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処分権主義(読み)しょぶんけんしゅぎ(英語表記)Dispositionsmaxime

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

処分権主義
しょぶんけんしゅぎ
Dispositionsmaxime

民事訴訟法上,訴訟の開始,審判の対象の範囲,訴訟の終結についての権能当事者にゆだねる原則。訴訟資料の収集に関する弁論主義とともに,近代法の基本原理である私的自治の原則の訴訟法への反映の結果である。処分権主義が採用されていることの結果として,当事者はその意思に基づいて訴訟を開始し (訴えの提起) ,またはこれを撤回し (訴えの取下げ) ,審判の対象を特定し,訴訟を終了させることができる (請求の放棄,認諾,裁判上の和解) 。

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デジタル大辞泉の解説

しょぶんけん‐しゅぎ【処分権主義】

民事訴訟において、当事者が自ら訴訟の解決を図り、訴訟を処分することができるとする主義。例えば、訴えの取り下げ、裁判上の和解などができること。

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百科事典マイペディアの解説

処分権主義【しょぶんけんしゅぎ】

民事訴訟法上,当事者が自ら訴訟の解決を図り訴訟を処分し得ること。たとえば訴えの取下げ,裁判上の和解,請求の放棄等ができることを認める。広義の弁論主義の内容をなす。また,訴訟は当事者の申立てにより開始し,裁判所は申立ての範囲を越えて裁判できないこと(当事者主義)も含めるのが普通。民法上の〈私的自治の原則〉が投影したもの。なお,刑事訴訟法上も同意義であるが,例外的に認められるにすぎない。
→関連項目民事訴訟

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世界大百科事典 第2版の解説

しょぶんけんしゅぎ【処分権主義】

訴訟はどういう場合に始まり,どのような限度で裁判し,いつまで続けるかを,当事者にまかせる主義をいう。すなわち訴えがなければ裁判は開始しないし(不告不理の原則),裁判所は当事者が申し立てた事項,たとえば貸金の元本だけの返還を求められたのであればそれに拘束され,利息の支払まで認めることはできない(民事訴訟法246条)。また原告が訴えを取り下げたり,請求を放棄したり,被告が原告の請求を認めたり(認諾),当事者双方が話合いで解決したり(訴訟上の和解)することも自由である(261~267条)。

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大辞林 第三版の解説

しょぶんけんしゅぎ【処分権主義】

民事訴訟法上、訴訟について当事者自身による処分や解決を認める主義。処分主義。 → 当事者主義

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

処分権主義
しょぶんけんしゅぎ

訴訟の開始、審判の対象の特定、訴訟の終了等につき当事者の主導権を認めてその処分にゆだねる主義。当事者処分権主義ともいう。民事訴訟では、私的自治の原則からこの主義がたてまえとされ、訴えがなければ裁判をすることができず、訴えの取下げがあると訴訟は終了し、当事者が申し立てた事項の範囲内でのみ裁判をすることができるとされる。刑事訴訟でも、公訴の提起がなければ裁判は始まらないし(弾劾主義)、検察官については、起訴便宜主義(検察官の裁量による起訴猶予を認める原則。刑事訴訟法248条)、公訴取消し制度(同法257条)そして訴因制度(同法256条3項)により処分権主義が認められていることは明らかである。これに対して、被告人の処分権について、訴訟物の処分権を認める典型例は、アメリカ法のアレインメント制度arraignmentであり、被告人が有罪の答弁plea of guiltyをすると、罪責認定手続が省略されて、ただちに量刑手続が開始される。日本の刑事訴訟法は、明文で、有罪の自認があっても有罪とはされないと規定したので(同法319条2項・3項)、法律上アレインメント制度が否定されていることもまた明らかである。立法論としてのアレインメント制度の採否については、賛否両論がある。
 刑事訴訟における訴訟手続に関しては職権主義によることが原則であるが、当事者の処分権主義が認められる場面も多い。たとえば、簡易公判手続(同法291条の2)は、被告人が冒頭手続において有罪である旨の陳述をした場合に、簡易な公判を行う制度であるが、被告人が簡易迅速な事件処理を選択して、正式裁判を放棄する処分行為を行ったことを前提としている。また、即決裁判手続(同法350条の2第1項)も、公訴提起前に被疑者の同意を確認することとなっているが、これも簡易迅速な公判を選択して正式公判を放棄する被疑者の処分行為を前提とし、さらに、略式手続(同法461条)は検察官が略式命令を請求するに際して、被疑者の異議の有無を確かめることとなっており、この場合の異議なしの意思表示も公判手続を放棄する処分行為とみることができる。また、証拠への同意制度(同法326条)も、証拠能力に対する当事者の処分権を認めたものといえよう。[田口守一]

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世界大百科事典内の処分権主義の言及

【訴え】より

…これも,私的自治の原則の反映と考えられる。以上を,講学上,処分権主義と称する。判決の資料面の規律である弁論主義と広義では混用されるが,別の概念と理解するのが妥当である。…

【職権主義】より

…裏返していえば,そのぶんだけ当事者主義的な訴訟構造が導入されたといいうる。(2)民事訴訟の場合 民事訴訟では,原則としてそこで解決が求められている紛争が私人間の自主的な解決にゆだねられていること(私的自治の原則)から,訴訟手続の開始,終了および訴訟対象の決定につき当事者が主導権をもっており(処分権主義),また訴訟資料の収集についても当事者の責任とされている(弁論主義)が,訴訟進行の面についてはそれが国家制度の運営であるという観点から職権で行われている。なお,この一般の民事訴訟においても,公益に関する事項(裁判権,専属管轄,除斥原因など)については当事者の主張なり申立てをまたずに職権でとりあげて判断すること(職権調査)が必要とされている。…

【訴訟当事者】より

… 当事者たることに伴う効果は,双方において平等である(当事者平等の原則)。処分権主義および弁論主義(訴訟資料の収集責任を当事者が負う立法主義)が原則である訴訟においては,当事者は,訴訟を終了せしめる各種の行為(訴えの取下げとその同意等)をなす権限を有し,かつ訴訟資料を提出しまたは提出しない自由,相手方の提出した訴訟資料を争いまたは争わない自由を有する。他方当事者は,訴訟追行の結果たる判決の効力を受け,敗訴の場合訴訟費用を負担する(民事訴訟法61条)。…

【当事者主義】より


[民事訴訟]
 民事訴訟は個人間の利害の調整,紛争の解決を目的とするので,そこでは当事者主義を基調にし,当事者にイニシアティブをとらせたほうがつごうがよいと考えられている。この当事者主義は,処分権主義,弁論主義,当事者進行主義に分けて説明される。(1)処分権主義とは,手続の開始,裁判の範囲の設定および手続の終了について,当事者に主導権(処分権)を認めるものである。…

※「処分権主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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