坂東(市)(読み)ばんどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「坂東(市)」の意味・わかりやすい解説

坂東(市)
ばんどう

茨城県南西部に位置する市。2005年(平成17)岩井市、猿島(さしま)郡猿島町が合併して成立。市名は関東地方の古称である板東や利根川の異称坂東太郎(ばんどうたろう)にちなみ、市域は利根川左岸の猿島(さしま)台地低地に展開。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が通じ、板東インターチェンジがある。中心となる岩井市街は、市域を北西南東に貫く国道354号沿いに形成される。主要地方道結城(ゆうき)―野田線などが通じ、利根川対岸の千葉県野田市との間に下総利根大橋と芽吹(めふき)大橋が架かる。北東部に広がる水田地帯はもと飯沼(いいぬま)と称された湿地帯で、享保期(1716~1736)に利根川へ落ちる新堀(現、飯沼川)の開削によって開発され(飯沼新田)、あわせて用排水路の西仁連(にしにれ)川、東仁連川も開削された。第二次世界大戦後の法師戸(ほうしど)大堤防ほかの飯沼改良事業や圃場整備(ほじょうせいび)による排水改善によって現在の姿となった。

 『将門記』にみえる平将門(まさかど)が拠った「石井ノ営所」は岩井、「幸嶋ノ広江」は飯沼といわれる。将門を祀る岩井の国王神社(こくおうじんじゃ)、将門の胴塚がある神田山(かどやま)の延命(えんめい)院など、将門伝説にまつわる地が多い。戦国期には、結城氏の臣、逆井(さかさい)氏の逆井城城跡は県指定史跡)があった。常繁(じょうはん)寺は1536年(天文5)に没した逆井常繁の菩提寺。江戸時代、猿島台地では茶の生産が盛んで、幕末期には「猿島茶」として高名を博し、葉タバコも広く知られた。現在は首都圏近郊整備地帯に指定され、レタス・夏ネギ・冬春トマト・春ハクサイなどを首都圏へ供給。1996年(平成8)環境共生型を掲げる工業団地「つくばハイテクパークいわい」が造成され、企業誘致を進めている。

 生子(おいご)の萬蔵院(まんぞういん)は870年(貞観12)開創と伝え、盛時には四方に八間の大道が通じ門前町をなしたという。飯沼新田開発の際、24か村代表が集まり、神前に完成祈願した香取(かとり)神社の本殿は県指定文化財。八坂神社の祭礼(7月)で奏でられる「猿島ばやし」は県指定無形民俗文化財。11月には国王神社(本殿・拝殿は県指定文化財)を中心に将門まつりが開催され、甲冑姿の武者行列などの時代絵巻が繰り広げられる。菅生(すがお)沼は白鳥の飛来で有名。面積123.03平方キロメートル、人口5万2265(2020)。

[編集部]


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