将来の行為を約束するためにつくられた証文。契約状ともいう。鎌倉幕府の訴訟手続の解説書である『沙汰未練書(さたみれんしょ)』には「契状とは約束状なり」とある。「契約条々」あるいは「仍(よって)契状如件(くだん)」とあれば契状とするが、内容的には種々あり、所領などの交換を契約する相博(そうはく)状もあれば、所領の堺(境)(さかい)の確定もあり、内容に従ったよばれ方もされている。
大別すると、個人間の相互契約と、多人数のものが契約し、署判するもの(連署(れんしょ)、連判(れんぱん)という)とに分けられる。後者で注目されるのは一揆(いっき)契状である。一揆とは、多数の人々が共通目標に向かって一致団結して行動すること、またその集団をいうが、一揆契状は、一揆を結成することを契約し、神仏に誓約する起請文(きしょうもん)の形をとり、参加者全員が連署したものである。中世ではあらゆる階級が一揆を結成したが、その代表的な事例としてあげられるのは、南北朝時代の肥前国松浦(まつら)郡に分布する中小武士団の連合体である松浦党の一揆契状で、公方(くぼう)(上級権力)と支配下の農民への対応を取り決めたものである。そこでは連署の順序が孔子(鬮)(くじ)によって定められているが、そのほか円形の周囲に署判するいわゆる傘(からかさ)連判形式のものもある。
[黒田弘子]
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…〈かされんばん〉ともよみ,傘連判状,傘形連判ともいう。契状(多数の人々が一味同心して契約を結ぶときに作成する文書)にみられる署名様式の一つ,またその文書。南北朝時代より江戸時代に及ぶ。…
…【小坂 勝昭】
[日本史上の〈契約〉]
約束すること,また言い交わすことで,用語としては現代とほぼ同じだが,必ずしも法律的用語として限定されてはおらず,現代の日常語としての約束にちかい。したがってその内容は種々多様であるが,とくに将来の行為を約束するために作成される文書は契状,契約状と呼ばれた。契約行為は広くみれば,物の取引・譲与について人間相互に交わされる契約(売買,貸借,相伝,預託,譲渡,和与,寄進など)と,人格関係の設定(僧俗間の主従契約など),職(しき)の補任(ぶにん)と請負,人間相互の共同目的の実現(一揆など)などについて相互に交わされる契約とに大別できるが,それぞれの行為が中世では分化・独立し,固有の文書が作成されることが多かった。…
※「契状」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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