日本国憲法はその13条に,〈すべて国民は,個人として尊重される。生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする〉と定めている。ここで保護されているのが幸福追求権である。本条は現行憲法上の規定であるが,〈生命,自由及び幸福の追求〉という文言そのものは,1776年のアメリカ独立宣言にまでさかのぼる。幸福追求権は,その沿革からも,17~18世紀の自然法思想を体現しており,その意味で自然権の宣言規定とも解されるが,同時に,この条項が実定憲法にまで導入されることにより裁判規範性をも有し,幸福追求権を単なるプログラム規定とのみ解することは正当でない,と考えられる。この権利の内容は必ずしも一般的には定めがたいが,この権利は,他の個々の条文で具体的に定められた人権に含まれないものを包摂しうるという機能を有している。結局,その内容は,具体的な争訟事件を通して,判例により,個別的に形成発展せしめられることとなろう。最高裁の判例(1969)が,〈個人の容ぼう等〉を正当な理由なしに撮影されない権利をもって,〈私生活上の自由〉の一つとして,憲法13条による保障を承認しているのはその例である。
執筆者:種谷 春洋
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日本国憲法(13条)に保障された基本的人権の一つ。ジョン・ロックは、人の自然状態でもつ自然法として「生命・自由・財産the Pursuit of Happiness」の保障を掲げたが、バージニアの権利章典やアメリカの独立宣言では、これを「生命・自由・幸福追求」と広げて宣言した。日本国憲法はこれを受け継いだものである。語の由来は明らかであるが、「幸福」という漠然とした価値を追求する権利の内容については、さまざまな議論がある。たとえば、規定の置かれた位置とも関連して、具体的内容をもたない人権の総則規定と解する説に対しては、人権宣言のカタログに未登載の新しい権利を保障するための規定と解する説が対立する。裁判所は、後説により、幸福追求権をプライバシー権・肖像権・環境権などの根拠法条としてとらえることが多い。また、この権利がロックの思想に負うところから、「幸福」は自由権的内容に限られるのか、それとも沿革にはこだわらず、社会権的内容までをも含むのかが争われることもある。いずれにしても幸福追求権の行使には、公共の福祉に沿うことが求められている。
[佐々木髙雄]
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