引接寺(読み)いんじょうじ

精選版 日本国語大辞典 「引接寺」の意味・読み・例文・類語

いんじょう‐じインゼフ‥【引接寺】

  1. [ 一 ] 京都市上京区閻魔(えんま)前町にある高野山真言宗の寺。山号は光明山。寛仁年間(一〇一七‐二一)定覚の開基といわれる。閻魔堂狂言(花念仏)、普賢象桜と呼ばれる桜が有名。紫式部供養塔と称するものがある。千本閻魔堂。千本。
  2. [ 二 ] 大阪府堺市少林寺町東にあった時宗の寺。正平二年(一三四七)創建。室町時代、幕府の保護を受け、堺の時宗勢力を代表した。明治六年(一八七三)廃絶。

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日本歴史地名大系 「引接寺」の解説

引接寺
いんじようじ

[現在地名]上京区閻魔前町

千本せんぼん通西側にあり、千本閻魔堂の名で知られる。高野山真言宗。山号は光明山、本尊は閻魔大王

〈京都・山城寺院神社大事典〉

〔開創〕

円阿弥陀仏の勧進になる康暦元年(一三七九)銘の銅鐘に「当華洛之北偏有蘭若之場、安置華蔵之教主并閻魔王・泰山・五道転輪王・司命・司禄等像、定覚上人草創之砌明善律師再興之処也、号之引接寺」とある(京都古銘聚記)。開基は定覚、中興は明善(如輪)。開創当初は釈迦如来・閻魔王・泰山王・五道転輪王・司命・司禄等の像を安置し、蓮台野れんだいの(現京都市北区)一帯がそうであったように釈迦念仏の信仰があったことがわかる。現在は長享二年(一四八八)定眼定勢作の本尊(丈六の閻魔大王坐像)と左右に司命・司禄の大像を安置する。定覚は肥後国の人、恵心(源信)の弟子で近江比叡山で三〇年修学、寛仁年中(一〇一七―二一)に当寺を創建した(国朝書目)。創建の由来を鎌倉時代の「野守鏡」は定覚が源信の二十五三昧を「うらやみて、又おこなひ侍りけるに、蓮花化生したりければ、結界して此所にて墓をしめむ人をばかならず引摂せむと発願をしたりけるより、蓮台野となづけて、一切の人の墓所となれり」と記す。


引接寺
いんじようじ

[現在地名]武生市京町三丁目

摂取山と号し、天台真盛宗。本尊阿弥陀如来。長享二年(一四八八)近江坂本西教さかもとさいきよう(現滋賀県大津市)の真盛の草創という。慶長三年(一五九八)の長束大蔵府中寺庵中注文(正願寺文書)には「七反五畝、覚庵一反五十歩」とあり、広大な寺域を有していた。文政一二年(一八二九)の引接寺由緒(引接寺文書)によると、本尊阿弥陀如来は伝教大師作と伝える後土御門天皇の御願仏で、寺号の勅額も賜った。また宝暦一二年(一七六二)四月の府中ふちゆう大火の際には山内残らず焼失したが、安永年中(一七七二―八一)本堂再建、文化年中(一八〇四―一八)には総門・四足門・築地門の再建がなった。


引接寺
いんじようじ

[現在地名]下関市中之町

紅石べにいし山の南西麓にある。浄土宗で関亀山と号し、本尊は阿弥陀如来。

寺伝によればもと豊前黒田くろだ(現福岡県北九州市)にあったが、永禄三年(一五六〇)忠誉一徳が下関のかめ山の下に移して開基。慶長三年(一五九八)三世来誉の時小早川秀秋が養父隆景の遺言により隆景を再建の開基として現在地に移転した。三一代穏誉宝道は勤王の志が厚く、長府藩の藩命により国事に奔走し、功によって慶応三年(一八六七)永代毛利家菩提寺同格、禄二〇石二人扶持を与えられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「引接寺」の意味・わかりやすい解説

引接寺
いんじょうじ

京都市上京(かみぎょう)区閻魔前(えんままえ)町にあり、高野山(こうやさん)真言宗に属する寺。光明山(こうみょうさん)と号し、俗に千本閻魔堂といわれる。定覚(じょうかく)律師が寛仁(かんにん)年間(1017~21)の初めに大念仏踊(だいねんぶつおどり)を始めたのが起源と伝えられる。本堂には閻魔像(室町時代作)が祀(まつ)られ、壁面には狩野光信(かのうみつのぶ)筆の「冥府(めいふ)の図」が描かれている。また小野篁(おののたかむら)立像も安置される。旧盆(8月8~16日)の精霊(しょうりょう)迎えの六斎(ろくさい)念仏踊は、郷土色豊かな年中行事として人々に親しまれている。また寺内の普賢像(ふげんぞう)の桜(千本桜ともいう)が盛りの4月下旬には、念仏狂言(壬生(みぶ)狂言に対し閻魔堂狂言といわれる)が催される。紫式部(むらさきしきぶ)供養塔と称される十重石塔婆(じゅうじゅういしとうば)(円阿作)は国の重要文化財。

[森 章司]

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世界大百科事典(旧版)内の引接寺の言及

【千本閻魔堂】より

…京都市上京区にある真言宗の寺。正しくは光明山引接(いんじよう)寺。寺伝では寛仁年中(1017‐21)定覚上人の開創。…

※「引接寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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