地殻熱流量(読み)チカクネツリュウリョウ(その他表記)terrestrial heat flow

デジタル大辞泉 「地殻熱流量」の意味・読み・例文・類語

ちかく‐ねつりゅうりょう〔‐ネツリウリヤウ〕【地殻熱流量】

地球内部から地表へ流れ出る熱量地温勾配とそこの岩石熱伝導率との積で求められ、平均値は1平方メートル当たり約69ミリワット。熱流量

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精選版 日本国語大辞典 「地殻熱流量」の意味・読み・例文・類語

ちかく‐ねつりゅうりょう‥ネツリウリャウ【地殻熱流量】

  1. 〘 名詞 〙 地球内部から地表へ向かって流れてくる熱量。地温勾配とその場の岩石などの熱伝導率の積で求める。全地球の平均値は一平方センチメートル当たり毎秒約一・九マイクロカロリー。海嶺火山帯で多く、海溝で少ない。単に熱流量ともいう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地殻熱流量」の意味・わかりやすい解説

地殻熱流量
ちかくねつりゅうりょう
terrestrial heat flow

地球内部から地表に向かって放出される熱量のこと。単に熱流量ともいう。溶岩の流出など物質の移動によるものではなく、熱伝導による熱の流れをさし、地温勾配(こうばい)とその場の岩石などの熱伝導率の積で求められる。陸上における地温勾配の測定は、地表付近の温度の乱れを避けるために、深井戸などを使った大掛りなものとなる。これに対して、深海底では水温が年間を通じてほとんど一定なので、長さ数メートルの温度計のついた槍(やり)を堆積(たいせき)層に突き刺すことで容易に地温勾配が測定できる。このため、世界的にみると、陸上より深海部での測定のほうが数が多い。地殻熱流量の平均値は、1平方メートル当り1000分の1ワットという単位で70程度であるが、かなり地域差がある。高い熱流量の地域としては中央海嶺(かいれい)が代表的なものであり、日本海などいわゆる縁辺海でも高い熱流量が観測されることが多い。反対に、熱流量の低いのは海溝付近などである。地殻熱流量は、地球熱学におけるもっとも基本的な観測値の一つであり、地球内部の熱的状態やプレートテクトニクスの研究に欠かせないものである。

[吉井敏尅]

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改訂新版 世界大百科事典 「地殻熱流量」の意味・わかりやすい解説

地殻熱流量 (ちかくねつりゅうりょう)
terrestrial heat flow

地球内部から地球外に向かって流出する熱量。よく知られているように地球内部は温度が高い。それは地球創成時に蓄えられた熱,放射性物質による発熱などのためであり,それはたえず地殻を通って地球外に放出されている。地殻内での鉛直方向の温度こう配(地中に入るにしたがって温度の上昇する割合。地温こう配という)と地殻の熱伝導率を実測し,その両方の測定値を掛け合わせると地殻熱流量が求められる。単位は単位時間に単位面積を通過する熱量であって,10⁻6cal/cm2・sが用いられ,熱流量単位HFU)と呼ばれる。全世界で約1万点の実測値があり,陸地での平均値は約1.5HFU,海洋での平均値は熱水作用による放熱量も含めて約2.2HFU,全世界の平均値は約1.9HFUと推定されている。熱流量の単位としては,最近ではSI単位系のmW/m2(1HFU=41.87mW/m2)もよく用いられる。地殻熱流量は,火山帯,海嶺地域などで高く,楯状地とか海嶺から遠い海洋地域などで低い。すなわち,熱流量は新しい地殻をもつ地域で高く,古い地域で低くなっている。熱は各種の地学現象,とくに造山作用などのエネルギー源であると考えられるので,その流出量の分布状態を詳しく調べることは重要である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地殻熱流量」の意味・わかりやすい解説

地殻熱流量
ちかくねつりゅうりょう
terrestrial heat flow

地球内部から地表面へ流れ出る熱の流れのこと。地球が昼間受止めている太陽熱に比べれば桁違いに小さい。熱流量は 10-6cal/cm2・s(10-6cal=1μcal) の単位 (HFU) で表わすことが多いが,最近では 10-6W/cm2 の単位も使われる。日本列島付近では,日本海側と東北日本では 2HFU前後,西南日本では 1.2HFU前後,東北日本の太平洋岸の平均は1~1.2HFUである。一般に海溝の付近ではこの値は小さく,火山地帯や大洋海嶺の部分では熱流量が高い。また,年代の若い海底ほど高い熱流量を示し,年代とともに熱流量は減少する。大陸についても同様の傾向が成り立つ。先カンブリア楯状地では約 1.0HFUで,新生代の地向斜だったところは約 1.5HFUである。地殻熱流量として地球内部から地表に運び出されるエネルギーは,地震活動や火山活動によって解放されるエネルギーより1桁から2桁大きい。地球表面から放出される熱量は大陸,海洋ともほぼ等しいが,玄武岩内の放射性物質の発熱量は花崗岩の5分の1,橄欖岩は花崗岩の 100分の1ぐらいである。このため,大洋底での熱量は玄武岩質の海洋地殻だけに起源を求めることができず,その下のマントルの深い部分の熱がマントル対流で運び出されると考えられている。

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百科事典マイペディア 「地殻熱流量」の意味・わかりやすい解説

地殻熱流量【ちかくねつりゅうりょう】

温度の高い地球内部から地表に向かって流れ出る熱量。単位は単位時間に単位面積を通過する熱量で,4.18×10(-/)6J/cm2・sが用いられ,熱流量単位(HFU)と呼ばれる。地面に穴をあけ,深さが1mほど違う上下2ヵ所の温度差を測り,その間につまっている岩石の熱伝導度を調べ,両者を掛けて算出する。地球上海陸の多くの地点での観測が進み,その結果は海溝や海嶺の成因やプレートテクトニクス等の所説に利用されている。
→関連項目地熱

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知恵蔵 「地殻熱流量」の解説

地殻熱流量

地球内部から熱伝導によって地表へ運ばれる熱量。地温勾配と岩石の熱伝導率の積から求める。1平方メートル当たり数十ミリ?と小さく、測定には地下深い鉱山や、ボーリングでの孔を利用。地表近くでは気温の影響で測定が難しいが、海底では水温が一定なため、数多くの測定例がある。海底の熱流量は海嶺で極めて大きく、海嶺から離れるにつれて急激に減少、海溝ではさらに小さくなる。この変化は、海底拡大に伴う、地下の熱輸送の様子を表す。

(斎藤靖二 神奈川県立生命の星・地球博物館館長 / 2007年)

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