山遊び(読み)ヤマアソビ

デジタル大辞泉 「山遊び」の意味・読み・例文・類語

やま‐あそび【山遊び】

3月3日4月8日などに山野に行って遊楽する行事 春》

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改訂新版 世界大百科事典 「山遊び」の意味・わかりやすい解説

山遊び (やまあそび)

旧暦3月から4月にかけて,山野に出て食事をしたり遊んだりして終日を過ごすこと。野遊び,野掛けともいうが,海辺に出かけることもあって磯遊びともいわれている。3月3日や4月8日に決めて行う所が多く,この風は全国に及んでいる。重箱に馳走を詰めて互いに誘い合って山野や磯辺に出かけて遊ぶほかに,河原に臨時にかまどを築いて共同飲食をする所も少なくなく,また水辺で禊祓(みそぎらい)をする例もある。都会花見潮干狩りもこのなごりだと考えられ,現在では単なる行楽のように思われているが,元来は本格的な農事に先がけ,積極的に山野にこもって田の神祭の資格を身につけようとするものであったとされている。愛知県新城市大海では,3月3日に女児たちが好みの雛人形を1体ずつ抱き,重箱に煮しめを詰めて山へ行き,〈雛様,雛様,よくよく花御覧うじろ〉などと呼ばわり合ったりして終日遊び暮らし,夕方山を下りるときには〈また来年もおいでましょう〉といって春の山になごりを惜しんだという。このように3月3日の場合には雛祭と結合し,すでに女性や子どもの行事となっている所が多い。4月8日(卯月八日)の場合には,単に霊山に登るとだけしている所もあるが,山からウツギツツジ,シャクナゲなどを摘んできて庭先に立てる風が近畿地方には多くあり,高花,天道花などといわれている。灌仏会と結合している点も多いが,元来は農事開始に先だって,山から祖霊なり田の神なりを迎えてきて祭ることを目的としたものだと解釈されている。また,山伏の春の峰入りは,このような山籠信仰背景にしたものかともいわれている。
歌垣 →毛(もう)遊び
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山遊び」の意味・わかりやすい解説

山遊び
やまあそび

旧暦の三月節供または卯月(うづき)(4月)8日のころ、食物を持って山や海辺に出て、1日遊ぶ行事。昔はほとんど全国で行われた。その名称もお花見、山行き、磯(いそ)遊び、野がけなど、土地によって違い、期日も3月3日だけではなく4月8日の前後という所が一般に多いが、3月の彼岸ごろや4月中旬の所もある。関東南部では、3月3日ごろ重箱にすしや煮しめなどを入れ、おもに女の子が山や丘などの小高い所に行って、持参の食物を交換しあって食べるというが、このとき雛(ひな)人形を一体ぐらい持って行く所もある。磯遊びは近代潮干狩に続く行事であろうが、日本の南方の島々では3月3日をサンガンサニチといってかならず海岸に出なくてはならないとされ、昔は岩手県の山間部でも海岸へ出かける習わしがあった。いずれも春から夏にかけ、実際の農事の開始を迎えるころ、戸外で神を迎え祭りを行い飲食をともにした習俗と考えられ、なんらかの信仰的意味があったものと考えられる。

[高野 修]

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百科事典マイペディア 「山遊び」の意味・わかりやすい解説

山遊び【やまあそび】

旧暦3月から4月の一定の日に村人たちが山や野に出て遊び,飲食をする行事。そのしるしとして花を折って持ち帰った。3月3日,4月8日などが特に多い。磯遊びと同種の行事で,古くから全国的に行われた。
→関連項目山岳信仰潮干狩

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山遊び」の意味・わかりやすい解説

山遊び
やまあそび

旧暦3~4月にかけて一定の日に野山に行って食事をする行事のこと。全国的に古くから行われ,3月3日と4月8日に行われたところが多い。山勇み,野がけなどと呼ぶ地方もあり,山の花を取ってきて家に飾ることもある。沿岸部・島嶼部では,同様に浜降りなどと呼ばれる磯遊びが行われる。

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世界大百科事典(旧版)内の山遊びの言及

【花】より

…陰暦4月8日に竹ざおの先に山から採ってきた花をつけ,家の門口に高く掲げる風は〈卯月(うづき)八日の天道花(てんとうばな)〉と呼ばれる。この日は山遊びといって近くの山に登り,ツツジの花などを採ってくる。その役にたずさわるのは,しばしば娘たちであった。…

【雛祭】より

…3月3日の(三月節供)の行事。この日の行事は雛人形を飾り祭るものと,山遊び磯遊びとに大別できる。雛人形を飾り祭るのは,中国伝来の3月上巳(じようし)の行事と日本に古くからある人形(ひとがた)によって身をはらおうとする考え,および貴族の幼女の人形遊びとが結合して,室町時代ごろに一応の形を整えたといわれる。…

※「山遊び」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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