおそうとして手を上げると、実を盗むのかと疑われるから、そこでは直すべきではないという意の、古楽府「君子行」から》人から疑いをかけられるような行いは避けるべきであるというこ...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android