広義には、憲法7章に定める財政諸条項(財政議会主義の原則、租税法律主義の原則など)、およびそれを具体化した財政諸法規の総称として用いられる。各種の租税法(所得税法、法人税法、消費税法、国税通則法、国税徴収法など)、財政法、会計法、国有財産法、物品管理法、会計検査院法などがすべて含まれる。なお、ここでいう財政とは、国家の行政活動に必要な財源を確保し、これを管理、使用する作用をいう。この作用には、租税の賦課徴収のような財政権力作用と、税収を配分し、公の財産を管理する財政管理作用とが含まれる。
狭義には、「財政法」という名の法律(昭和22年法律第34号)を意味する。財政法は、国の予算、その他の財政の基本に関して定めた法律である。財政の基本といっても、財政権力作用については、別に各種の租税法規などが完結的に定めるため、財政法は財政管理作用に関する基本法にとどまる。また、財政管理作用のうち、財産の管理作用については、財政法は若干の基本原則を定めるにとどまり、その詳細は、国有財産法、物品管理法、国の債権の管理等に関する法律などの定めるところとなっている。地方公共団体の財政運営については、地方財政法の定めるところによる。
大日本帝国憲法(明治憲法)下では財政法は存在せず、会計法のなかにおいて、収入・支出の手続に関する規定だけではなく、予算・決算制度などに関する規定も定められていた。第二次世界大戦後、赤字公債の濫発などへの反省をもとに、憲法の財政条項を具体化するための基本法として財政法が新たに制定されるに至った。財政処理の基本原則や、予算・決算制度については財政法の規律するところとなり、他方、収入・支出の手続などに関する技術的な規定は会計法において定めることとされたのである。
財政法は5章47条からなり、その内容は、大別して、財政に関する基本原則、予算制度、および決算制度の三つに区別することができる。
財政に関する基本原則には種々のものがあり、予算管理や会計処理の基本にかかわるものとして、会計年度独立の原則(12条)、予算単一の原則(13条)、総計予算主義の原則(14条)などが定められている。財政運営上の原則として、国債に関して、建設公債の原則(4条)、市中消化の原則(5条)などがある。これ以外にも、課徴金等の法定主義(3条)、現金以外の財産の処分の権限(8条、9条)、財政状況の国民および国会への報告(46条)などの定めがある。予算制度については、予算の種類、内容、作成、執行、繰越しなどに関する規定がある。決算制度については、決算の作成、剰余金の処理などに関する規定がある。
[田中 治]
日本国憲法は国の財政処理の基本原則として議会主義の徹底化を図っているが(日本国憲法第7章),そのことをより具体化するため,国の会計処理の方法を定める会計法とは別に,財政運営に関する基本原則を定めた法律(1947公布)である。本法は,財政総則,会計区分,予算,決算,雑則の5章から成り,公債または借入金を原則として歳入財源より除外する等の健全財政主義を強調しつつ,国の財政運営の基本計画とも言うべき予算の単年度主義・総会計主義・公開主義等,国会による財政統制を実効あらしめる原則を定め,また,決算の国会提出等,財政民主主義の徹底化を図っている。もっとも,1952年の財政法改正によって,継続費や繰越明許費が新設されて予算の単年度主義の例外が認められ,また,多数かつ多額の規模の特別会計の創設や政府関係機関および公団・事業団等の国の行政に密接な関係を有する特殊行政法人が創設されて,別途弾力的な財政運営が認められる等,国会の財政統制を実質的に形骸化する傾向が見られる。また,健全財政主義の点では,財政法4条が歳入財源の例外として認めるいわゆる建設公債が66年度より発行され,また1965年度に一度発行されたのに加えて75年度以降,一般会計の巨額の赤字を補塡するためのいわゆる特例公債(赤字公債)が継続して発行されており(1975-90年度,94-95年度),財政法を制定した本来の意味が改めて問われている。
→財政 →地方財政法
執筆者:福家 俊朗
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(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2007年)
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…戦時の物価統制が外されると,それは戦後のはげしいインフレを招いた。1947年,新憲法とともに成立した財政の基本法である財政法においては,原則として国債発行を禁止し,例外的な場合として認めているだけである。すなわち財政法4条は,〈公共事業費,出資金及び貸付金の財源については,国会の議決を経た金額の範囲内で,公債を発行しまたは借入金をなすことができる〉こととしている。…
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