六訂版 家庭医学大全科 「大血管障害」の解説
大血管障害
だいけっかんしょうがい
Large vessel disease
(代謝異常で起こる病気)
どんな病気か
糖尿病の患者さんにおける大血管障害は、動脈硬化症を基に発症し、非糖尿病患者の2~3倍とされ、女性の発症率が男性とほぼ同じであることも特徴です。
糖尿病の患者さんの死亡原因は、がんに次いで、第2位が動脈硬化性疾患で、とくに脳血管障害や心疾患の比重が大きくなっています。なかでも、最近では心疾患が最も多くなり、糖尿病患者の
冠動脈の病変は複数の血管で全長に及ぶ場合が多く、潜在的な心筋障害も伴いやすくなります。その結果、心不全を合併しやすく、死亡率も高く、再発しやすく、予後も悪くなります。
近年、日本の高齢者人口が増加したことや、糖尿病治療の向上につれ糖尿病の患者さんも高齢化したため、閉塞性(へいそくせい)動脈硬化症(ASO)も増え、糖尿病の患者さんの10~15%前後に合併します。糖尿病性の足の病変も増え、潰瘍や
症状の現れ方
糖尿病の患者さんの脳梗塞の特徴は中・小血管のラクナ梗塞(脳深部や脳幹を
糖尿病の患者さんの特徴として、神経障害があるためか、狭心症や心筋梗塞を起こしても、20~50%は痛みを感じません(無症候性心筋虚血(きょけつ))。とくに、糖尿病神経障害の強い患者さんでこの傾向は強くなります。四肢の閉塞性動脈硬化症が多く、下肢の冷感・しびれ、
検査と診断
脳梗塞が疑われる例では、MRIなどで
定期的な心電図検査、できれば負荷心電図検査(トレッドミル負荷)を実施し、虚血性心疾患の早期発見に努めます。
閉塞性動脈硬化症の発見のためには、大腿・
大動脈脈波
*Pulse Wave Velocity:動脈硬化で大動脈が硬くなるほど、脈波が伝わる速度が速くなります。測定値(m/秒)が高いほど、動脈硬化が進行しています。
**Ankle Pressure Index:正常は1以上(足の血圧が上肢の血圧より高い)。0.9未満になると閉塞が疑われます。
治療の方法
糖尿病の患者さんの大血管障害の治療には、血糖をコントロールするのはもちろんですが、高血圧や脂質異常症の治療も重要です。糖尿病の患者さんでは、血圧は130/80㎜Hg未満、LDLコレステロール濃度は120㎎/㎗未満(すでに心疾患がある場合には100㎎/㎗未満)がすすめられます。またアスピリンなどの抗血小板薬も必要になる場合があります。
関連項目
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報