出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
俵編み台を使い、藁(わら)の小束を細縄で編んでつくったもので、米俵、種籾(たねもみ)俵、塩俵、海産物の俵(俵物)、炭俵、灰俵などがある。おもに運搬のための容器として使われ、物資流通上の役割は大きかったが、貯蔵、保存にも用いられた。米俵がもっとも一般的で、これはすでに『延喜式(えんぎしき)』(927)には「凡公私運米、五斗為俵、仍用三俵為駄、自余雑物、亦准之。其遠路国者、斟量減之」(凡(およそ)公私の運米(うんまい)五斗を俵と為す、よって三俵をもって駄(だ)と為す、自余(じよ)の雑物またこれに准ず。其(それ)遠路の国は斟量(しんりょう)これを減ず)とあり、容量も定められていたようである。当時の俵は、絵巻『信貴山(しぎさん)縁起』(平安時代後期)では、両端の口の結束が不明確だが、本体部は最近まで使われていた米俵と大差なく描かれている。絵巻『粉河寺(こかわでら)縁起』(鎌倉時代初期)にある俵には桟俵(さんだわら)がみえている。桟俵の出現は俵装の大きな改良であり、これの編み方や当て方はいろいろあった。米俵の容量は、江戸時代には国・領で差違があるが、年貢徴米制度との関係で、おおむね地方ごとに二斗(一斗は約18リットル)から五斗くらいの間で統一されていた。全国的な統一は明治時代末以降の産米改良政策によってであり、米穀取締りの各府県令で一俵が四斗と定められ、これが全国に及んだ。この府県令では俵の仕様まで決めている。麦の場合の一俵は、大麦は五斗、小麦は四斗とする例が多い。また、塩俵、炭俵の容量についても流通経路などによって地方ごとに異同があった。
[小川直之]
『農商務省編・刊『米作ニ関スル府縣令 1904年』(農業発達史調査会編『日本農業発達史4』改訂版・所収・1978・中央公論社)』
わらで編んだ貯蔵,運搬用の袋で穀物のほか,芋,塩,木炭,水産物などを入れるのに用いた。俵は農閑期や夜なべ仕事に作られたが,近年では紙袋などに替えられ見かけることも少なくなった。俵のなかでも,米俵が発達し,近世には収穫1石に対する年貢によって俵の大きさが定まっており,4斗入りや4斗5升入りの俵が多く用いられた。また,この米俵をかつぐことが一人前の基準ともなり,力石のなかには俵石と称するものもある。米俵は長い間,富の象徴とされ,小正月には予祝のために米俵を模した飾物が作られたほか,子供たちや福俵とよばれる芸人が各戸を訪れて富や幸福が舞い込むようにめでたい歌をうたいながら小型の俵をころがし祝福してまわった。奈良では,正月3日に俵迎えといって吉野方面から売りにきた福神を刷った神札を買って祝う風もあった。正月言葉では寝ることを俵を積むといい,沖言葉では牛を俵子という。このほか,俵松といって年神の松を米俵にさして祝ったり,餅花をさす所もみられた。奥能登のアエノコト(田の神迎えの行事)では,種俵が田の神の神体とみられ,供物を供えてまつられた。
→桟俵(さんだわら)
執筆者:飯島 吉晴
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