土岐善麿(読み)トキゼンマロ

デジタル大辞泉 「土岐善麿」の意味・読み・例文・類語

とき‐ぜんまろ【土岐善麿】

[1885~1980]歌人・国文学者。東京の生まれ。別号、哀果。3行書きのローマ字歌集NAKIWARAI」で注目された。また、ローマ字運動家としても知られる。著「田安宗武」など。

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精選版 日本国語大辞典 「土岐善麿」の意味・読み・例文・類語

とき‐ぜんまろ【土岐善麿】

  1. 歌人、国文学者。号は哀果。東京出身。金子薫園門下。早稲田大学卒業後、読売新聞を経て東京朝日新聞の記者。雑誌「生活と芸術」を主宰。国語審議会会長、日比谷図書館館長などを歴任。三行書きの歌は石川啄木に影響を与えた。著に歌集「NAKIWARAI」「黄昏に」、評論「田安宗武」「京極為兼」など。明治一八~昭和五五年(一八八五‐一九八〇

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土岐善麿」の意味・わかりやすい解説

土岐善麿
ときぜんまろ
(1885―1980)

歌人、国文学者。明治18年6月8日、東京・浅草松清町の真宗大谷(おおたに)派等光寺に生まれる。別号湖友、哀果(あいか)。早稲田(わせだ)大学英文科卒業。新聞記者を経て、早大などに教鞭(きょうべん)をとり、のち武蔵野(むさしの)女子大学(現武蔵野大学)教授。1905年(明治38)金子薫園(くんえん)の「白菊会」に入る。窪田空穂(くぼたうつぼ)の『まひる野』に感銘、10年、ローマ字三行書きによる歌集『NAKIWARAI』を出版。内面の心情につきながら、覚めた意識の作を開拓。翌年石川啄木(たくぼく)と交流、雑誌「樹木と果実」を計画したが果たさなかった。社会主義的思想に近接し、『黄昏(たそがれ)に』(1912)の三行書き歌集は、都会勤労者、知識人の知的哀歓を歌って、歌風は確立する。1913年(大正2)『生活と芸術』創刊。社会意識に目覚めた、いわゆる生活派の源流となったが、16年廃刊。このころから一行書き表記となる。24年『日光』創刊に参加、昭和初期には一時、口語自由律の作を試み、『新歌集作品Ⅰ』などがある。『六月』(1940)は、戦争に突入する暗い時代の知識人の良心を歌った集。戦後は『歴史の中の生活者』(1958)で、倭建(やまとたける)など古代の人物を壮大な叙事詩的叙情として歌うなど、短歌の叙情や韻律の革新への意欲は生涯に及ぶ。『田安宗武(たやすむねたけ)』『京極為兼(きょうごくためかね)』など古典研究、新作能詞章、中国詩の和訳と研究、歌論など多く、歌集は40冊近い。文学博士。国語審議会会長も務めた。昭和55年4月15日没。

武川忠一

 りんてん機、今こそ響け。/うれしくも、/東京版に、雪のふりいづ。

『『土岐善麿歌集』(1971・光風社)』『冷水茂太著『土岐善麿考――その哀果時代』(1985・青山館)』『武川忠一著『土岐善麿』(1980・桜楓社)』

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20世紀日本人名事典 「土岐善麿」の解説

土岐 善麿
トキ ゼンマロ

明治〜昭和期の歌人,国文学者



生年
明治18(1885)年6月8日

没年
昭和55(1980)年4月15日

出生地
東京市浅草区松清町(現・東京都台東区)

別名
号=土岐 哀果(トキ アイカ)

学歴〔年〕
早稲田大学英文科〔明治41年〕卒

学位〔年〕
文学博士〔昭和23年〕

主な受賞名〔年〕
日本学士院賞〔昭和22年〕「田安宗武」(全4巻)

経歴
明治41年読売新聞入社。社会部記者、社会部長を歴任後、大正7年朝日新聞に移り、15年論説委員で定年退職。また歌人として知られ、明治34年に哀果の号で出した処女歌集「NAKIWARAI」(泣き笑い)はローマ字3行わかち書きの新体裁と社会性の濃い内容で当時の歌壇、とくに石川啄木に衝撃を与え社会派短歌の先駆的役割を果たした。戦後の歌集に「夏草」「遠隣集」「歴史の中の生活者」などがある。22年、戦中の研究の成果である。「田安宗武」全4巻で学士院賞を受賞。また国語審議会会長を5期11年間(24年〜36年)つとめたほか、ローマ字運動本部委員長、エスペランチスト、能作詞家、杜甫研究家としても活躍した。

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改訂新版 世界大百科事典 「土岐善麿」の意味・わかりやすい解説

土岐善麿 (ときぜんまろ)
生没年:1885-1980(明治18-昭和55)

