岡山県倉敷市にある美術館。1930年(昭和5)同県出身の洋画家児島虎次郎(こじまとらじろう)の画業を記念し、あわせて美術の研究発達を図るため倉敷紡績2代目社長大原孫三郎(まごさぶろう)により創立されたわが国最初の西洋近代美術館。収蔵作品は児島の作品のほか、児島自身が創立者の委嘱を受けてヨーロッパで集めた西洋絵画、エジプト古代美術に加えて、第二次世界大戦後、孫三郎の嗣子(しし)総一郎によって西洋現代美術、日本近代・現代美術が集められた。
本館は創立当初の建物でギリシア神殿風の外観の正面入口の左右にロダンの彫刻2点が置かれている。展示室にはグレコの『受胎告知』をはじめ、モネ、ゴーギャンからカンディンスキーなど、大原コレクションとして広く知られる現代美術の先駆をなす作品が展示されている。分館は藤島武二、岸田劉生(りゅうせい)、安井曽太郎(そうたろう)など、近代日本洋画の代表作が展示されている。古い土蔵を改造した工芸館は浜田庄司(しょうじ)、富本憲吉、河井寛次郎、バーナード・リーチの作品を収めた陶器室と板画の棟方(むなかた)志功室、染色の芹沢銈介(せりざわけいすけ)室が並ぶ。
東洋館は中国を中心にした先史から唐代に至る古美術を展示、旧倉敷紡績工場跡の倉庫を改造した児島虎次郎記念館には虎次郎の絵画と古代エジプト、先史イラン、中世イスラムの美術が展示されている。休館日は毎週月曜日と12月28日から1月1日。
[永井信一]
『『大原美術館美術講座1~5』(1988~1990・用美社)』▽『山陽新聞社編・刊『夢かける――大原美術館の軌跡』(1991)』▽『大原美術館編・刊『大原美術館所蔵品目録1920―1990』(1991)』▽『今村新三著『大原美術館ロマン紀行』(1993・日本文教出版)』▽『大原美術館編・刊『大原美術館の120選』(1994)』▽『藤田慎一郎著『大原美術館』(1999・日本文教出版)』▽『藤田慎一郎著『大原美術館と私――50年のパサージュ』(2000・山陽新聞社)』
岡山県倉敷市にある美術館。日本で最初の西洋美術を展示する美術館として,1930年に実業家大原孫三郎が創設。世界的な視野で収集された展示品は,海外でもつとに知られている。実際にヨーロッパで収集にあたったのは洋画家児島虎次郎(1881-1929)である。2人の信頼と友情によって,今日では不可能とされるエル・グレコ《受胎告知》をはじめゴーギャン《かぐわしき大地》やロートレック《マルトX夫人の肖像》など数々の作品を収集。近代の西洋絵画が主流をなしているが,古代エジプト美術,ペルシア陶器あるいは中国古美術なども加わって,漸次その規模を拡充している。第2次大戦後の推進者は大原総一郎(1909-68)で,20世紀の現代美術と日本の近・現代美術の作品が新たに加わり,収蔵作品に通史的な展望をあたえた。同時に,民芸運動の中心的な指導者たちの作品を展示する陶器・板画・染色館を設立。中国古美術を展示する東洋館,あるいはオリエント室なども大原父子2代の遺志を継いで開設され,世界の文化史を要約する内容をもつ日本の代表的な美術館となっている。
執筆者:酒井 忠康
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…また9000点に及ぶ浮世絵は東京国立博物館に収蔵されている。昭和に入って後は,〈油屋肩衝〉などの名物を中心に茶道具を集めた畠山一清(現,畠山記念館),松永安左衛門の《釈迦金棺出現図》をはじめとする仏教美術や茶道具の収集(没後,東京国立博物館,福岡市立美術館等へ),画家児島虎次郎が収集し大原孫三郎によって設立された大原美術館の近代絵画,彫刻などがあげられる。戦後では今日MOA美術館(熱海市)に収蔵,公開されている世界救世教教祖岡田茂吉のコレクション(光琳筆《紅白梅図》,仁清作〈色絵藤花文茶壺〉〈手鑑翰墨城〉など多岐にわたる),西洋近代絵画を中心とする石橋正二郎のコレクション(現,ブリヂストン美術館)などがあげられるが,特筆すべきは〈安宅コレクション〉であろう。…
…維新における欧化の波は美術界にも及び,多くの芸術家が渡欧してヨーロッパの新旧の美術を学び,〈洋画〉という新しいジャンルも確立されたが,西洋の美術品を系統的に収集しようとする努力はほとんどなされなかった。それだけに1930年に大原孫三郎によって創設された大原美術館は,単なる骨董趣味ではなく,より広い社会的,教育的理念から生まれた日本最初の西洋美術館として注目される。国立としては日本最初の(また目下唯一の)西洋美術館(国立西洋美術館)が東京に誕生したのは,その約30年後の1959年のことであり,しかもそのきっかけは,フランス政府に没収されていた民間のコレクション(松方コレクション)が戦後返還されたことであった。…
※「大原美術館」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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