年給(読み)ネンキュウ

デジタル大辞泉 「年給」の意味・読み・例文・類語

ねん‐きゅう〔‐キフ〕【年給】

1年を単位として定めた給料。年俸ねんぽう
《「年料給分」の略》年官年爵を給すること。売官売位の一。この給与を受けた者(給主)は任意の者をその地位につけ、任料・叙料を得ることができた。給主の地位により内給天皇)・院宮給・親王給・公卿給典侍給などの別があった。

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精選版 日本国語大辞典 「年給」の意味・読み・例文・類語

ねん‐きゅう‥キフ【年給】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「年料給分」の略 ) 年官と年爵。これを許された者(給主)は任意の者を一定の地位につけることができ、近親者を任官・叙位させたり、任料・叙料を得たりすることができた。給主の地位に従って内給(天皇)・院宮給・親王給・公卿給・女御給などの別がある。年官年爵。年爵年官。
    1. [初出の実例]「依仰故右大臣年給、欲伊勢之間、公主重煩給之由告来」(出典:九暦‐逸文・天暦七年(953)正月一四日)
  3. 一年を単位として定めてある俸給年俸
    1. [初出の実例]「豆腐屋になれよとて、大豆百俵年給し侍き」(出典:太閤記(1625)六)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「年給」の意味・わかりやすい解説

年給
ねんきゅう

年料給分の略称。天皇、太上(だじょう)天皇(院)、三宮(さんぐう)(三后(さんこう)とも。皇后皇太后太皇太后)、東宮(とうぐう)、准后(じゅごう)より、親王、内親王、女御(にょうご)、公卿(くぎょう)に至るまで、毎年給付する年官、年爵をいう。年官とは、春の県召除目(あがためしのじもく)で地方官(外官(げかん))、秋の司召(つかさめし)除目で京官(内官)を申請する権利を与えること。年爵とは、叙位(じょい)の際、叙爵(従(じゅ)五位下)を申請する権利を与えることで、これは院宮に限られる。年官、年爵を与えられた給主は、官や爵(位)を望む者を募り、申請して叙任し、そのかわりに任料、叙料を徴収して個人の得分とする。このように年給は、官や爵を一種の持ち株として個人に給(たま)わったもので、売位・売官の制度にほかならない。この制は9世紀中ごろから食封(じきふ)制度が崩れて、皇族の経済生活が窮乏してきたために考案され、宇多(うだ)天皇の寛平(かんぴょう)年間(889~898)には確立し、10世紀中ごろまで盛行したが、以後は国司制度の崩壊とともにしだいに衰退していった。その年給の種類と給数は、内給(掾(じょう)2人、目(さかん)3人、史生(ししょう)20人)、院宮・准后給(掾1人、目1人、史生3人、内官1人、爵1人、三宮・准后には女爵一人を追加)、親王・内親王給(目1人、史生1人)、女御給(目1人、史生1人)、尚侍(ないしのかみ)給(目1人、史生1人)、典侍(ないしのすけ)給(史生1人)、掌侍(ないしのじょう)給(史生1人)、公卿給は関白(かんぱく)・太政(だいじょう)大臣(目1人、史生3人)、左右内大臣(目1人、史生2人)、大中納言(目1人、史生1人)、参議(目1人、史生1人)である。

[渡辺直彦]

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改訂新版 世界大百科事典 「年給」の意味・わかりやすい解説

年給 (ねんきゅう)

平安時代以降おこなわれた売官制度。貴族に人の叙位・任官を申請する権利を与え,申請者(給主という)が,任叙される者から利得を得る制度。官職を給するものを年官,位階を給するものを年爵という。給主は内給(天皇の年給),院宮給,親王給,公卿給などにわかれ,それぞれ定数があり,ほかに臨時給もあるほか,複雑な慣例・規定があった。年給は平安時代初期から律令俸禄制度がくずれてきたので,その代りとして起こったが,このために官職位階が公然と利権視され,政治の乱れを激しくした。年給は形式は室町時代まで残存したが,実質的な意義があったのは鎌倉時代初期までと考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「年給」の意味・わかりやすい解説

年給
ねんきゅう

平安時代から始った封禄制度の一種。年官年爵とを合せて年給という。毎年,叙位除目のとき,天皇以下公卿以上はその身分に従って,一定の官位に一定の人員を申請する権利をもった。叙位,任官希望者はその申請権をもつ者に,叙料,任料を差出して官位を得るという一種の売官制度。9世紀中頃に,食封 (じきふ) 制度の衰退に伴って現れ,内給,院宮給,親王給,公卿給の4種があった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「年給」の解説

年給
ねんきゅう

皇族・貴族らに認められた位階・官職の推挙枠。年料給分の略称。叙爵の推挙が年爵,下級官職への推挙が年官で,給主(推挙者)によって内給・院宮(いんぐう)給・親王給・公卿給・女御(にょうご)給などとよびわける。給主が叙料・任料という収益をえることを目的とした,反律令制的な売位・売官制度と評価するのが一般的。9世紀中期から発達し,寛平年間に体系的に整序され,10世紀後期以降さまざまな策を補いながら,形式的には江戸時代まで存続した。

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百科事典マイペディア 「年給」の意味・わかりやすい解説

年給【ねんきゅう】

古代・中世に行われた朝廷の売官・売位制度。皇族・貴族に官職・位階の推薦権を与え,推薦者が被推薦者から報酬を取る。売官を年官,売位を年爵(ねんしゃく)といった。律令財政の苦しくなった平安初期に始まり,毎年,天皇・上皇・女院・親王・公卿らが給主(推薦者)となり,室町時代に及んだ。→位階勲等

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旺文社日本史事典 三訂版 「年給」の解説

年給
ねんきゅう

平安時代に行われた一種の売官制度。

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世界大百科事典(旧版)内の年給の言及

【院宮分国】より

…ただ院分受領も,はじめは任期や功過査定などについては一般の受領と同様の扱いを受けており,分国主に対する財力奉仕の事例は少なくないが,国主の収益の具体的な内容は明らかでない。なお院宮分国制と類似した制度に,天皇,上皇以下公卿らに一定の官職・位階の推挙権を与える年給制度があり,そのうちの国守を給するのが院宮分国制であるとする説もあるが,年給は受領補任とは別個の手続で行われるもので,両者は永く並行して存続している。 鳥羽院政に入って,院宮分国は急激に減少したが,後白河院政以降はまたしだいに増加し,その間大きく変質して分国主の領国と化していった。…

【給人】より

…(1)9世紀後半から律令制度にもとづく食封制度の衰退にともない年給をうける人々が出てきて,その年給をうける人のことを給主あるいは給人と呼んだ。この制度はしだいに形骸化しながら江戸時代初期までつづいた。…

【売官】より

… 成功は宮殿,寺社の修造や諸行事の経費を私財で負担した者などを任官させる制度であり,初期を過ぎるころから行われ,また栄爵は同様の者を叙爵させる(五位を授ける)制度であり,同じころに成立した。一方,年官,年爵は合わせて年給といい,これより早く発生した。年給は年料給分の意味で,毎年所定の官職に所定の人数を申任する権利を与えて収入を得させるのが年官であり,所定の人数の叙爵を申請する権利を与えて収入を得させるのが年爵である。…

※「年給」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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