歌人。号は哀果など。東京生れ。早稲田大学英文科卒業後,読売新聞社を経て1918-40年東京朝日新聞社に勤め,普通の社会生活を重んずる一方で,短歌を中心とした文学活動を生涯を通じて継続した。1910年の第1歌集《NAKIWARAI》に,社会的関心を潜めた日常生活の哀感をローマ字3行書きで歌って歌壇の注目を集め,わけても石川啄木に影響を与えた。13年には啄木の遺志をつぐ目的で文芸思想誌《生活と芸術》を創刊し,生活派歌人の育成に努めた(1916廃刊)。また,その間大杉栄荒畑寒村ら社会主義者と友好をもち,明治の社会主義文学から大正の労働文学への橋渡しをも行った。他にローマ字の普及,国語表記の改革,日本および中国古典の研究,能楽の新作の創出など関心の幅は広く,《田安宗武》ほか膨大な著書がある。〈指をもて遠く辿れば,水いろの/ヴオルガの河の/なつかしきかな。〉(《黄昏に》)。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「土岐善麿」の意味・わかりやすい解説

土岐善麿【ときぜんまろ】

歌人。号は哀果。東京生れ。早大英文科卒。1910年ローマ字3行書きの歌集《NAKIWARAI》を出し,石川啄木とともに生活派歌人として注目された。啄木と親交を深め,啄木死後,その遺志をつぐ形で文芸思想史《生活と芸術》を創刊主宰,大杉栄荒畑寒村らと交わった。一時自由律風の新短歌も作ったが,のち定型に復した。《黄昏に》《街上不平》など多くの歌集,歌書のほか《田安宗武》《新釈杜甫詩選》等の研究書もある。
→関連項目綾鼓喜多実近代思想

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土岐善麿」の意味・わかりやすい解説

土岐善麿
ときぜんまろ

[生]1885.6.8. 東京
[没]1980.4.15. 東京
歌人,国文学者。号,湖友,哀果。 1908年早稲田大学英文科卒業。読売新聞社入社,18年まで社会部に勤めた。僧侶で連歌の宗匠であった父の教えを受け,幼時から作歌し,金子薫園に師事。 10年ローマ字3行書きの歌集『NAKIWARAI』を刊行。続く『黄昏に』 (1912) ,『佇みて』 (13) ,『街上不平』 (15) をいずれも3行書きで発表。親友石川啄木の死後,文芸思想誌『生活と芸術』 (13~16) を主宰して,その生活派運動を推進し,大胆な口語破調を試みた。国語審議会会長,日比谷図書館館長,ユネスコ国内委員をつとめ,65年武蔵野女子大学教授。ローマ字運動,エスペラント運動推進者として知られ,中国との復交,文化交流にも努めた。 55年芸術院会員。田安宗武,京極為兼,杜甫の研究や,能の新作,歌集など多くの著がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「土岐善麿」の解説

土岐善麿 とき-ぜんまろ

1885-1980 明治-昭和時代の歌人。
明治18年6月8日生まれ。土岐善静の次男。読売新聞,朝日新聞に勤務。明治43年ローマ字による3行書きの歌集「NAKIWARAI」を刊行。石川啄木と親交をむすび,「黄昏(たそがれ)に」を発表。大正2年「生活と芸術」を創刊,主宰。昭和22年「田安宗武」で学士院賞。国語審議会会長。昭和55年4月15日死去。94歳。東京出身。早大卒。号は哀果。
【格言など】わがために一基の碑をも建つるなかれ 歌は集中にあり 人は地上にあり(自身の会葬御礼に記した歌)

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367日誕生日大事典 「土岐善麿」の解説

土岐 善麿 (とき ぜんまろ)

生年月日:1885年6月8日
明治時代-昭和時代の歌人;国文学者。国語審議会会長
1980年没

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世界大百科事典(旧版)内の土岐善麿の言及

【駅伝競走】より

…1917年,遷都50年記念として京都三条大橋から東京・上野不忍池間508kmを23区間に分け,4月27日から3日間で走った東西対抗の〈東海道駅伝徒歩競走〉がその始まり。〈駅伝〉の名は,同大会主催者読売新聞社の土岐善麿社会部長が東海道五十三次にちなんでつけたといわれている。単に大勢が道路を走るクロスカントリーやマラソンは外国でも盛んだが,たすきを手渡して区間ごとにリレーしていくレースは日本特有のもので,トラック・シーズンが終わる11月から3月にかけて,日本各地で行われる。…

【喜多流】より

…現行曲は,明治初期までの196曲の伝承曲に加除があり,復曲・新作曲を加えた170曲。とくに喜多実が土岐善麿の協力によって意欲的に進めた新作活動は他流にない特色である。また,後から生まれた流儀だけに,諸流の長所を摂取した点があり,謡は金春(こんぱる)流の雄大さに強さを加え,剛健で武張っており,型は金春と金剛流を融合したところが見られる。…

※「土岐善麿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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