改訂新版 世界大百科事典 「升(桝)形」の意味・わかりやすい解説
升(桝)形 (ますがた)
城郭への出入口である虎口(こぐち)の最も発達した形態で,方形空間を囲んで築かれた箱形の石垣でつくられる。升形を虎口の内側に設けるのを内升形といい,これが通常の形式で,外側に設ける外升形は数が少ない。升形に二つの門を開き,外に面した一の門を2本の角柱で妻破風造の屋根を支える高麗門(多門)形式とし,より重要で堅固に造られる内側の二の門は,渡り櫓に入母屋造の屋根を載せる櫓門形式で造られるのが通常である。そしてこの二つの門は,必ず直角に配される。この構造により,戦闘に際して侵入した敵の直進を妨げ,升形の周囲,櫓門からこれを攻撃することができる。また升形内に城兵を待機させて,敵の攻撃を避け,一気に出撃することができる。一方,門が二つあることにより,城兵が入門する際,二の門を閉じたまま一の門を開いて升形内に城兵を入れ,一の門を閉じたのち二の門を開いて郭内へ入れる方法がとられた。つまり升形内で不審者を点検し,隊列を整え,さらに二つの門を同時に開かぬことによって敵の侵入の危険を少なくしたものである。このほか,近世の宿場においても,出入口にあたる街道の部分を鉤(かぎ)の手に曲げ,場合によっては土塁や木戸門を築いて,通行を規制するために設けられた升形もあった。
→見附
執筆者:玉井 哲雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報