中国で皇后または皇太后の一族をいう。ことにその父や兄は,娘または妹にあたる皇后や皇太后を介して国政に容喙(ようかい)し,絶大な権勢をふるうとともに,一族郎党がその権勢を背景にして横暴をはたらくことが多い。皇帝が幼少で,皇太后が摂政になったとき,あるいは皇帝が暗愚で,皇后の力が強いとき,そのような現象がおこりやすい。漢の高祖劉邦の死後,呂(りよ)太后が若年の恵帝をさしおいて国政を動かし,呂氏一族とともに天下を奪いとろうとしたことや,唐の高宗の皇后則天武后がついに唐の国家を奪って国号を周と改めたことなどは,外戚による奪というよりも,むしろ皇后ないし皇太后自身による政変というべきだが,もとより外戚による奪の例も存在する。前漢元帝の皇后王氏の一族であった王莽(おうもう)が,漢を奪って新という国を建てた例や,北周宣帝の皇后の父楊堅が,北周を滅ぼして隋王朝を建て,隋の文帝と称されることになった例などがそれである。外戚によって国が滅ぼされる事態にまでは至らなくても,外戚が国政を乱す例は多く,たとえば後漢では,4代目の天子の和帝以後幼弱な皇帝が多かったので,皇太后が次々に摂政になり,そのたびに竇(とう)氏・鄧氏・梁氏などの外戚が国政を掌握した。しかし,皇帝は成長するにつれて,これら外戚の専横に反発し,側近の宦官(かんがん)を結集して外戚を打倒したため,今度は宦官の勢力が強くなり,後漢の宮廷は外戚と宦官の闘争の場になっていった。このような政治的混乱が後漢帝国滅亡の一因にもなったのである。また西晋では,武帝の死後,その皇后楊氏の一族と,武帝のあとをついだ恵帝の皇后賈(か)氏の一族とが覇を争い,賈氏一党が楊氏一党を誅滅して横暴をきわめることになった。賈后および賈氏一党の横暴が八王の乱を誘発する原因になり,それがやがて異民族の華北席巻を許し,西晋王朝の滅亡と漢文明の危機を招来する結果となったのである。
執筆者:川勝 義雄 外戚はまた,ある人物からみて母方および妻方の親族を意味する。日本の古代においては,藤原氏が天皇の外戚として摂政,関白の地位につき,権勢をふるったが,中世において,京都朝廷の公家政権や,鎌倉・室町時代の武家政権が,当時における親族制度の中心とみなし公認していたのは,父方親族(内戚)にほかならなかった。それは,中国から伝来した儒教思想の影響によると考えられる。だが,中世の人々の実際の生活面では,父方親族と母方・妻方親族とが寄り合って相互扶助的な社会関係を営むのが普通であったから,外戚が,人々の政治的・社会的活動に与えた影響も大きかった。鎌倉時代初期の3代の源家将軍が,その外戚北条氏をたのみとし,室町将軍の足利義政が,妻富子の里方日野家と深い関係をもったのはその例である。ただし,外戚が歴史上真に大きな影響力をもったのは,南北朝時代よりも以前のことで,のち儒教思想が社会の隅々にしみわたるにつれ,その影響力はしだいに希薄になっていった。
執筆者:鈴木 国弘
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母系の親族をいうが,その範囲は明確でない。ちなみに,名例律議親条で特権が与えられた天皇の外戚は,外祖父母,オジ・オバとその子である。外戚が最も意味をもった古代では,結婚した男子は妻の生家の支援をうけ,生まれた子は母の家で養育され,成長後は邸宅など財産を継承することも多くみられた。天皇も,有力な外戚が後見でなければ即位を期待できず,逆に天皇の外戚も,高位高官(追贈を含む)にのぼるなどの優遇をうけた。清和天皇の外祖父藤原良房(よしふさ)が最高権力をにぎって以後,藤原氏が天皇の外戚の地位を保持して摂関を歴任した。院政期には,上皇の父権の確立にともない外戚の地位は低下したが,その後も外戚関係を含む姻戚関係は,社会全体に少なからぬ影響を及ぼした。
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皇后の一族をいう。特に幼年の皇帝が即位し,母親の皇太后が代理に実権を握った場合,外戚の一族が高官を占め,中央の権力を動かす。後漢の皇后は有力な家から出たので,第3代の章帝以降外戚の時代に入り,宦官(かんがん)とぶつかりしばしば政争の原因となった。特に和帝の皇后の鄧氏(とうし),順帝の皇后の梁氏(りょうし),霊帝の皇后の竇氏(とうし)は臨朝といって正式に政治をとり行った。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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