化生(読み)けしょう

精選版 日本国語大辞典 「化生」の意味・読み・例文・類語

け‐しょう ‥シャウ【化生】

〘名〙
仏語。四生の一つ。母胎卵殻によらないで、忽然として生まれること。また、そのもの。天界や地獄などの衆生の類。
※霊異記(810‐824)下「其の柴の枝の皮の上に、忽然に彌勒菩薩の像を化生す」
浄瑠璃・釈迦如来誕生会(1714)一「湿生化生(ケシャウ)はいさ知らず体を受けて生るる者、人間も畜生出世のかどは只一つ」 〔倶舎論‐八〕
② 仏語。形をかえてあらわれること。化身
今昔(1120頃か)一一「義渕僧正と云ふ人在(まし)ましけり、俗姓は阿刀の、是、化生(くゑしゃう)の人也」
極楽浄土に往生する人の生まれ方の一つ。
※往生要集(984‐985)大文七「後時命終。悉生東方。宝威徳上王仏国。大蓮華中。結跏趺坐。忽然化生」 〔無量寿経‐下〕
④ ばけること。また、そのもの。化生のもの。へんげ。妖怪
幸若・つるき讚談(室町末‐近世初)「まうふさが打ったる太刀もけしゃうのかねゐにて有間
※浄瑠璃・嫗山姥(1712頃)四「心にかかる事はなし母はもとよりけしゃうの身」

か‐せい クヮ‥【化生】

〘名〙
① (━する) 新しいものが生まれ出ること。
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「其有害の動物は、害をなす状(ありさま)と、其因て化生し、潜居する所以より」 〔易経‐咸〕
七夕の日に、女性が子を得るまじないとして水に浮かべる蝋作りの人形。西域から中国に伝わった風俗という。
※玩鴎先生詠物百首(1783)泛偶「水面無風帆自前、徒弄化生求子戯」 〔薛能‐呉姫十首〕

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デジタル大辞泉 「化生」の意味・読み・例文・類語

け‐しょう〔‐シヤウ〕【化生】

[名](スル)
仏語。四生ししょうの一。母胎や卵などからでなくて、忽然こつぜんとして生まれるもの。天界や地獄、中有の衆生の類。
仏・菩薩ぼさつが人々を救うために、人間の姿を借りてこの世に現れること。化身。
化けること。化け物。妖怪。「化生の身」

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改訂新版 世界大百科事典 「化生」の意味・わかりやすい解説

化生 (かせい)
metaplasia

一定の方向に分化・成熟した組織が,その潜有能の幅の中で,他の成熟組織型をとること。刺激に対する組織の適応現象の一つで,刺激によって変性に陥った細胞が,組織修復の再生の際に,本来の分化の方向ではなくて,別の分化の方向にかわることをいう。通常はより安定した分化型にかわる。腺上皮からなる気道上皮が,タバコの煙の刺激をうけて重層扁平上皮にかわったり,肺繊維症のときに肺胞の扁平な上皮が立方上皮にかわったり(腺様化生),慢性胃炎のため固有胃粘膜上皮が小腸上皮にかわったりする(腸上皮化生)。上皮の化生は可逆的のものが多く,原因がなくなれば元来の上皮型にもどる。しかし,胃の腸上皮化生は不可逆的変化である。また化生は,同一胚葉組織の中でかわるだけで,上皮と結合組織の間には化生現象はおこらない。結合組織で,瘢痕(はんこん)性の繊維組織に,骨や軟骨が生じたりすることも結合組織の化生である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「化生」の意味・わかりやすい解説

化生
かせい
metaplasia

いったん分化した組織が,他の性状を示す組織に変ることをいう。再生の過程で本来の組織と違った方向に分化する,間接化生が多い。たとえば,慢性胃炎の際に胃の上皮が腸の上皮に変ったり,腸炎の際に腸の上皮が胃の上皮に変ったりする。呼吸器,子宮,胆嚢でも,円柱上皮でおおわれている粘膜が,慢性の炎症で扁平上皮に変ることがある。なお,乗馬者の骨と呼ばれる組織変化があるが,これは,強い機械的刺激を受けた股部の筋肉が変性し,骨組織に変った病変で,これも化生に属する。

化生
けしょう

四生」のページをご覧ください。

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普及版 字通 「化生」の読み・字形・画数・意味

【化生】けしよう

へんげ。

字通「化」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の化生の言及

【目∥眼】より

…眼球から網膜を取り除くと,色素上皮が増殖し網膜を形成する。このように水晶体や網膜はまったく異なった組織から再生してくるため,通常の再生現象と区別し化生metaplasiaと呼んでいる。虹彩からの水晶体再生は発生初期のニワトリ胚でも起こることが確認されているが,哺乳類では水晶体の再生は起こらない。…

※「化生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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