幸福追求権(読み)コウフクツイキュウケン

デジタル大辞泉 「幸福追求権」の意味・読み・例文・類語

こうふくついきゅう‐けん〔カウフクツイキウ‐〕【幸福追求権】

個人が幸福を追求する権利憲法は、公共福祉に反しない限り、最大尊重を必要とする権利であるとしている。→日本国憲法第13条

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精選版 日本国語大辞典 「幸福追求権」の意味・読み・例文・類語

こうふくついきゅう‐けんカウフクツイキウ‥【幸福追求権】

  1. 〘 名詞 〙 すべての国民が個人として幸福を追求する権利。日本国憲法(第一三条)では、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とするとしている。

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改訂新版 世界大百科事典 「幸福追求権」の意味・わかりやすい解説

幸福追求権 (こうふくついきゅうけん)

日本国憲法はその13条に,〈すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする〉と定めている。ここで保護されているのが幸福追求権である。本条は現行憲法上の規定であるが,〈生命,自由及び幸福の追求〉という文言そのものは,1776年のアメリカ独立宣言にまでさかのぼる。幸福追求権は,その沿革からも,17~18世紀の自然法思想を体現しており,その意味で自然権の宣言規定とも解されるが,同時に,この条項が実定憲法にまで導入されることにより裁判規範性をも有し,幸福追求権を単なるプログラム規定とのみ解することは正当でない,と考えられる。この権利の内容は必ずしも一般的には定めがたいが,この権利は,他の個々条文で具体的に定められた人権に含まれないものを包摂しうるという機能を有している。結局,その内容は,具体的な争訟事件を通して,判例により,個別的に形成発展せしめられることとなろう。最高裁の判例(1969)が,〈個人の容ぼう等〉を正当な理由なしに撮影されない権利をもって,〈私生活上の自由〉の一つとして,憲法13条による保障を承認しているのはその例である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「幸福追求権」の意味・わかりやすい解説

幸福追求権
こうふくついきゅうけん

日本国憲法(13条)に保障された基本的人権の一つ。ジョン・ロックは、人の自然状態でもつ自然法として「生命・自由・財産the Pursuit of Happiness」の保障を掲げたが、バージニアの権利章典やアメリカの独立宣言では、これを「生命・自由・幸福追求」と広げて宣言した。日本国憲法はこれを受け継いだものである。語の由来は明らかであるが、「幸福」という漠然とした価値を追求する権利の内容については、さまざまな議論がある。たとえば、規定の置かれた位置とも関連して、具体的内容をもたない人権の総則規定と解する説に対しては、人権宣言のカタログに未登載の新しい権利を保障するための規定と解する説が対立する。裁判所は、後説により、幸福追求権をプライバシー権・肖像権・環境権などの根拠法条としてとらえることが多い。また、この権利がロックの思想に負うところから、「幸福」は自由権的内容に限られるのか、それとも沿革にはこだわらず、社会権的内容までをも含むのかが争われることもある。いずれにしても幸福追求権の行使には、公共の福祉に沿うことが求められている。

[佐々木髙雄]

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百科事典マイペディア 「幸福追求権」の意味・わかりやすい解説

幸福追求権【こうふくついきゅうけん】

現行日本国憲法第13条の保障する〈生命・自由および幸福追求権〉のこと。アメリカ独立宣言が幸福追求を人間の基本的な権利として明示したことに由来する。自由権をその本質とするこの権利は,個人の尊厳の原理に基づき,人格的生存に必要不可欠の権利・自由を包摂する包括的かつ具体的基本権であり,いわば諸々の基本的人権規定の総則的位置にある。したがって,個人的な基本権規定によって明文的に保障されていない諸権利を含むものとされ,具体的には,人格権プライバシーの権利,環境権,自己決定権などがこの幸福追求権から導かれてきた。→基本的人権

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「幸福追求権」の意味・わかりやすい解説

幸福追求権
こうふくついきゅうけん

日本国憲法 13条に保障する「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利」を一体的にとらえて観念された場合の権利。アメリカの独立宣言中の,「〈天賦不可侵の権利〉のなかに生命,自由および幸福の追求が含まれることは自明である」の文言に由来する。 13条が保障する幸福追求権については,かつては,具体的な権利ではなく一般的な原理の宣言にすぎないといった説が支配的であった。しかし近時,それ自体が実定法的効力をもつ包括的基本権で,他の個別的基本権規定によってはカバーされないがなお人格的生存に不可欠な権利が補充的に幸福追求権として憲法上保護されるとみる説が有力になっている。そのような幸福追求権の具体的内容として最もよく指摘されるのは,名誉権とプライバシーの権利である。

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