破産財団等に属する特定の財産に対して権利を行使し、売上金等から、破産債権者等に優先して、個別的に債権の弁済を受ける権利。破産手続によらないで破産管財人が担保権実行手続により行使する。担保権がこれにあたるが、もともと担保権は特定の財産から優先的に満足を受けることのできる権利であるから、破産法等によりとくに認められた権利ではなく、担保権の破産手続等における作用の表れにすぎない、といわれる。民事再生法においても、これを認める規定がある。別除権には、以下のものがある。
(1)破産財団等に属する財産のうえに存する特別の先取特権(さきどりとっけん)、質権または抵当権(破産法2条9項、民事再生法53条)。一般の先取特権は、別除権ではなく、優先的破産債権である(破産法98条1項)。
(2)商事留置権(破産法66条1項)
別除権者は、破産手続等によらないで、担保権の通常の実行方法によって、その権利を行使する(破産法65条1項、民事再生法53条2項)。
別除権者は、別除権の行使によって弁済を受けることができない債権の額について、破産債権者としてその権利を行使できる(不足額責任主義。破産法108条1項、民事再生法53条2項)。
担保権は、債務者が経済的に窮境に陥り、あるいは破綻(はたん)した場合に、被担保債権の確実な回収を目的とするのであるから、債務者が経済的窮境・破綻に至ったときにこそ、その内容通りの実行が期待される。担保権の実行は、担保権実行手続(民事執行法180条以下)によるのであるが、この法定手続によるよりも、任意売却による方が高額に売れるであろう場合には、破産管財人は、裁判所に、任意の売却により得られた金銭を裁判所に納付し担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる(破産法186条1項)。
再建型倒産処理手続においては、担保の目的財産が、事業の再建のために不可欠であるとき、相当の金銭の支払いをすることによって、担保権を消滅させることができる。
担保権の目的財産が、再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、再生債務者は、裁判所に対し、当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産上のすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる(民事再生法148条)。
更生会社の事業の再生のために必要な場合は、裁判所は、管財人の申立てにより、担保権の目的財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して担保権を消滅させることを許可する旨の決定をすることができる(会社更生法104条1項)。
[本間義信]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…破産債権は,破産手続によってのみ行使することができる(16条)。ただし,〈特別の先取特権〉,質権,抵当権を有する者は,別除権(92~97条)を有するので,破産財団から優先的に弁済を受けられる。破産債権者が,同時に,破産者に対して債務を負担する場合には,相殺権(98~104条)を行使することができる。…
※「別除権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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