国の財政活動のうち主として収入・支出・契約等,および,金銭その他の財産の受払い・増減・異動等に関して,国の会計機関を規律する一般法(1947公布)。旧会計法(1921公布)においては,現行会計法が定めているような技術的・手続的規定のみならず,予算・決算・会計制度等,財政の諸原則に関する規定も含めて定められていたが,日本国憲法下においては,財政民主主義(国会による財政処理の民主的統制。憲法83~91条参照)に照応する予算・決算その他財政の基本に関する事項は財政法(1947公布)において定められることになった。たとえば,総計予算主義(歳入・歳出のすべてを予算に編入する原則。財政法14条),単一予算原則(一会計年度の予算を単一のものとして,歳入・歳出を一会計の下に経理する原則。13条),会計年度独立の原則(会計年度を設けて一会計年度の経費はその年度の歳入をもって充当させる原則。11,12条)などは財政法に定められている。他方,会計法はこのような諸原則を技術的・手続的レベルで実効あらしめるために,租税をはじめ国に帰属するすべての収入を国庫に納入したうえで,この国庫から一切の支出を行うという原則(会計総括の原則ないし統一的収支の原則。会計法2条)や,歳入の徴収事務,歳出の支出事務,現金出納事務あるいは支出負担行為等の事務について,それぞれ独立の担当機関を定め,とくに,歳入の徴収の職務や歳出の支出の職務と,現金出納の職務との兼職を原則として禁止し,会計事務の厳正を確保するとともに法にたがうのを防止するための原則(会計機関独立の原則。8,26条)を定めている。会計法はこのような諸原則の下で,歳入(一会計年度の一切の収入)が法令の定めるところにより確実・適正に徴収されるための諸規定(2章),支出負担行為および支出が法令または予算に従って適正に行われるための諸規定(3章)を置き,また,各省庁の行う契約等の公正を確保するための原則(一般競争契約)や契約の方式・形式等に関する規定を置いている(4章)。その他,金銭の給付を目的とする国の権利や国に対する権利の消滅時効に関する民法の特則(5章),国庫金および有価証券の保管の方法に関する規定(6章),および現金の出納保管をつかさどる出納官吏の職務や弁償責任等について定めている(7章)。なお,会計法の施行に必要な事項は,委任命令たる〈予算決算および会計令〉(1947公布)によって定められている。
→行政契約 →予算
執筆者:福家 俊朗
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国の収入・支出に関して規律する一般法(昭和22年法律第35号)。
大日本帝国憲法(明治憲法)下においては、会計法には収入・支出の手続に関する規定のほかに、予算・決算制度に関する規定が置かれていたが、第二次世界大戦後の日本国憲法下では、収入・支出に関する技術的な規定を定めることとし、財政処理に関する基本原則、予算・決算制度のあり方については、新たに財政法を制定して、統一的に定めることとした。このように、第二次世界大戦後の会計法は、国の現金会計に関する技術的・手続的規定というべき性格をもっている。
会計法は8章50条からなるが、まず総則規定として、収支統一の原則を掲げる(2条)。この原則は、歳入・歳出の混交を禁じるもので、歳入はかならず国庫に納付して統合し、歳出はかならず歳出予算から支出されねばならない、とする。現金会計のもう一つの重要な原則は、会計年度独立の原則である。この原則は、財政法第12条および第42条本文の定めるところで、旧会計法とは異なり、現行の会計法においてはその旨が明示されていないが、会計年度を設ける以上、この原則は当然に妥当する、と考えられている。
さらに会計法は、収入、支出負担行為および支出、契約、時効、国庫金および有価証券、出納官吏などに関する規定を置いている。また、会計法を具体的に施行するための政令として、「予算決算及び会計令」、「予算決算及び会計令臨時特例」などがある。
会計法に定める規定の多くは、国の内部において、会計に関する手続の適正さを確保することを直接の目的とする。その意味では、会計法は、基本的に国の内部の会計機関に対する訓令的な法規といってよい。ただ、時効に関する規定(30条以下)など、国と第三者との間の法律関係を直接規制する規定も一部にあるので、注意を要する。
なお、会計の概念は多義的であって、会計の対象による区分(現金会計、物品会計、不動産会計)に応じて、会計法を広くとらえることがある。この場合、現金会計については、前述したとおり、会計法を中心とする会計法規の規律するところである。物品会計については、物品管理法などが、不動産会計については、国有財産法などが、それぞれ規律することとなる。
[田中 治]
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…すなわち,国家の経済活動に伴って生じた財産の増減異動を一定の秩序のもとに組織的に出納,記録,計算,整理をしておき,国家財政の経理状態をつねに明確にするとともに,その発生の原因と結果の検討,分析を通じて,将来の国家の経済活動の合理化に資することができるように管理を行っていくことが要請されている。会計制度は,このような国家の経済活動に関する経理面での管理手続を規定,整理するための制度であり,具体的には,財政法,会計法,国有財産法等の法的規範のもとに行われている会計年度,会計区分,会計機関,国庫出納手続,会計検査等の諸制度をいう。
[会計制度の歴史]
日本の会計制度は,近代国家におけるさまざまな制度と同じく,明治維新以後その基礎が築かれ,資本主義の発達と相まって進展を遂げてきた。…
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