(読み)サイ

デジタル大辞泉 「催」の意味・読み・例文・類語

さい【催】[漢字項目]

常用漢字] [音]サイ(漢) [訓]もよおす
うながす。せきたてる。「催告催促
そのような気分に誘う。「催眠催涙
会を設ける。「開催共催主催
[名のり]とき
難読雨催あめもよ催馬楽さいばら催合もや

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「催」の意味・読み・例文・類語

もよおしもよほし【催】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「もよおす(催)」の連用形の名詞化 )
  2. 他をうながすこと。すすめること。さそうこと。催促。勧誘
    1. [初出の実例]「おほくは、殿の御もよほしにてなん、まうできつる」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  3. 神仏などが、冥々のうちに取りはからうこと。衆生に、そうなるようにしむけること。
    1. [初出の実例]「さるべき仏神の御もよをしにや、東三条殿、猶いかで今日明日もこの女君参らせんなどおぼし立つと」(出典:栄花物語(1028‐92頃)花山たづぬる中納言)
  4. うながして、物事を起こらせようとするもの。物事をさそい出す原因となるもの。誘因。もよおしぐさ。
    1. [初出の実例]「それにつけて、物思ひのもよほしになむ、齢の末に、思ひ給へ嘆き侍るめる」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
  5. 何かにうながされて、ある現象が起こること。また、きざすこと。
    1. [初出の実例]「春宮、などの御心のもよをしにかおはしますらん、かくて限なき御身を何ともおぼされず」(出典:栄花物語(1028‐92頃)ゆふしで)
  6. 物事を行なうための計画や準備。したく。
    1. [初出の実例]「鞍馬寺参詣、自早旦有其催」(出典:元長卿記‐永正二年(1505)一月四日)
  7. ふれをまわしたりして人々を呼び集めること。召集。また、そのふれ自体やふれをまわす役目の人を指すこともある。
    1. [初出の実例]「下官依催不参」(出典:玉葉和歌集‐嘉応二年(1170)一二月一七日)
    2. 「重たる催に随て行はるべきなりと、おほせくだしければ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一二)
  8. キリシタン文学で、熱意熱情をいう。
    1. [初出の実例]「ヲウキナル moyouoxi(モヨヲシ) ト、フカキ ゴタイセツ ヲ モッテ ヲン ヲシエ ヲ ダンジ タマウ ナリ」(出典:サントスの御作業の内抜書(1591)一)
  9. 人を集めて、会合興行などをすること。また、その集まり。
    1. [初出の実例]「それも催しで出たのならいいけれども、ちょひとそこで百我さんにあうと、今から行かふじゃアねヱかといふから」(出典:洒落本・後編にほひ袋(1802)二)

もよいもよひ【催】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 準備をすること。用意を整えること。多く、名詞の下に付けて用いる。「いくさもよい」「船もよい」「旅もよい」など。
    1. [初出の実例]「とかくのもよひなく、足を踏み止むまじきなり」(出典:徒然草(1331頃)一五五)
  3. 名詞の下に付けて、その物事のきざしが見えること、今にもそのことが起こりそうであるさまを表わす。「雪もよい」「雨もよい」「花もよい」など。

催の補助注記

の「徒然草」の例は、躊躇(ちゅうちょ)、ためらいの意とする説もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「催」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 13画

[字音] サイ
[字訓] もよおす・うながす

[説文解字]

[字形] 形声
声符は崔(さい)。〔説文〕八上に「相ひ擣(う)つなり」とあり、強く催責することをいう。〔詩、風、北門〕「室人交(こもごも)(あまね)く我を摧(せ)む」の摧(さい)と同義。〔韓詩〕にその字を(さい)に作る。崔は隹(とり)の形に従い、もと鳥占(とりうら)の古俗を背景とする字で、ものを督責するときに行われたものであろう。

[訓義]
1. もよおす、うながす、せまる、せめる。
2. ことをはじめる、きざす、おこす。
3. 摧と通じ、はばむ、とめる。

[古辞書の訓]
名義抄〕催 モヨホス・ウナガス・ソソクル・ハバム・コフル・ツクル

[語系]
催dzui、・挫tsuaiは声が近く、は斬芻、そのようになぎ倒す行為を挫という。催は摧・などとともに、他に打撃を与えるような呪的行為を意味する語であろう。

[熟語]
催科・催花催快・催喚催帰催駆・催呼催拘・催告催索催愁・催春催妝催粧・催進・催人・催税・催切催銭催租・催促・催替催徴・催提催督・催迫・催・催弁・催眠・催命・催理・催糧
[下接語]
雨催・開催・寒催・共催・鼓催・主催・勅催・風催・漏催

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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