小督(読み)こごう

日本大百科全書(ニッポニカ)「小督」の解説

小督
こごう

の曲目。四番目物。五流現行曲。金春禅竹(こんぱるぜんちく)作。『平家物語』巻6の「小督事」によった叙情的な現在能である。平清盛(きよもり)を恐れて身を隠した小督の(つぼね)のことを深く嘆かれる高倉(たかくら)天皇。勅使(ワキ)は弾正大弼仲国(だんじょうのだいひつなかくに)(シテ)にその捜索を命ずる。場面は嵯峨野(さがの)に変わり、小督(ツレ)と侍女がわびしく住んでいる。宿の主が都の高貴な女性を泊めていることを語り、名月の夜とてを所望する。小督の身の上の嘆き。後シテは馬上の態で登場。「駒(こま)の段」とよばれ、月下の嵯峨野の描写が美しい。『想夫恋(そうぶれん)』の琴の音を聞きつけ、仲国は案内を請い、身分を明かそうとせぬ小督に天皇の嘆きを伝え、御書を渡す。玄宗と楊貴妃(ようきひ)の悲恋を引いて、つらい小督の恋心が語られ、仲国は小督に宮中へ帰られるよう説得する。直接の返事を手にした仲国は、別れの宴にさわやかに舞う。

 これを箏曲(そうきょく)に写した山田流の大曲に、山田検校(けんぎょう)作曲『小督』がある。また、新歌舞伎(かぶき)十八番に福地桜痴(おうち)作『雪月花三景(みつのながめ)』(通称「仲国」)があり、長唄(ながうた)にも『嵯峨秋』があるが、ともに明治期の作である。

[増田正造]

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精選版 日本国語大辞典「小督」の解説

こごう こがう【小督】

[一] 中納言藤原成範(しげのり)の娘。はじめ冷泉少将隆房と愛し合ったが、建礼門院徳子の命で入内。高倉天皇寵愛により平清盛に憎まれ、嵯峨野に身を隠したが、勅使、源仲国に捜し出され、宮中に戻り、範子内親王を産んだ。後に清盛に捕えられ、二三歳のとき尼にされて追放された。「平家物語‐巻六」に小督局の章がある。
[二] 謡曲。四番目物。各流。金春禅竹作。古名「仲国」。高倉院の命を受けた勅使、源仲国は、中秋名月の夜、法輪寺近くで琴の音を聞いて小督の隠れ家を捜しあて、院の御書を渡す。
[三] 箏曲。横田岱翁(たいおう)作詞。山田検校作曲。正称「小督の曲」。「平家物語」に題材をとる。山田流四つ物の一つで、気品の高い美しい曲。

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デジタル大辞泉「小督」の解説

こごう〔こがう〕【小督】

中納言藤原成範ふじわらのしげのりの娘。高倉天皇に愛されたため、建礼門院の父平清盛によって追放された。小督のつぼね。生没年未詳。
謡曲。四番目物金春禅竹こんぱるぜんちく作。高倉院の命を受けた源仲国が、名月の夜に嵯峨野さがの法輪寺辺で、琴の音に導かれて小督の局を捜しあてる。
箏曲そうきょく山田検校作曲。横田岱翁の作詞という。平家物語に題材をとる。山田流四つ物の一。

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百科事典マイペディア「小督」の解説

小督【こごう】

能の曲名四番目物五流現行。題材は《平家物語》巻6によるが作者不詳(一説金春禅竹作とも)。高倉天皇の愛人小督の局に宣旨を伝えるため,源仲国が隠れ家の嵯峨野を訪れる。

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世界大百科事典 第2版「小督」の解説

こごう【小督】

(1)平曲の曲名。平物(ひらもの)。フシ物。高倉天皇のもとに小督という美女が居た。中宮が上がらせた女で琴の上手だった。小督には冷泉少将(れいぜいのしようしよう)が心を通わせていたが,に召されてからはすげない応対であった。中宮の父で少将の義父に当たる清盛が怒っていると小督は知り,ひそかに身を隠した。帝の嘆きはひと通りでなく,夜は月ばかりを眺めていた(〈中音(ちゆうおん)〉)。八月十五夜の夜更け,源仲国が帝に召され,嵯峨野にあるらしい小督の隠れ家を訪ねるように命じられた。

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