好い(読み)イイ

デジタル大辞泉 「好い」の意味・読み・例文・類語

い・い【好い/善い/良い】

[形](「よい」のくだけた言い方。ふつうは終止形連体形だけが用いられる)
よい」に同じ。「器量が―・い」「―・いようにしてくれ」「もっと勉強すれば―・いのに」「もう―・いかい、もう―・いよ」
関係が良好である。特に、男女相思相愛の仲である。「あの二人は―・い仲だ」「―・い人ができた」

㋐(反語的に用いて)見苦しい。みっともない。「―・い気になる」「―・い恥さらしだ」
㋑十分過ぎる。その必要がない。「酒はもう―・い」
[補説]「よい」の終止形・連体形だけが、類義・類音の「ええ(良)」の影響を受けて「いい」となった語。「いくない」「いかった」なども地方によっては使われるが、あまり一般的でない。
[用法]いい・よい――「日当たりがいい(よい)」「都合がいい(よい)」「気分がいい(よい)」、また「いい(よい)評判」「いい(よい)成績」などでは相通じて用いられるが、話し言葉では「いい」のほうが普通である。◇「いい気味だ」「いいざまだ」「いい年をして」「いい迷惑だ」「いい御身分だ」のような皮肉をこめた言い方、相手を非難する言い方では「いい」を使い、「よい」はあまり使わない。「よい子」は正面からの肯定的評価であるが、「いい子になる」では皮肉な意味がこめられる。→いいこ(好い子)類似の語に「よろしい」があり、「評判がよろしい(いい・よい)」「成績がよろしい(いい・よい)」など、「いい」「よい」と同じように使うが、「よろしい成績」「よろしい日当たり」などとは普通はいわない。
[下接句]気がいい気味がいい調子がいい人がいいがいい虫がいい要領がいい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「好い」の意味・読み・例文・類語

い・い【好・善・良】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙 ( 「よい」の変化した語 ) くだけた言い方で、終止形、連体形でしか用いられない。よい。
  2. ( 正邪善悪の立場から ) 正しい。正当である。「いいと思ったこと」「いい悪い」
  3. 性質、状態、機能、様子などが好ましい。まさっている。満足できる程度である。充分である。
    1. [初出の実例]「どの子がいいかしらねへ」(出典:洒落本・通仁枕言葉(1781)山もとの座舗)
    2. 「ヤ、是は能(イイ)湯だ」(出典滑稽本浮世風呂(1809‐13)前)
  4. めぐりあわせに恵まれている。幸いである。
    1. [初出の実例]「坊はおとっさんにおんぶだから能(イイ)の」(出典:滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前)
  5. あるべきさまである。適当である。のぞましい。
    1. [初出の実例]「お前の顔にゃア何かきつく出来やしたね。是にゃア和国橋の実路孝を付なさりゃアいい」(出典:洒落本辰巳之園(1770))
  6. 同意できる。承知できるさまである。さしつかえない。かまわない。
    1. [初出の実例]「ナンノ、なかずといい」(出典:洒落本・契情実之巻後編(1804)一)
  7. ( よくないと思っていることを、わざと反対にいう言い方 ) とんでもない。
    1. [初出の実例]「その弟ではこのお正月、本当にいい心配をいたしました」(出典:姉弟と新聞配達(1923)〈犬養健〉一)
  8. ( 逆説的に ) 基準をこえている。十分すぎるほどである。→いい年
    1. [初出の実例]「あんなに邪慳にされて、お前さんは辛抱がいいわね」(出典:死者生者(1916)〈正宗白鳥〉三)
  9. ( 「なくてもさしつかえない」の意から ) 必要ない。いらない。十分だ。→いい(好)にする
  10. ( 動詞の連用形について ) 簡単である、たやすいの意を表わす。
    1. [初出の実例]「そういふ内所ならば、又大きにさんたんもしいいといふもんだ」(出典:洒落本・廓節要(1799))

好いの語誌

江戸時代前期に見られる「えい」の関東なまりとして生じた語か。明和、安永頃(一七六四‐八一)から広まり使われたらしく、侠(きお)い者や、それに近い人から用い始めたようである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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