弟子屈町にある湖で、クッチャロ湖ともいう。周囲約五八キロ、面積七九・三平方キロ、湖面の標高一二一メートル、最大深度一一七・五メートル。屈斜路カルデラの底に形成された。湖の周りには三段の湖岸段丘が発達し、三万年ほど前に湖が現在の形を呈するまでに三度にわたる浅化と縮小があったことを示す。湖の中央に二重式円錐形火山の
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
北海道東部,釧路支庁弟子屈(てしかが)町にある湖。〈くっちゃろこ〉とも呼ぶ。東西26km,南北20kmのほぼ円形をなす世界有数の屈斜路カルデラの中にある。面積79.7km2,周囲57km,湖面標高121m,最大水深117.5m,透明度20m。湖底はほぼ平たんである。湖の中央に浮かぶ周囲約12kmの中島は,二重式火山で,中央部には溶岩円頂丘がある。外輪山には標高800~1000mの藻琴(もこと)山,サマッケヌプリ,コトニヌプリ,サマッカリヌプリなどがある。これらの山は地層からみて,いくつかの成層火山からなる山体が洪積世後半の十数回にわたる大規模で断続的な火山活動をくりかえした後,陥没して生じた屈斜路カルデラのカルデラ壁で,それは北部と西部でとくに明確である。南部は開析されてカルデラ壁が明確でなく,東部はカルデラ形成後,サワンチサップ(520m),アトサヌプリ(硫黄山,508m)などの火山が噴出し,その西に屈斜路湖が形成された。湖岸段丘の発達から,過去3回にわたって湖面の低下したことが知られる。北東端に流れこむ湯川にアトサヌプリ火山からの酸性の水が含まれているので,湖水の水素イオン濃度が低く,プランクトンや魚類は乏しい。ほかに尾札部(おさつべ)川などが流入,南端の釧路川から流出する。
湖は阿寒国立公園の東部にある観光地として知られ,その拠点が湖の南東方約12kmにある弟子屈である。ここには温泉,旅館,民宿などの宿泊施設のほか,各観光地へのバスターミナル,スキー場もある。屈斜路湖の東岸には,北から仁伏(にぶし),砂湯,池ノ湯,和琴の各温泉がある。湖の南部にある和琴半島は,尾札部川の扇状地が発達して連結された陸繫島で,周辺には各所に噴気孔があり,一帯はミンミンゼミの北限生息地として天然記念物に指定されている。湖は冬季でも凍結しないため,ハクチョウが飛来する。屈斜路カルデラ外輪山の鞍部にあたる美幌峠(525m)からは,このカルデラ全域,北見盆地,オホーツク海を展望することができる。美幌町から美幌峠を経て屈斜路湖に至る国道243号線が観光ルートとして一般的である。
執筆者:奥平 忠志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
北海道東部釧路(くしろ)総合振興局管内の弟子屈(てしかが)町にあるカルデラ湖。周囲57キロメートル、面積79.3平方キロメートル。水深は40メートル前後が広範囲を占め、最大117.5メートル。藻琴(もこと)山(1000メートル)、サマッカリヌプリ(974メートル)、サマッケヌプリ(898メートル)などの外輪山で囲まれた屈斜路カルデラの北西部を占め、湖の中央に溶岩円頂丘を頂く二重式火山の中島(355メートル、面積約5.7平方キロメートル)が浮かぶ。「くっしゃろ」はアイヌ語の「クッチャロ」(のど)に由来する。南岸に和琴半島(わことはんとう)が突き出る。東岸、南岸には仁伏(にぶし)、砂湯、池ノ湯、和琴の各温泉が湧出(ゆうしゅつ)し、流入河川はおよそ100に及び、南東から釧路川が流出する。和琴半島はミンミンゼミ発生地の北限である。湖岸を国道243号、主要道道52号が通り、243号が外輪山を横断する美幌峠(びほろとうげ)から一望できる屈斜路湖、和琴半島、アトサヌプリ(508メートル)は阿寒摩周(あかんましゅう)国立公園有数の景勝地である。
[古川史郎 2018年5月21日]
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
…これらの山は地層からみて,いくつかの成層火山からなる山体が洪積世後半の十数回にわたる大規模で断続的な火山活動をくりかえした後,陥没して生じた屈斜路カルデラのカルデラ壁で,それは北部と西部でとくに明確である。南部は開析されてカルデラ壁が明確でなく,東部はカルデラ形成後,サワンチサップ(520m),アトサヌプリ(硫黄山,512m)などの火山が噴出し,その西に屈斜路湖が形成された。湖岸段丘の発達から,過去3回にわたって湖面の低下したことが知られる。…
※「屈斜路湖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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