女絵(読み)オンナエ

デジタル大辞泉 「女絵」の意味・読み・例文・類語

おんな‐え〔をんなヱ〕【女絵】

平安時代男絵おとこえに対して使われた語。情趣に富んだ濃彩の絵をいうとするが、その内容ははっきりしない。一説には、墨がきの絵といい、素人絵のことともいう。
「をかしげなる―どもの、恋する男の住まひなど書きまぜ」〈総角
女をかいた絵。美人画

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精選版 日本国語大辞典 「女絵」の意味・読み・例文・類語

おんな‐えをんなヱ【女絵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 平安時代、特に情趣に富んだ絵。貴族の女性たちが愛好した物語絵にみられる。現存の「源氏物語絵巻」はその洗練された技法を用いたもの。⇔男絵
    1. [初出の実例]「女ゑをかしくかきたりけるがありければ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  3. 美人画。
    1. [初出の実例]「彼親仁〈略〉女絵を取出し、大かたは是にあはせて抱へたきとの品好み」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「女絵」の意味・わかりやすい解説

女絵 (おんなえ)

平安時代の絵画用語。文献上の初出は《蜻蛉かげろう)日記》で,ここでは男女の恋愛を題材とする浪漫的な画態の絵を指していると推定される。10世紀から11世紀にかけ多くのつくり物語が創作されたが,貴族の女性たちはこれを物語絵や絵物語として読み愛好した。女絵の語は,当初こうした女性自身の手によって描かれ女性好みの優美で情緒的な画態であったところから命名されたものであろう。このころ作られた物語絵はのこらないが,いわば素人の画技の延長上にあった女絵も,専門画人の参加によってしだいに技法的に高められ,12世紀前半には徳川・五島本《源氏物語絵巻》のようなつくり絵の華麗で細密様式を完成させた。このように女絵の語が明確な様式概念を含むようになるにつれ,対立語として登場するのが男絵の語である。《栄華物語》には〈(教通の娘歓子は)男絵など絵師恥づかしうかかせ給〉とあって,男絵が本来専門画人の正統的な画法の絵と認識されていることがうかがわれる。すなわち女絵は,浪漫的な題材をややプリミティブな画法と細密な嗜好で情緒的・象徴的に描くもの,男絵は正確なデッサン,力強い動態の表現,的確な彩色など8世紀以来の宮廷絵所で培われたオーソドックスな画法で描かれたものと考えてよいだろう。東寺旧蔵の《山水屛風》や《信貴山縁起絵巻》《伴大納言絵詞》などは,男絵の代表的な作例である。
絵巻
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「女絵」の意味・わかりやすい解説

女絵
おんなえ

平安時代の文献に散見する絵画用語。貴族や宮廷の女性たちに愛好された情趣性に富む物語絵をさしたと考えられ,技法的には濃彩の作り絵で,『源氏物語絵巻』 (徳川・五島本) のような様式が想定される。なお同時代の文献に現れる「男絵」の語を,様式的に女絵と対立する線がき本位の絵とする解釈もあるが,用語例だけからはその内容を明らかにしえない。

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世界大百科事典(旧版)内の女絵の言及

【絵巻】より

…一本の線で目を描き,鼻は単純な鉤形としながらそこに微妙なニュアンスを持たせ,さまざまな表情を見るものに感じさせるというものである。《源氏物語絵巻》はこうした技法,いわゆる女絵の画態による典型的作品であり,各場面のもつ深い詩的情趣やさらには主人公の心理の表現までも可能としている。これに対し連続式絵巻では,動きのある描線を自由に駆使し,最初にひいた描線を生かしながら,彩色を加えていく技法を用いる。…

※「女絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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