剣山地(読み)ツルギサンチ

デジタル大辞泉 「剣山地」の意味・読み・例文・類語

つるぎ‐さんち【剣山地】

徳島県中央部に広がる山地。四国山地の東部を占め、東西に約60キロメートル連なる。最高峰剣山。主に秩父ちちぶ古生層からなる石灰岩山地。北部の鮎喰あくい祖谷いや川・貞光川穴吹川、南部の勝浦川那賀なかなどの水源地。北斜面は畑作、南斜面は林業が中心。剣山国定公園に含まれる。

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日本歴史地名大系 「剣山地」の解説

剣山地
つるぎさんち

愛媛県石鎚いしづち(一九八二メートル)に次ぐ四国第二の主峰である剣山(一九五四・七メートル)を中心に、四国山地の東部を形成する山地。三好みよし東祖谷山ひがしいややま村と高知県境の京柱きようばしら(一一五七・八メートル)から主峰剣山を経て徳島市南部の中津峰なかつみね(七七三メートル)に至るまで、御荷鉾構造線と仏像構造線とに挟まれた南北幅一五―二五キロ、延長約六〇キロの範囲に及び、徳島県の中央部をほぼ東西に走る。剣山を最高峰として剣山地には標高一五〇〇メートルを超える山岳約二〇座が含まれる。三嶺みうね(一八九三・四メートル)・剣山・高城たかぎ(一六二七・九メートル)中津峰山と連続する主脈に加え、こう(一七四〇・八メートル)から中東なかひがし(一六八四・六メートル)石立いしだて(一七〇七・七メートル)へとほぼ北から南へ延びる高知県境の石立山系、ジロウギュウ(一九二九メートル)から折宇谷おりうだに(一六五二・九メートル)平家平へいけだいら(一六〇三・五メートル)へと西から東へ分岐する那賀なか山系、雲早くもそう(「くもさやま」ともよぶ。一四九五・九メートル)から南東高丸たかまる(一四三八・六メートル)へと延びる勝浦かつうら山系などの分脈をもち、地質はいずれも秩父古生層からなる。このほか粘土層を包含する御荷鉾帯に属し、剣山の北側に東西に並ぶとうまる(一七一三メートル)丸笹まるささ(一七一一・六メートル)赤帽子あかぼうし(一六一一・四メートル)の高峰も剣山地に含まれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「剣山地」の意味・わかりやすい解説

剣山地 (つるぎさんち)

剣山山系とも称する。石鎚山系とともに四国山地の骨格をなす山嶺で,石鎚山系と並行して四国の中央部を東西に走る。この山系の北境は御荷鉾(みかぶ)構造線,南境は仏像-糸川構造線で,両構造線で境される秩父帯が山体をつくり,おもに古生層からなるが,中生代の地層も断続的に分布している。主峰は徳島県にある剣山(1955m)で,これを中心に丸笹山(1712m),赤帽子山(1611m),丸石(1684m),一ノ森(1880m)などの高峰が連なっている。山頂には平たん面が残存し,早壮年期の地貌を呈する。ミヤコザサが密生する山頂付近は〈平家の馬場〉と呼ばれ,落人伝説を残す。丸笹山に至る鞍部が〈見ノ越〉(1400m)で,大剣神社があり,北側の貞光町(現,つるぎ町)からのドライブウェーや穴吹川沿いの自動車道,および西側からの祖谷(いや)川沿いの自動車道がここで会合する。
執筆者:

剣山はもとは石立(いしだて)山とよばれていたが,頂上にある宝蔵石という巨石の下に安徳天皇の剣を奉納して以来〈つるぎさん〉とよぶようになったという。剣山は7世紀に役行者(えんのぎようじや)が開いたと伝えられるように,古くから修験道の霊山とされ,近年まで女人禁制が守られ,現在も先達に導かれた多くの信者が登拝する信仰の山となっている。剣山はその東西で信仰の趣が異なる。東側は剣山竜光寺が信仰の中心である。この寺は815年(弘仁6)に弘法大師が四国八十八ヵ所霊場を開いた際に総奥の院として建立したと伝えられる。毎年7月中旬の夏季大祭は護摩焚きと神輿の山中練歩きでにぎわう。竜光寺の上には素戔嗚(すさのお)尊と安徳天皇をまつる剣山本宮がある。山の西側は大剣神社と円福寺が信仰の中心で,大剣神社には素戔嗚尊,安徳天皇,大山祇(おおやまつみ)命がまつられ,八合目の奥の院の拝殿ともなっている。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「剣山地」の意味・わかりやすい解説

剣山地
つるぎさんち

徳島県西部から高知県東部にまたがる山地。四国山地の東半を占め,西半の石鎚山脈に対する。主峰剣山 (1955m) を中心に,北東から南西に一ノ森 (1879m) ,高ノ瀬 (1741m) ,三嶺 (1894m) などが連なる。山地はおもに秩父古生層に属する石灰岩からなり,北部の一部では御荷鉾変成岩もみられる。多くの河川の水源となり深い谷を刻む。山腹の各所に山村が点在する。特に祖谷祖谷川浸食谷によって隔絶され,秘境として知られた。南麓は中部山渓県立自然公園大歩危・小歩危祖谷渓とともに剣山国定公園の中心。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「剣山地」の意味・わかりやすい解説

剣山地
つるぎさんち

四国山地の東部を占める山地。主として秩父中・古生層からなる。最高峰の剣山(1955メートル)を中心に、塔丸(とうのまる)、天神丸などの山々が東西に連なる。徳島県の主分水嶺(ぶんすいれい)をなし、北部の祖谷(いや)川、貞光(さだみつ)川、穴吹(あなぶき)川、南部の勝浦川、那賀(なか)川などの水源となっている。北斜面は谷が深く、畑作中心である。阿波(あわ)山岳武士の拠点であり隠田(おんでん)集落もみられた。南斜面は降水量が多く、林業依存度が高い。

[高木秀樹]


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百科事典マイペディア 「剣山地」の意味・わかりやすい解説

剣山地【つるぎさんち】

徳島県西部から高知県へかけてほぼ東西に走る山地。秩父古生層の石灰岩を主体として,四国第2の高峰剣山を主峰に,三嶺(みうね)(1894m),天神丸(1632m),高城山(1628m)などが連なる。山地北斜面ではタバコを栽培,南斜面は森林資源が豊富。剣山国定公園に属する。
→関連項目徳島[県]

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世界大百科事典(旧版)内の剣山地の言及

【四国山地】より

…四国の中央部をほぼ東西に走る山地。一般には中央構造線以南の外帯山地をさし,石鎚(いしづち)山脈,剣(つるぎ)山地を脊梁とし,標高1000mをこえる山地が大部分を占めている。東端は紀伊水道,西端は豊後水道に臨み,それぞれリアス海岸を形成している。…

※「剣山地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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