当色(読み)トウジキ

デジタル大辞泉 「当色」の意味・読み・例文・類語

とう‐じき〔タウ‐〕【当色】

位階に相当する服色養老衣服令では、一位は深紫、二・三位は浅紫、四位は深緋ふかひ、五位は浅緋、六位は深緑、七位は浅緑、八位は深縹ふかはなだ初位は浅縹。のち、多少変化があった。位色いしき
宮中公事くじの際、役職の者に賜った装束
陰陽道おんようどうで、その年の恵方えほうにあたる色。

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精選版 日本国語大辞典 「当色」の意味・読み・例文・類語

とう‐しき タウ‥【当色】

〘名〙 (「色」は種類の意)
① 令制で、身分や位階に相当した色。
令義解(718)衣服「凡服色。白。黄丹。紫。〈略〉当色以下。各兼得服之」
② 身分や位階に相当した色の服。礼服でなく、日常着用する衣服についていう。
※続日本紀‐天平勝宝四年(752)四月乙酉「五位已上者著礼服、六位已下者当色」
③ 同じ身分・階層であること。同種に属する人。また、その身分・階層。
※令義解(718)戸「凡陵戸。官戸。家人。公私奴婢。皆当色為婚」
④ ひろく同じ種類のもの。また、その種。
※令義解(718)軍防「凡兵士。人別備糒六斗。塩二升。并当火供行戎具等。並貯当色庫
⑤ その年の生気の方すなわち吉方(えほう)にそれぞれ配した色。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「当色」の意味・わかりやすい解説

当色
とうじき

官位相当の服色のこと。603年(推古天皇11)に、冠位十二階の制によって初めて当色が決められ、冠や上着の色で身分を示した。その後幾度か改訂があり、養老(ようろう)の衣服令(りょう)で定められた当色がその後の基準になっている。しかし平安時代以降、当色における深浅区別がほとんどなくなって、深い色のみ使われた。さらに深紫が黒にかわり、四位の者も黒を用いることとなった。また、七位以下はほとんど叙せられることがなく、名目のみになったため、地下(じげ)の者はみな緑を用い、紫や縹(はなだ)は当色からはずされた。そのほか、公事(くじ)の際、役を勤める者に、宮中から賜る定めの色の衣服をも当色とよんだ。

[高田倭男]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「当色」の解説

当色
とうじき

位色(いしき)とも。古来,朝廷で位階などの身分に応じて着用が定められた衣服の色。平安以降は材質や文様も含む。衣服令では天皇の白,皇太子の黄丹(おうだん)その他18色を規定し,みずからの位階に対応する当色以下の使用のみを許すとしている。こうした広義の当色とは別に,狭義には特定の儀式行事に際し,役割に応じて着用する服の色を当色という。

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世界大百科事典(旧版)内の当色の言及

【青】より

…いかに五色の考え方に規制されるところが大きかったか,ということを知る。加えて,平安期をも含めた古代宮廷社会においては,衣服から装身具まで,位階や身分に応じて使用すべき色(当色(とうじき))や使用不許可の色(禁色(きんじき))が厳格に定められてあったから,必然的に,色彩の感じ方にも尊卑観念のつきまとうことは避けられなかった。そして,位袍(いほう)のシステムにおいて,一~三位が紫または黒,四・五位が赤,六・七位が緑,八・初位が縹と定められていたから,〈あお〉の色は,greenおよびblueをひっくるめて尊貴の色に遠いという感じ方が固定してしまった。…

【色目】より

…衣服や調度に用いられる染織品,料紙などの色や配色の名称を一般の色名と区別し,公家の規範を意識した場合の色を色目と称した。例えば朝廷における位階相当の上着の色の当色(とうじき),一般の者の使用を禁じた服色や織物の禁色(きんじき)などは法式に従って規定された色であり,服色や織物,紙などの色の組合せの襲(重)(かさね)の色などは公家様式に従って選定された色である。603年(推古11)に冠位十二階の制が定められて以来,冠や上着の色によって階級を示すようになり,この当色はその後いくたびか改訂されたが,養老の衣服令による服色の規定が基本となって守られてきた。…

【禁色】より

…服制の上で,勅許されなければ着用できない衣服の色および服地。令制では,親王以下官人の位階に応じて着用する服の色が規定されており,当色(とうじき)という。当色より下位の色目の着用は自由であったが,上位のものは禁じられていた。…

【袍】より

…朝服の袍は位袍(いほう)といって位階によって服色が定められている。これを当色(とうじき)といい,養老の〈衣服令〉では天皇は白,皇太子は黄丹,親王と臣下の一位は深紫,二・三位は浅紫,四位は深緋(あけ),五位は浅緋,六位は深緑,七位は浅緑,八位は深縹(はなだ),初位は浅縹としている。平安時代初期に深浅の区別がなくなり,すべて深い色とし,また天皇の用いる色に黄櫨染(こうろぜん)と青色が加えられた。…

※「当色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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