皇太子の言詞あるいはその意を奉じた文書。三后(皇后,皇太后,太皇太后)のものもこれに準ずる。公式令の令旨式によると,令を受けた人が春宮坊(とうぐうぼう)に口頭で伝え,春宮坊から文書にして皇太子(三后)に施行の許可を求める。これに対し皇太子(三后)みずから日付を書き加えることになっていた。これは正文として保管され,さらに1通を写して施行する。施行の方法は,春宮坊(中宮職)の解(げ)によって太政官(だいじようかん)へ上申される場合と,その他の諸司へ移(い)または牒(ちよう)によって伝達される場合とがあった。また,公式令勅旨式条には,天皇の行幸(ぎようこう)などにより皇太子が留守をあずかる皇太子監国の際には,勅旨式に準拠して令旨を発行すべき規定がある。《続日本紀》の宝亀元年(770),《類聚三代格》の延暦25年(806)の令旨は,いずれも先帝崩後の時期に属し,かつ国政上の重要な内容のものであるから,勅旨式に基づく令旨であると考えるべきであろう。なお後世には,女院および親王・諸王の命令をも令旨と称した。
執筆者:柳 雄太郎
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皇太子および三后(皇后・皇太后・太皇太后)の命令・意志などを伝達する文書。律令制下では公式令(くしきりょう)に令旨式が規定された。発給手続きは皇太子などの意向をうけた者がそれを春宮坊(とうぐうぼう)に伝達し,春宮坊は皇太子などに返事をし,画日(かくじつ)をへたうえでさらに1通を写して施行することになっていた。平安時代後半になると,皇太子・三后・女院・親王などの意向をうけた近侍者の名で発給された奉書形式の令旨が行われるようになった。
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…また上卿から外記(げき)に命じて発給させる外記方宣旨,上卿から弁に命じ,弁から史に命じて作成される弁官方宣旨,遥任の国司や大宰帥が多くなったため,在国の官人に国司や帥の命を伝える国司庁宣,大府宣もこの系統である。公家様文書溯源の第2は,私文書たる書状の系譜を引くもので,綸旨(りんじ),院宣,令旨(りようじ)(公式様とは別),御教書(みぎようしよ),長者宣などである。貴人の側近に仕える人(天皇の場合は蔵人,上皇の場合は院司)が主人の仰せを承り,書状の形式で相手に伝えるもので,本来私文書であるが,仰せの主体の権威がそのまま文書の効力に機能した。…
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